無印良品といえば、まず思い浮かぶのは駅前や郊外の店舗ではないだろうか。私もそうだった。

ところが良品計画(7453)の地域別セグメントを開くと、営業利益率がいちばん高いのは国内事業ではない。売る場所と、稼ぐ効率のいい場所が一致していないのだ。その差がどこから来ているのかを見ていく。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

この記事の3つのポイント
  • ①2025年8月期の東アジア事業の営業利益率は19.3%。国内事業の11.1%を8ポイント上回っている
  • ②売上構成比は国内59.9%、東アジア28.3%。売る比率と稼ぐ効率が同じ形をしていない
  • ③2026年8月期3Q累計でも東アジア事業のセグメント利益は454億円で前年同期比+39.6%。差は縮まっていない

1. 店舗の印象と、地域別の営業利益率のズレ

無印良品という名前から思い浮かぶのは、たいてい日本の店舗だ。2026年8月期3Q末時点で、国内の店舗数は708店舗。ライセンスドストアを含めた国内外の合計は1,463店舗である。

店舗の数だけを見れば、海外755店舗と国内708店舗はほぼ並んでいる。ここまでなら、日本と海外が半分ずつという理解でよさそうに見える。

ところが営業利益率で見ると、地域はきれいに横並びにならない。2025年8月期は国内事業が11.1%、東アジア事業が19.3%だった。8ポイントの差である。

東南アジア・オセアニア事業は11.1%、欧米事業は16.4%。国内が地域のなかで最も高いわけではないどころか、最も低い水準に並んでいる。

小売業の営業利益率の中央値は3.7%だから、国内の11.1%も業種のなかでは十分に高い。それでも同じ会社の中では、東アジアのほうが効率よく稼いでいる。

2. 東アジア19.3%と国内11.1%。差はどこから来るのか

差の中身を売上と利益の両側から見ていく。2025年8月期の国内事業は営業収益4,701億円で全体の59.9%を占め、営業利益は521億円だった。東アジア事業は営業収益2,222億円で構成比28.3%、営業利益427億円である。

売上では国内が東アジアの2倍を超えるのに、利益ではその差が100億円足らずまで縮む。売る量の比率と、利益の比率が一致していないのはここだ。

東南アジア・オセアニア事業は営業収益501億円で営業利益55億円、欧米事業は営業収益421億円で営業利益69億円。売上規模はどちらも国内の1割前後だが、欧米は営業利益率16.4%で東南アジア・オセアニアの11.1%を上回る。

伸びの方向も地域で違う。2025年8月期は国内事業の営業収益が前期比+20.9%、営業利益が+31.2%。東アジア事業は営業収益+14.2%、営業利益+20.5%だった。この期は国内の伸びのほうが速い。

では直近はどうか。2026年8月期3Q累計では、国内事業が営業収益3,911億円(前年同期比+8.9%)、セグメント利益511億円(同+23.9%)。東アジア事業は営業収益2,128億円(同+29.3%)、セグメント利益454億円(同+39.6%)である。

3Q累計での利益率は国内が13.1%、東アジアが21.3%。差は8ポイントのまま残っている。むしろ東アジアの伸びのほうが速く、縮まる方向には向かっていない。

なぜ東アジアの効率が高いのか。会社の説明によると、中国大陸事業は生活雑貨と食品を中心に全部門で売上が伸長し、売上の伸長に伴う販管費率の改善で営業利益が増えた。台湾事業、香港事業、韓国事業も売上が伸びて増収増益だったとしている。

国内側も改善している。会社は、生産体制の内製化による原価低減と値下げの抑制により営業総利益率が改善したと説明している。プロモーション施策が奏功して増収となった一方、ECはシステム障害からの復旧後、3Qに入り徐々に回復傾向にあるという。

地域による営業利益率の差は、売り方の違いよりも固定費の重さの違いから来ていると読み取れる。国内は店舗網が成熟しており、既存店の売上が伸びても販管費率の改善幅は限られる。一方で東アジアは、出店とスクラップアンドビルドを進めながら売上が伸びる段階にあり、費用の増え方が売上に追い越されやすい。

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出所:株式会社 良品計画 有価証券報告書をもとに筆者作成

出所:株式会社 良品計画 有価証券報告書をもとに筆者作成

3. 直近1カ月の株価と、直近時点のPER・PBR

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

株価は直近1カ月でほとんど水準を変えていない。7月23日の終値4,224円から8月21日の4,237円へ、ほぼ横ばいである。

もっとも、期間の内側では上下している。7月31日には4,177円まで下げ、ここが期間中で最も低い水準となった。8月に入ると戻りが続き、8月10日には4,526円まで切り上がった。これが期間中で最も高い水準だ。

その後は4,300円台での往復を経て水準を落とし、8月21日の終値は4,237円。前日の4,379円から142円、率にして3.2%の下落となった。

1カ月をならせば横ばいで、内側には8%前後のレンジがある。決算の開示がない期間であり、値動きは相場全体の地合いや需給に振らされた部分が大きいとみられる。

8月21日時点のPER(株価収益率)は33.56倍、PBR(株価純資産倍率)は5.67倍である。小売業のなかでは高い水準だ。会社の通期の予想EPS(1株当たり当期純利益)は126.19円で、株価がその30倍台に乗っている状態である。

この水準に、東アジアの営業利益率19.3%という数字がどこまで織り込まれているのか。市場が国内の店舗事業ではなく海外の伸びに価格を付けているのなら、東アジアの成長が鈍る局面での反応は大きくなりやすいだろう。

4. 筆者コメント

見逃せないのは、営業利益率の差が一過性ではないという点だ。

2025年8月期でも、2026年8月期3Q累計でも、東アジアの利益率は国内を8ポイント上回っている。単年の振れではなく、しばらく続いている形である。

小売業の海外展開は、たいてい国内より収益性が落ちると語られることが多い。物流も人材も現地で組み直すからだ。この会社ではその一般的な理解が逆になっている。

理由は成長の段階の違いだと私は見ている。国内は店舗網が出来上がっており、費用の削減で利益率を上げていく局面にある。東アジアは店舗が増えながら売上が伸びる局面で、費用が売上に追い抜かれやすい。

だとすれば、この差は永続しない。東アジアの出店が一巡すれば、いまの国内と同じ課題に突き当たる。いまの利益率をこの会社の実力と読むか、成長段階の反映と読むか。そこで結論は変わってくる。