5. 3Q累計で営業利益率11.7%。上方修正の中身

2026年8月期3Q累計の営業収益は6,907億円で前年同期比+16.9%、営業利益は808億円で同+36.0%だった。営業利益率は11.7%である。

増収の理由について、会社は国内外での出店による店舗数の増加に加え、とくに海外事業の売上が伸長したことを挙げている。増益については、生産体制の内製化による原価低減と値下げの抑制により営業総利益率の改善が進んだとしている。

利益の伸びは営業段階より下でさらに大きい。経常利益は823億円で同+42.5%、親会社株主に帰属する四半期純利益は585億円で同+34.3%。為替差益に加え、政策保有株式の売却とシステム障害に係る補償金等の計上が寄与したと会社は説明している。政策保有株式については、上期の時点で全て売却したとしている。

通期予想は上方修正された。営業収益9,070億円(前期比+15.6%)、営業利益980億円(同+32.7%)、経常利益990億円(同+36.9%)、当期純利益670億円(同+31.8%)である。3Q累計で営業利益808億円を積んでいるので、進捗は8割を超える。

自己資本比率は前期末の59.0%から60.4%へ上がった。小売業の中央値48.8%を上回る水準である。純資産の増加は利益剰余金418億円のほか、繰延ヘッジ損益140億円、為替換算調整勘定101億円の増加によるものだと会社は説明している。海外資産の比重が、財務諸表の変動要因としても効いている。

6. 5期の営業利益率。9.4%から5.7%へ落ちて戻った軌跡

過去5期の営業利益率を並べると、直線ではない。2021年8月期が9.4%、2022年8月期6.6%、2023年8月期5.7%、2024年8月期8.5%、2025年8月期9.4%である。谷を作って元の水準まで戻ってきた形だ。

営業収益は同じ期間に4,536億円から7,846億円へ、1.7倍になっている。売上が伸び続ける一方で利益率が一度大きく落ちたのだから、この期間に費用の側で何かが起きていたことになる。

ROE(自己資本利益率)も同じ形をしている。17.3%、10.8%、8.7%、14.9%、16.3%。谷は2023年8月期だ。

注目したいのは、売上が1.7倍になったあとの営業利益率が、谷の前と同じ9.4%だという点である。規模が大きくなっても利益率は上がっていない。小売業の中央値3.7%と比べれば高い水準だが、自社の過去と比べると、この5期で収益性そのものは切り上がっていない。

絶対水準は業種のなかで厚みを維持し、自社の時系列では横ばい。規模の拡大が利益率に効いていないのなら、今後の利益の伸びは店舗数と単価の側から取るしかない。3Q累計の11.7%が通期でどこまで残るかは、その意味で見どころになる。

7. 筆者コメント

過去5期の数字を並べて眺めると、この会社は二度、性格を変えているように見える。

一度目は利益率が落ちた局面だ。売上を伸ばしながら利益率を落とす期間が続いた。二度目は直近で、原価と値下げの管理を締めて利益率を戻してきた。

そのうえで地域別を見ると、戻した利益率の中身が国内と海外で違う。国内は費用を削って戻し、東アジアは売上を伸ばして自然に改善した。同じ「利益率の改善」という言葉で括られても、続きやすさは別物だ。

私が気にしているのは、規模が1.7倍になっても利益率が5期前の水準に戻っただけ、という事実である。店を増やしても効率が上がらないのなら、その事業は規模の経済が効きにくい構造だということになる。

セグメント別の数字は、こういう構造の違いを一番はっきり見せてくれる。連結の利益率だけでなく、地域ごとの利益率とその伸び方に目を向けてみてほしい。

 

参考資料

8.1 免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
  • 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
  • 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
  • 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。

石津 大希