3. 手取り月3万円(年間36万円)を作るシミュレーション

3.1 配当金にかかる税金と新NISAの効果

通常、株式の配当金には、所得税・住民税を合わせて約20.315%の税金がかかります。

100円の配当を受け取っても、実際に手元に残るのは約80円という計算です。

ところが、新NISAの「成長投資枠」で購入した株式やETFであれば、この税金がまるごとゼロになります。つまり、同じ配当金額でも、新NISAを使うだけで受け取れる金額が実質的に約1.25倍に増えるということです。

3.2 【利回り別】手取り月3万円に必要な投資額の目安

では、実際に手取り月3万円(年間36万円)の配当金を得るには、どれくらいの投資額が必要になるのでしょうか。

新NISAの成長投資枠を活用した場合の目安を、利回り別にまとめました。

配当金で「手取り月3万円」を作るシミュレーション3/3

配当金で「手取り月3万円」を作るシミュレーション

出所:想定利回りをもとにLIMO編集部が算出

想定利回り(税引前)が3.5%の場合、月3万円の配当を得るには約1029万円、4.0%であれば900万円ほどの投資額が目安になります。

まとまった金額に見えますが、これは「最終的な目標」であり、最初からこの金額を用意する必要はありません。

3.3 最初から3万円を目指さなくてもいい:現実的なステップアップ

大切なのは、無理のない範囲でステップを踏むことです。

まずは月1万円(年12万円)の配当を目指し、利回り3.5〜4.0%であれば300万〜343万円程度の投資額からスタートします。そこから月2万円、月3万円へと、時間をかけて段階的に積み上げていく方法であれば、一度に大きな資金を用意する必要がなく、無理なく取り組みやすくなります。

4. 初心者シニアには「円で買える東証上場ETF」がおすすめな理由

4.1 米国ETFとの比較:初心者にはハードルが高い理由(参考情報)

配当を目的とした投資では、米国の高配当株やETFも選択肢としてよく紹介されます。

ただし、米国の株式やETFは取引そのものが米ドルで行われるため、日本円との両替(為替)の手続きが必要になり、為替レートの変動によって受取額が変わるという特徴があります。また、米国株の配当には現地であらかじめ10%の税金が差し引かれる仕組みになっており、新NISA口座で保有している場合はこの10%を取り戻す手段がありません。

課税口座で保有していれば、確定申告で「外国税額控除」を申請することで一部を取り戻せる可能性がありますが、確定申告の手続きが必要になります。こうした点から、投資に慣れていない方が最初の一歩として選ぶには、ハードルがやや高い商品といえます。

4.2 東証上場ETFの強み:円でそのまま買えて手続きが不要

これに対して、東京証券取引所に上場している国内の高配当ETFであれば、日本円でそのまま売買でき、為替の変動を気にする必要がありません。配当(分配金)にかかる税金についても、新NISAの成長投資枠で保有していれば非課税になり、確定申告のような追加の手続きも基本的に不要です。初めて配当を目的とした投資に取り組むシニア世代にとって、仕組みがシンプルで分かりやすい点は大きな強みです。

4.3 身近な日本企業にまとめて投資できる

東証上場の高配当ETFの多くは、1つの商品を買うだけで、複数の日本企業にまとめて投資できる仕組みになっています。

例えば「NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信(1489)」は、日経平均株価の構成銘柄のうち、配当利回りが高いとされる原則50銘柄にまとめて投資する商品で、1口あたり数千円程度から購入できます(2026年8月時点)。

個別の企業を1社ずつ選んで買う必要がなく、少額から複数企業への投資を始められる点も、初心者にとって取り組みやすい理由の一つです。

和田 直子
米国株には米国株ならではの魅力もありますが、初めての一歩としては、仕組みが分かりやすく手続きの少ない東証上場ETFから始めるほうが、途中で挫折しにくいというメリットがあります。まずは仕組みに慣れることを優先してもよいでしょう。

5. 損をしないために!初心者が押さえるべきETF選びの3ルール

5.1 ルール1:1社に集中せず、自動的に分散されているか

ETFを選ぶ際は、投資先が1社だけに偏っていないかを確認しましょう。例えば1489は原則50銘柄に自動的に分散する仕組みになっており、1つの企業の業績が悪化しても、投資全体への影響を和らげやすくなっています。目安として、数十社から数百社程度にまとまって投資できるETFであれば、1社への集中リスクを抑えられます。

5.2 ルール2:過去に極端な「減配」がなかったか確認する

ETFの分配金(配当金)は、業績の悪化などにより減額されること(減配)があります。1489の分配金の実績を見ると、新型コロナウイルスの影響が大きかった2020年7月の分配金は、通常時に比べて大きく落ち込んでおり、その後2020年10月にかけて徐々に回復していく動きが確認できます(野村アセットマネジメント公式サイトの分配金実績より)。1489自体は2017年に上場した比較的新しいETFのため、2008年のリーマンショック時の実績は確認できませんが、コロナショックのような急激な市況悪化時には、分配金が一時的に落ち込む可能性があることは、あらかじめ理解しておく必要があります。ETFを選ぶ際は、こうした過去の急落局面での分配金の動きも、可能な範囲で確認しておくと安心です。

