配偶者に先立たれたあと、遺された側の年金収入がどう変わるのか。夫婦で老後資金を考えるとき、ここまで具体的に話しているご家庭は多くありません。
遺族厚生年金の額は、日本年金機構によると、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。妻が40歳以上65歳未満で生計を同じくする子がいない場合などには、中高齢寡婦加算として年63万5500円(令和8年度)が上乗せされます。
この記事では、遺族厚生年金がいくらになるのかを計算式から確認し、あわせて2028年4月から予定されている男女差の解消についても整理していきます。
- 遺族厚生年金は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3
- 厚生年金の加入期間が300月(25年)未満でも、300月とみなして計算される
- 妻が40歳以上65歳未満で子がいない場合などは、中高齢寡婦加算 年63万5500円が加わる(令和8年度)
- 2028年4月から男女差が解消され、夫の55歳以上要件が緩和されるほか、有期給付加算により額は現在の約1.3倍になる予定
1. 遺族厚生年金は「報酬比例部分の4分の3」で決まる
遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた方が亡くなったときに、生計を維持されていた遺族に支給される年金です。まず額の決まり方を押さえておきましょう。
1.1 計算式のしくみ
日本年金機構によると、遺族厚生年金の額は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。
報酬比例部分は2つの期間に分けて計算します。平成15年3月までの期間は平均標準報酬月額に1000分の7.125を掛けて月数を掛けた額、平成15年4月以降の期間は平均標準報酬額に1000分の5.481を掛けて月数を掛けた額です。この2つを足したものが報酬比例部分になります。
1.2 300月に満たなくても300月で計算される
見落とされやすいのが、この規定です。厚生年金の被保険者期間が300月(25年)に満たない場合でも、300月とみなして計算されます。
働き始めて間もない時期に亡くなった場合でも、一定の水準が確保されるしくみです。ただし、これは死亡日時点で被保険者だった場合など、要件に応じた適用になります。
1.3 月額の目安
平均標準報酬額を35万円、厚生年金の加入期間を40年(480月)として、全期間を平成15年4月以降とみなして試算してみます。
報酬比例部分は35万円に1000分の5.481を掛けて480を掛けた年92万808円です。その4分の3にあたる年69万606円が遺族厚生年金となり、月あたりに直すとおよそ5万7550円になります。
ここに中高齢寡婦加算が加わる場合、年63万5500円は月あたり約5万2958円ですから、合わせて月11万円台になる計算です。
出所:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」をもとにLIMO編集部作成
2. 誰が受け取れるのか、優先順位と年齢の要件
遺族厚生年金は、遺族なら誰でも受け取れるわけではありません。順位が決まっており、順位の高い方が受け取ると下位の方は受け取れません。
2.1 受給できる遺族の範囲
優先順位は、子のある配偶者、子、子のない配偶者、父母、孫、祖父母の順です。
ここでいう「子」は、18歳到達年度の末日までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級に該当する子を指します。孫についても同じ扱いです。
2.2 男女で異なる要件
現行制度には男女差があります。子のない妻のうち30歳未満の方は、5年間のみの受給です。一方、夫が受け取る場合は55歳以上であることが要件で、支給が始まるのは60歳からとなります。父母と祖父母についても、55歳以上で60歳から支給という同じ扱いです。
つまり、同じ立場でも妻と夫で受け取り方が大きく違うのが、これまでの制度でした。
2.3 中高齢寡婦加算
夫が亡くなったときに妻が40歳以上65歳未満で生計を同じくする子がいない場合や、子のある妻が遺族基礎年金を受け取れなくなった場合などには、中高齢寡婦加算が上乗せされます。令和8年度の額は年63万5500円です。
3. 子がいる世帯は遺族基礎年金も重なる
18歳到達年度の末日までの子がいる場合は、遺族厚生年金に加えて遺族基礎年金も受け取れます。2つの年金が重なる期間は、世帯の収入水準がかなり変わります。
3.1 令和8年度の遺族基礎年金
令和8年度の遺族基礎年金は年84万7300円です。昭和31年4月1日以前生まれの方は年84万4900円となります。
これに子の加算が付き、第1子・第2子はそれぞれ24万3800円、第3子以降はそれぞれ8万1300円です。子が2人いる世帯なら、遺族基礎年金だけで年133万4900円になる計算です。
出所:日本年金機構「遺族年金ガイド令和8年度版」をもとにLIMO編集部作成
ただし遺族基礎年金は、子が18歳到達年度の末日を迎えると終わります。その後は遺族厚生年金と、要件を満たせば中高齢寡婦加算が残る形になります。
資産承継のご相談では、遺された側の収入がどこまで下がるかを一度も計算したことがない、というご夫婦が大半でした。遺族厚生年金は報酬比例部分の4分の3で、老齢基礎年金の分は引き継がれません。世帯として今いくら受け取っていて、片方になると何が消えるのか。この2つを並べて確認しておくことが出発点になります。


