医薬品というと、薬価改定や特許切れ、後発品の攻勢に押されて利益が読みにくい業種、というイメージを持つ人もいるだろう。だが中外製薬(4519)の決算を開くと、その一般的な見方とは食い違う数字が並ぶ。しかも直近の株価は、好調な決算のあとに、むしろ下げている。この収益力の強さと株価の弱さのちぐはぐさを、費用構造まで踏み込んで見ていきたい。
※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
この記事の3つのポイント
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①2026年12月期上期は売上収益(IFRS)6,633億円(前年同期比+14.7%)、営業利益3,196億円(同+16.9%)、中間利益2,317億円(同+19.2%)と増収増益。 -
②好調な決算の一方、株価は上期決算の発表後に大きく下押しし、8月14日終値は6,933円。直近時点のPBRは5.63倍。 -
③研究開発費は上期で902億円(売上収益比13.6%)。重い研究開発費を抱えながら、営業利益率は業種で突出した水準を保つ。
好決算のあとに株価が下げた、直近1カ月
中外製薬の株価は、直近1カ月では大きな方向感の乏しい展開のなかで、やや水準を切り下げた。
7月中旬は7,100円台で推移していたが、7月下旬に上期決算を発表した直後の営業日に大きく下押しし、一時6,800円台まで下げた。その後8月半ばにかけて7,100円台を回復したものの、8月14日は前日から約3%下げ、終値は6,933円となった。
増収増益の決算を出しながら、株価はむしろ売られる場面が目立った。背景には、通期の業績予想が据え置かれ、上期の好調を受けた上方修正が見送られたことへの物足りなさや、一部の開発中止が伝わったこと、高い株価水準からの利益確定が意識された可能性がある。株価の反応は、決算の良し悪しだけで決まるものではない。
2026年12月期上期、主力品と海外輸出で2桁増収
上期の実績を確認する。売上収益(IFRS)は6,633億円で前年同期比+14.7%、営業利益は3,196億円で同+16.9%、中間利益は2,317億円で同+19.2%となった。
何が伸びをけん引したのか。会社の説明によると、国内では薬価改定や後発品の浸透という逆風を受けつつも、眼科向けのバビースモをはじめとする主力品や新製品が伸長した。海外では、アライアンス先であるロシュ向けのヘムライブラ輸出が増え、導出した皮膚疾患薬の輸出も大幅に増加したとしている。
利益の押し上げには、製品の販売以外の収益も効いている。ロイヤルティ収入などを含むその他の売上収益は968億円と、前年同期比+44.5%に伸びた。薬価改定という業種共通の逆風のなかで、複数の収益源が同時に働いていると読み取れる。
株価の指標に目を向けると、直近時点のPBR(株価純資産倍率)は5.63倍となっている。純資産に対して高い倍率がつく背景には、後述する高い資本効率がある。
筆者コメント
好決算なのに株価が下げる。この一見の矛盾は、何を示しているのか。
答えの一つは、市場の期待との差にある。中外の上期は増収増益だが、通期予想は据え置かれた。上期の勢いから上方修正を織り込んでいた投資家にとっては、現状維持の姿勢が物足りなく映ったのかもしれない。
決算の中身が良いことと、市場の期待を超えることは別物だ。この二つを分けて眺めると、好決算後の株価の弱さも落ち着いて受け止められるのではないだろうか。
