9月21日の敬老の日を控え、親や祖父母の暮らしぶり、あるいは自分自身の老後資金について考える機会が増えている方も多いのではないでしょうか。
総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の単身・無職世帯における毎月の消費支出は14万8445円となっています。
一方で、税金や社会保険料を差し引いた可処分所得は約11万8465円にとどまり、平均的には毎月2万9980円の不足が生じている計算です。
この差額は、多くの場合、貯蓄の取り崩しによって補われています。つまり、年金収入だけで生活費を完全にカバーできているわけではないというのが実態です。
こうした収支のバランスから見えてくるのが、「月15万円前後」という一つの目安です。これはゆとりある生活というよりも、最低限の支出を維持するための現実的なラインといえるでしょう。
では、この水準に公的年金だけで届いている人はどれくらいいるのでしょうか。本記事では、年金の受給額分布に着目しながら、単身世帯の収入構造をより具体的に確認していきます。
※本記事は一部「【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント」を引用のもと執筆しています。
1. 【年金制度の基本】国民年金と厚生年金の「2階建て構造」とは?
まずは、日本の年金制度についておさらいしていきます。
公的年金制度は、ベースとなる「国民年金(基礎年金)」と、上乗せ部分の「厚生年金」から成り立つため、「2階建て構造」と呼ばれています。
【1階部分】国民年金(基礎年金)
日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入を義務付けられているのが国民年金です。
自営業者、フリーランス、学生、無職の人などが「第1号被保険者」として加入し、全員が一律の保険料を納めます。会社員に扶養されている配偶者(年収130万円未満など)は「第3号被保険者」となり、個別の保険料負担はありません。
【2階部分】厚生年金
厚生年金保険の適用事業所に勤務する会社員や公務員が加入するのが厚生年金です(第2号被保険者)。国民年金に上乗せされる形で加入するため、将来は「基礎年金+厚生年金(報酬比例部分)」の2階建てで年金を受け取ることができます。保険料は給与額に応じて変動し、会社と従業員が半分ずつ負担する「労使折半」が大きな特徴です。
こうした違いにより、老後に受け取る年金額は一律ではなく、これまでの働き方や収入水準、加入期間などによって個人差が生じます。
さらに、公的年金の給付水準は固定されたものではなく、物価や現役世代の賃金動向を踏まえて毎年度調整される仕組みとなっている点も押さえておきたいポイントです。
※3 特定事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
2. 【2026年度の年金額改定】厚生年金+2.0%・国民年金+1.9%で年金はいくら増える?
公的年金の支給額は、物価や現役世代の賃金の動きを反映しながら、毎年度見直しが行われます。
2026年度は、国民年金(基礎年金)が前年度比で1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%引き上げられ、これで4年連続の増額改定となっています。
- 国民年金(老齢基礎年金(満額)):7万608円(1人分 ※1)
- 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分※2)
※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円(対前年度比+1300円)です。
※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。
国民年金のみで受給する場合、満額(※3)でも月およそ7万円にとどまります。仮に繰り下げ受給(※4)して受給開始を75歳まで遅らせたとしても、増額後の水準は月13万円に届きません。
※3 国民年金(老齢基礎年金)の満額:国民年金保険料を480カ月納付した場合に、65歳から受け取れる年金額
※4 繰下げ受給:老齢年金の受給開始年齢を66歳~75歳までの間に後ろ倒しする制度。「繰下げ月数×0.7%」の増額率が適用され、75歳で受給開始した場合の増額率は84%。
3. 【受給水準】厚生年金+基礎年金「月額15万円」に届く人はどのくらいいるのか?
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の男女全体の平均月額は「15万289円」です。
この金額には1階部分の国民年金(老齢基礎年金)も含まれており、一定の水準に見えるものの、実際の分布を見ると受給額には大きな幅があります。
受給額ごとの人数分布は以下のとおりです。
3.1 厚生年金の受給額ごとの受給権者数
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
月額15万円以上を受け取っている人は全体の半数に届かず、約49.8%にとどまります。さらに、そもそも厚生年金に加入していない人も含めて考えると、「年金だけで生活費をまかなえる層」は決して多数派ではないことが分かります。
「平均月額15万289円」と聞くと、多くの人がその水準を受け取れていると考えがちですが、本文で見たとおり、実際に月15万円以上を受給しているのは全体の49.8%、つまり半数に届きません。
「増額改定」という言葉にも注意が必要です。今回の改定率(厚生年金+2.0%・国民年金+1.9%)はマクロ経済スライドによる調整を経た数字であり、物価上昇率をそのまま反映したものではないため、額面が増えても実質的な購買力は目減りしている可能性があります。
「平均」や「増額」という言葉だけで安心せず、まずはねんきん定期便などで自分自身の見込み額を確認することが、老後資金を考える第一歩になります。

