「年金積立金、過去最高の302兆円に」ーーそんなニュースを目にして、拍子抜けした方も多いのではないでしょうか。
お盆が明けて8月分の年金が振り込まれた通帳を眺めながら、「うちの年金は全然増えていないのに」と感じたシニア世帯は少なくないはずです。
実際、2026年8月7日に厚生労働省が公表した令和7年度の決算によると、公的年金の積立金は時価ベースで302兆5893億円となり、前年度から42兆5136億円増加。
統計を遡れる中で初めて300兆円の大台に乗り、過去最高を更新しました。
ところが、この「過去最高」の恩恵は、個々の受給者の懐に直接反映されるわけではありません。
厚生年金の受給者のうち、月20万円に届かない人が実に8割を超えるのが実態です。
本記事では、まず厚生労働省の最新データから公的年金の受給実態を確認したうえで、積立金が過去最高となった背景と、物価高が続くなかでシニア世代の家計に何が起きているのかを整理していきます。
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厚生年金受給者の81.2%は月20万円未満で、月20万円に届いているのはわずか18.8%にとどまる。
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公的年金の積立金は過去最高の302兆5893億円に達した一方、物価高で個人の受給額は実質的に目減りしている。
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高齢無職世帯の貯蓄は6年ぶりに減少し、65歳以上世帯の家計は毎月4万2000円の赤字が「ふつう」になっている。
1. 厚生年金だけでは月20万円に届かないのが「ふつう」という現実
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、今のシニアが実際に受け取っている公的年金の平均受給額を見ていきます。
1.1 国民年金の平均受給額は月5万9310円
- 男女全体:5万9310円
- 男性:6万1595円
- 女性:5万7582円
2026年度の老齢基礎年金の満額は月額7万608円ですが、平均受給額は満額には届いていません。
そのため、国民年金だけで月20万円(年間240万円)の収入を得ることは難しいでしょう。
1.2 厚生年金の平均受給額は月15万289円
- 男女全体:15万289円
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
※国民年金の月額部分を含む。会社員など第1号厚生年金被保険者のデータ
厚生年金は現役時代の収入や加入期間によって受給額が異なりますが、平均受給額は約15万円となっています。
受給額の分布を見ると、9万円以上13万円未満の層が比較的多くなっています。
一方、厚生年金受給者のうち、月額20万円未満の人は81.2%にのぼります。
月20万円以上を受け取れているのはわずか18.8%にとどまり、国民年金のみの受給者も含めると、20万円に届かない人の割合はさらに高くなります。
2. 受給額に差が生まれる理由は「2階建て」の年金制度
年金額に大きな差が生じる背景には、日本の公的年金制度の仕組みがあります。
公的年金は、「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造となっています。
2.1 1階部分「国民年金(基礎年金)」
- 対象:原則として日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人
- 保険料:一律(2026年度は月額1万7920円)
- 特徴:受給額に大きな差が生じにくい
2.2 2階部分「厚生年金」
- 対象:会社員や公務員など
- 保険料:収入に応じて決定され、給与から天引き
- 特徴:加入期間や納付した保険料によって受給額が変わる
このように、厚生年金への加入期間や現役時代の収入が、老後に受け取る年金額へ大きく影響します。
厚生年金の受給額分布や公的年金の仕組みについては、『【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント』で詳しく解説をしています。ライフイベント別の年金手続き(転職・退職・住所変更・死亡)について知りたい方もぜひご参考に!
3. 年金収入だけでは生活費が不足するのが「ふつう」という現実
月20万円以上の年金を受け取る人が少ない一方で、老後の生活にはどの程度のお金が必要なのでしょうか。
総務省「家計調査報告(家計収支編)2025年」によると、65歳以上・無職の二人以上世帯の平均的な家計は次のようになっています。
毎月の平均収入:約25万4000円
- 実収入の合計:25万4395円
- うち社会保障給付(公的年金など):22万8614円
毎月の平均支出:約29万7000円
- 消費支出(食費・光熱費など):26万3979円
- 非消費支出(税金・社会保険料):3万2850円
支出合計:29万6829円
収入の内訳を見ると、合計25万4395円のうち、公的年金などの社会保障給付が22万8614円と約9割を占めています。
一方、支出は消費支出と非消費支出を合わせて29万6829円です。単純計算すると、毎月約4万2000円が不足する計算になります。
この収支の差が続いた場合、不足額は以下のようになります。
- 1年間で約50万円
- 10年間で約500万円
このデータはあくまで平均値であり、実際には急な医療費や介護費用が発生することも考えられます。老後の資金計画を立てる際の参考として捉えるのがよいでしょう。
4. 監修者からのコメント
公的年金の受給実態を見ると、厚生年金受給者の8割超が月20万円という水準に届いていないことが分かります。
ただし、受給額は一律に固定されているわけではありません。
日本年金機構の制度では、65歳での受給開始を1ヶ月遅らせるごとに年金額が0.7%増額され、75歳まで繰り下げれば最大84%増となります。
たとえば厚生年金の平均受給額(月15万289円)を70歳まで繰り下げた場合、単純計算では月21万円台まで引き上げることも可能です。
もちろん、繰り下げている間は受給できない期間が生じるほか、加給年金や在職老齢年金など他の制度との兼ね合いも生じるため、誰にでも一律に得な方法とは限りません。
健康状態や貯蓄状況、就労継続の見通しと照らし合わせながら、「平均でいくらもらえるか」だけでなく「自分は何歳から受け取るのが合理的か」を早めに試算しておくことが、老後の家計防衛の第一歩になるはずです。





