4. 働きながら年金を受け取るときの2つの注意点
65歳以降も働きながら年金を受け取る場合、知っておきたい仕組みが2つあります。
4.1 在職老齢年金の基準額は2026年4月から65万円に
厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取る場合、給与と年金の合計額が一定の基準を超えると年金の一部または全部が支給停止になります。これが在職老齢年金の仕組みです。
日本年金機構によると、この支給停止調整額は2026年4月から51万円が65万円に見直されました。基準額が引き上げられたことで、支給停止の対象となる方は以前より少なくなっています。
ただし、対象になるのは老齢厚生年金の報酬比例部分であり、老齢基礎年金は支給停止の対象外です。自分の年金額と給与で計算するとどうなるかは、年金事務所で確認できます。
4.2 70歳未満で働くと厚生年金保険料の負担が続きます
70歳未満で厚生年金の適用事業所に勤める場合、要件を満たせば厚生年金保険料の負担が続きます。手取りが想定より少なくなることもあるため、事前に確認しておきたい点です。
一方で、加入期間が延びれば将来の老齢厚生年金は増えます。負担と増額のどちらを重く見るかは働き方によって変わりますので、勤務先や年金事務所に相談しながら判断してください。
5. 【対応策】働く選択を決める前に確認しておきたいこと
働き続けるかどうかは、収入だけで決められるものではありません。判断の材料をそろえるところから始めていきましょう。
5.1 まず自分の年金見込額を確認する
平均額はあくまで全体の目安であり、自分の受給額とは一致しません。ねんきん定期便やねんきんネットで、自分の見込額を確認するところから始めてみてください。
見込額がわかれば、生活費との差額がいくらになるのかが見えてきます。働いて埋めるのか、資産の取り崩しでまかなうのかという判断もしやすくなります。
5.2 繰下げ受給は増額幅と影響の両方を見る
働いて収入がある間は年金の受給開始を遅らせ、受給額を増やすという選択肢もあります。1カ月遅らせるごとに0.7%、最大10年で84%の増額です。
ただし、増えた年金額に応じて税金や社会保険料の負担も変わります。加給年金や振替加算を受けている場合は取り扱いが複雑になるため、繰下げを検討する際は年金事務所に相談しましょう。
5.3 働き方の変化に合わせて家計を組み直す
65歳以上の雇用者の76.9%が非正規という数字が示すとおり、働き続けても収入は現役時代より下がるのが一般的です。固定費の見直しは、収入が変わる前に着手しておくと効果が長く続きます。
資産形成についても、NISAのつみたて投資枠などを使って長期で取り組む方法があります。元本割れの可能性がある点は前提として押さえたうえで、無理のない金額から検討してみてください。
6. まとめにかえて
65歳以上の就業者は930万人、就業率は25.7%まで上昇しました。65歳から69歳では半数を超える方が働いています。
一方で厚生年金の平均は月15万289円、国民年金は月5万9310円という水準です。働き続けるという選択が、年金だけでは足りない部分を補う役割を担っている面もあります。
まず自分の年金見込額と生活費を並べて確認しておくことが、これからの働き方を考える出発点になります。判断に迷う点があれば、年金事務所や市区町村の窓口で確認しながら進めていきましょう。
参考資料
- 総務省統計局「労働力調査(基本集計)2026年(令和8年)6月分」
- 総務省統計局「統計トピックスNo.146 統計からみた我が国の高齢者」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「在職老齢年金制度が改正されました」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
宮野 茉莉子