4. 40歳代の家計、「貯蓄」だけを見ていては気づけないこと

4.1 総務省「家計調査」にみる40歳代の"負債超過"

ここまではJ-FLECの調査にもとづく金融資産(貯蓄)の話でしたが、40歳代の家計は「負債」もあわせて見る必要があります。

総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年平均結果」(二人以上の世帯)によると、世帯主が40歳代の世帯では、貯蓄現在高が平均1381万円である一方、負債現在高は平均1483万円にのぼり、差し引きの純貯蓄額はマイナス102万円と、負債が貯蓄を上回る「負債超過」の状態になっています。負債の中心は住宅ローンなど住宅・土地のための借入です。

J-FLECの調査と総務省の家計調査は、対象世帯や調査方法、金融資産・貯蓄の定義が異なるため単純に数値を並べて比較できるものではありませんが、いずれの調査でも「40歳代は他の年代に比べて資産形成が伸び悩みやすい時期」という傾向は共通しています。

4.2 投資性資産の比率もじわり上昇

J-FLECが2025年調査の全体傾向として示したポイントによれば、元本割れの可能性がある金融商品(株式や投資信託など)を保有している世帯の割合は、二人以上世帯で53.9%、単身世帯で40.9%にのぼりました。金融商品を選ぶ際に「収益性」を重視すると答えた人の割合も、全体の約4割を占めています。

新NISA制度が2024年から始まったこともあり、預貯金中心だった資産の持ち方から、株式や投資信託を組み合わせる世帯が40歳代でも増えているとみられます。

ただし、値動きのある資産が増えるということは、中央値が伸びる一方で、増えた分だけ目減りするリスクも同時に抱えることを意味します。貯蓄額の「金額」だけでなく、その中身がどのような資産で構成されているかにも目を向けておきたいところです。

5. 資産形成の選択肢のひとつ、給与天引きの「財形貯蓄」

投資性資産に一歩を踏み出す前の土台として、あらためて注目したいのが「財形貯蓄」(勤労者財産形成貯蓄制度)です。検索トレンドでも「一般財形貯蓄」「財形貯蓄メリット」「ろうきん財形貯蓄引き出し」といった言葉が上位に入っていました。

財形貯蓄には大きく3つの種類があります。

ひとつは、使い道を限定せず給与天引きで積み立てる「一般財形貯蓄」で、いつでも払い出しができる一方、利子等の非課税優遇はありません。

もうひとつは老後資金づくりを目的とする「財形年金貯蓄」、そして住宅の取得・増改築資金にあてる「財形住宅貯蓄」で、この2つは合わせて元利合計550万円までの利子等が非課税になります(国税庁の規定による)。財形年金貯蓄は60歳以降に年金形式で受け取ることが条件で、55歳未満での契約が必要です。

なお、財形年金貯蓄で生命保険や損害保険などの保険型商品を選んだ場合は、非課税の対象となる払込限度額が385万円までとなり、残る165万円分は財形住宅貯蓄の非課税枠として使う形になります(国税庁の規定による、預貯金型と保険型とで非課税枠の考え方が異なる点には注意が必要です)。

給与天引きで自動的に積み立てられる仕組みは、貯蓄が苦手な人にとって「先取り貯蓄」の一種として機能しやすく、NISAやiDeCoなど投資性の資産形成と組み合わせて活用する選択肢のひとつになり得ます。

勤務先に財形貯蓄制度があるかどうか、まずは自社の福利厚生制度を確認してみるのもよいでしょう。

6. まとめにかえて|中央値はあくまで目安、まずは自分の世帯の分布を確認しよう

J-FLECの2025年調査によると、40歳代・二人以上世帯の貯蓄中央値は500万円、単身世帯は100万円で、いずれも前年より増加しました。

一方で、貯蓄ゼロの世帯も二人以上世帯で18.8%、単身世帯で32.1%残っており、中央値の上昇だけで40歳代全体の家計が安心できる状態になったとは言い切れません。

大切なのは、平均や中央値という「代表値」に一喜一憂するのではなく、自分の世帯がどのあたりに位置しているのかを確認し、支出や資産の状況を棚卸しすることです。

総務省の家計調査でも、40歳代の世帯は貯蓄より負債がわずかに上回る「負債超過」の状態にあり、その多くは住宅ローンなど将来の資産にもつながる借り入れです。貯蓄の中央値に届いていないからといって過度に焦る必要はなく、まずは自分の家計全体を把握することから始めましょう。

給与天引きの財形貯蓄のような手堅い仕組みと、NISAなどの投資性資産をどう組み合わせるか、家計全体を見渡しながら検討してみてはいかがでしょうか。

7. 【筆者コメント】

熊谷 良子

財形貯蓄は「昔からある地味な制度」という印象を持たれがちですが、給与天引きという強制力の強さは、実は資産形成において軽視できないポイントです。

ろうきん(労働金庫)で財形貯蓄を扱っている企業も多く、一般財形貯蓄であれば必要なときにいつでも引き出せる自由度の高さも特徴です。

非課税枠のある財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄は、途中で目的外に引き出すとさかのぼって課税される点だけは事前に理解しておく必要があります。

NISAのような値動きのある資産形成と、財形貯蓄のような手堅い先取り貯蓄は、どちらか一方ではなく、家計の状況に応じて併用を検討する読者が増えていくのではないかと感じています。

参考資料