5.3 ルール3:運用コスト(信託報酬)が安いか確認する

ETFを保有している間は、「信託報酬」という運用コストが継続的にかかります。これは購入時に一度払うものではなく、保有している間、資産から自動的に差し引かれ続ける費用です。目安として、年0.1〜0.3%程度であれば比較的低コストとされます。例えば1489の信託報酬は年率0.308%(税込)です。わずかな差でも長期間保有することで積み重なっていくため、購入前に確認しておきたいポイントです。

5.4 コラム:受け取るタイミングを広げる工夫(慣れてきたら検討したい応用編)

ここまでは、1489のような東証の高配当ETFを1本持つ場合を中心に見てきました。東証の主要な高配当ETFは、配当(分配金)の基準日が1・4・7・10月に集中している商品が多く、1本だけを持つ場合は、受け取りの機会は年4回に限られます。

もう一歩進めるなら、決算月の異なる個別の高配当株を組み合わせる方法や、投資信託を活用する方法もあります。新NISAの成長投資枠では「毎月」分配を行う投資信託は対象外ですが、2カ月に1回分配を行う「隔月分配型」の投資信託は対象に含まれています。市場に出ている隔月分配型の多くは、年金の支給されない奇数月(1・3・5・7・9・11月)に合わせて分配するタイプですが、少数ながら偶数月(2・4・6・8・10・12月)に分配するタイプもあり、この2つを組み合わせると、受け取る月をより多く広げることができます。

ただし、この工夫には注意点もあります。個別株を組み合わせる場合、銘柄を増やすほど1社ごとの業績に受け取り額が左右されやすくなり、ETFのような「自動的な分散」の効果は薄れます。また、隔月分配型の投資信託は、信託報酬などの運用コストが比較的高めの商品が多く、運用状況によっては、利益からではなく元本の一部を取り崩して分配金を支払う「特別分配金」が発生することもあります。受け取れる頻度を増やすことと、資産が着実に育っていくことは、必ずしも同じ方向を向いているわけではないという点を理解しておくことが大切です。

和田 直子
特別分配金は元本の一部を取り崩して支払われるお金なので、正確には「利益」ではありません。ただ、その分を現金の預貯金から取り崩す場合と比べると、残りの資産は運用に置かれたままになるため、市場の状況によっては資産が目減りするペースを緩やかにできる可能性があります。もちろん運用成果に左右されるため保証されたものではありませんし、同じような効果は、分配のない投資信託を保有しながら必要な分だけ定期的に売却する方法でも得られます。「受け取り方の一つの工夫」として、メリットと注意点の両方を知っておくとよいでしょう。

6. もらった配当金は再投資せず「どんどん使う」のが正解

6.1 資産形成期とリタイア期では、優先すべきことが違う

働いている現役世代であれば、受け取った配当金をそのまま再投資に回し、資産をさらに増やしていく方法が合理的です。しかし、シニア世代の場合は事情が異なります。今後の人生を「今、どう豊かに過ごすか」がより大切な視点になってくるため、「将来のためにさらに増やす」ことよりも、「今の生活を楽しむために使う」ことを優先する考え方があってよいのです。

6.2 配当金が入ったら、我慢せず楽しみに使う

配当金を受け取ったら、無理に貯め込んだり再投資したりせず、旅行や趣味、外食、孫への贈り物など、自分自身や家族が楽しめることに使ってみましょう。「配当金が入ったら、こんな楽しみに使おう」という具体的な目標があると、投資を続けるモチベーションにもつながります。我慢を重ねるだけの資産形成では長続きしにくいものですが、楽しみながら受け取り、使っていくサイクルであれば、心が折れずに長く続けやすくなります。

和田 直子
配当金を受け取っても使わずに貯め込んでしまうと、「なぜ投資を続けているのか」という目的がぼやけてしまいがちです。年に一度は配当金を使って楽しむ予定を決めておくなど、受け取ったお金の「使い道」を先に考えておくのもおすすめです。

7. まとめ

年金にプラスして配当金で月3万円を作るという目標は、最初から大きな金額を用意する必要はなく、月1万円から段階的にステップアップしていけば、無理なく近づけるものです。

新NISAの成長投資枠を活用し、仕組みが分かりやすい東証上場ETFから始めることで、初心者のシニア世代でも取り組みやすくなります。ただし、株式には元本割れのリスクがあることを忘れず、生活防衛資金を確保したうえで、無理のない金額から始めることが何より大切です。そして、受け取った配当金は、我慢せずに「今の暮らしを楽しむため」に使っていきましょう。

【免責事項】

  • 本記事は、特定の金融商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。
  • 投資には元本を割り込むリスクがあります。投資に関する最終的な判断は、必ずご自身の責任において行われるようお願いいたします。

参考資料

和田 直子