夏のボーナスの使い道が一段落する8月から9月にかけては、まとまった資金の置き場所や、これからの積み立て方を見直す人が増える時期です。

菅原 美優
50歳前後の方から「今から始めても間に合うのか」と不安に思う方は多いのではないでしょうか。残りの期間が限られているからこそ、金額と期間を具体的な数字に置き換えて確認しておくことが大切です。

「老後資金を準備したいけれど、50歳を過ぎてからでは遅いのではないか」と感じている方は多いのではないでしょうか。

しかし、定年までの十数年をどう使うかで、手元に残る金額は大きく変わります。

この記事では、50歳から65歳までの15年間、毎月5万円を積み立てた場合の試算を出発点に、定期預金に預けた場合との差や、NISAの非課税メリットがどれほどの金額になるのかを順に確認していきます。

なお、定期預金の金利水準およびNISAの運用益非課税の仕組みに関する解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【月3万円×20年】預金と新NISAの資産差はいくら?「利回り5%の積立投資 VS 金利0.3%の銀行預金」シミュレーションで徹底比較 インフレリスクを踏まえ、「複利効果」のインパクトを解き明かす
【月3万円×20年】預金と新NISAの資産差はいくら?「利回り5%の積立投資 VS 金利0.3%の銀行預金」シミュレーションで徹底比較 インフレリスクを踏まえ、「複利効果」のインパクトを解き明かす

1. この記事を読むとわかる3つのポイント

  •  50歳から毎月5万円を年率3%で15年間積み立てると、元本900万円が1131万円になる試算
  •  同じ毎月5万円を定期預金(年0.5%)で積み立てた場合、15年間の利息は税引前で約34万円にとどまる
  •  運用益231万円にかかるはずの約47万円の税金が、NISA口座なら一切かからない

2. 【年率3%で試算】50歳から65歳まで「毎月5万円」を積み立てると、いくらになる?

言葉だけではイメージが湧きにくいと思いますので、まずは具体的な数字で確認してみましょう。

50歳の方が65歳で退職するまでの15年間、毎月5万円をNISAで積み立て、年率3%で運用できたと仮定します。

  • 積立元本:5万円×12カ月×15年=900万円
  • 15年後の資産総額:1131万円
  • 運用によって得られた利益:1131万円-900万円=231万円

毎月コツコツと積み立てを続けることで、元本の900万円が230万円以上増える可能性があるということです。

もちろんこれはあくまで一定の利回りを前提とした試算であり、投資である以上、元本割れのリスクは避けられません。ただし、長期にわたって分散しながら積み立てることで、リスクを抑えつつリターンを狙うことが期待できます。

2.1 【シミュレーション】スタートが5年遅れて「55歳から」だと、どれだけ差がつく?

同じ毎月5万円・年率3%という条件のまま、始める年齢だけを55歳に遅らせた場合を試算してみましょう。65歳までの期間が15年から10年に縮まります。金融庁「つみたてシミュレーター」と同じ複利の考え方による、単純計算での目安です。

  • 積立元本:5万円×12カ月×10年=600万円
  • 10年後の資産総額:約697万円
  • 運用によって得られた利益:約697万円-600万円=約97万円

50歳から始めた場合(資産総額1131万円・運用益231万円)と比べると、資産総額の差は約434万円にのぼります。このうち積立元本の差は300万円ですから、残る約134万円は「運用できる期間が5年短くなったこと」による差だと考えられます。同じ金額を同じ利回りで積み立てても、始める時期が5年違うだけでこれだけの開きが出るのは、複利で増える期間そのものが短くなるためです。「まだ先でいい」と判断を先送りにすることには、こうしたコストが伴う点は意識しておきたいところです。

菅原 美優
この試算で押さえておきたいのは、年率3%という数字が保証されたものではないという点です。運用成績によって結果は上下しますし、途中で相場が下がる局面も当然あります。ただ、だからこそ「毎月一定額を、決まったタイミングで買い続ける」という積立の形が意味を持ちます。価格が下がった月には多くの口数を買えるため、購入価格が平準化されやすくなるからです。

3. 同じ900万円を定期預金に預けたら?15年間で受け取れる利息を比べる

それでは、同じように毎月5万円を銀行の定期預金で積み立てた場合はどうなるのでしょうか。

現在の日本の大手銀行における定期預金金利は、年0.3%程度の水準にとどまっています。

本記事では、これよりやや高めの年0.5%で計算してみます。それでも、15年間で得られる利息は税引前で約34万円にとどまります。

NISAを活用した場合の運用益(約231万円)と比べると、その差は約197万円。同じ月5万円を15年間積み立てても、置き場所が違うだけでこれだけの開きが生まれる計算です。

さらに見過ごせないのが、物価の上昇です。積み上げた元本900万円を預金として置いておいても、増える金額はごくわずか。物価が上がる局面では、金額そのものは減らなくても、そのお金で買えるものが目減りしていく可能性があります。

年1%にも満たない金利のもとで、預金だけを頼りに老後資金をつくっていくのは、現実的にはかなり難しいといえるでしょう。

菅原 美優
誤解のないようにお伝えしておくと、預金が不要だという話ではありません。急な出費や当面の生活費にあてる資金は、値動きのない預金で確保しておく必要があります。分けて考えたいのは「使う時期が決まっていないお金」の置き場所です。10年以上先まで使う予定のない資金まで、すべて預金に置いたままにしていないかどうか、という点からチェックしてみてください。

4. NISA最大の利点は「運用益が非課税」——47万円の差が生まれる理由

NISAが老後資金づくりに向いているといわれる最大の理由が、運用で得た利益に税金がかからない点です。

通常の課税口座では、投資で得た利益に対して約20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税)の税金が課せられますが、NISA口座ではこれらが非課税となります。

先ほどの試算で得られた利益は231万円でした。これを課税口座で運用していた場合、差し引かれる税金は次のようになります。

  • 税額:231万円×20.315%=約47万円

通常であれば、50万円近くが税金として引かれてしまう計算です。しかしNISA口座での運用であれば、この税金は一切かかりません。

つまり、運用で得た利益231万円を、まるごと自分の資産として受け取れる可能性があるということです。

増えにくい預金と比べても、税金が差し引かれる課税口座と比べても、NISAが個人の資産形成を後押しする制度として設計されていることがわかります。

菅原 美優
この47万円という金額は、利益が出て初めて意味を持つものです。毎月5万円という数字を見て「うちには無理だ」と感じた方もいらっしゃると思いますが、金額を下げても仕組みそのものは変わりません。少額から始めた場合にどの程度の効果が見込めるかは、「【新NISA】「月5000円」でも効果は期待できるのか、積立投資をシミュレーションしてみた 「老後資金に不安あり」82.3%…最新の意識調査もチェック」もあわせてご覧ください。