【よくある失敗】"利回りの高い年"を基準に考えてしまう
筆者はFPとして、独身で資産形成を進めている50歳代の方から相談を受けることがありますが、その中でよく見かけるのが、「たまたま好調だった年の運用結果を見て、それが今後もずっと続くという前提で将来の計画を立ててしまう」というケースです。
たとえば、ある年に運用利回りが10%を超えたことで、「この調子なら65歳までにもっと大きな資産になるはずだ」と考え、当初の生活設計や積立額の見直しを行わないまま、楽観的な将来像を前提にしてしまう方がいらっしゃいました。
しかし、前章のシミュレーションはあくまで一定の利回りを想定した平均的な計算であり、実際の運用では、好調な年もあれば、大きく値下がりする年も当然あります。
特に、近年は株式を主な投資対象とするファンドのパフォーマンスが好調で、これが当たり前だと錯覚してしまうケースも少なくありません。
各ファンドが公表している運用実績は、あくまでも「過去のもの」です。
好調な年の実績だけを基準にしてしまうと、相場が下落した年に「思っていたより増えていない」と慌てて方針を変え、逆に不利なタイミングで売買してしまうことにもつながりかねません。
一時的に良い結果が出た年があっても、それを標準的な前提にせず、前章で確認したような複数の利回りパターンで「増えなかった場合」も含めて考えておくことが、独身で資産形成を続けるうえでは特に大切な視点です。
【積立額別】15年間で「2000万円」を目指すには?
先ほどは毎月5万円の積立を試算しましたが、老後資金の目安としてよく挙げられる「2000万円」を、15年間で準備するには、実際にどのくらいの積立額が必要になるのでしょうか。
試算結果:「15年間」×3%で積立投資
想定利回りを3%とした場合、15年間の積立で2000万円に近づけるための、毎月の積立額別シミュレーションは以下のとおりです。↓
毎月の積立金額:資産評価額
- 1万円:227万円
- 3万円:680万9000円
- 6万円:1361万8000円
- 9万円:2042万8000円
- 12万円:2723万7000円
※金融庁「つみたてシミュレーター」を使用
※本シミュレーションは、実際の運用結果を保証するものではありません。
想定利回り3%の場合、15年間で2000万円に到達するには、毎月9万円前後の積立が必要になる計算です。
ただし、月9万円という金額は、独身であっても決して小さな負担ではありません。新NISAの年間投資枠(つみたて投資枠120万円)を踏まえても、無理なく継続できる金額かどうかを、まず自分の家計と照らし合わせて検討することが大切です。
【段階的に増やす資産形成】収入の変化にどう対応するか
先ほどは最初から一定額を15年間積み立てるケースを確認しましたが、実際には50歳から65歳までの15年間、収入が一定のまま変わらないという方は少ないでしょう。
昇給や役職の変化、退職金の受け取りなど、収入面での変化にどう対応していくかも、資産形成を考えるうえで重要な視点です。
ここでFPとしてお伝えしたいのは、「収入が増えたら、その都度、積立額を機械的に増やしていく」という考え方には注意が必要だという点です。
単身者の場合、収入の増減に対して家計全体でリスクを分散できる相手がいないため、積立額を先に固定的に決めてしまうと、収入が思うように伸びなかった年や、予期せぬ出費が発生した年に、生活資金を圧迫してしまう可能性があります。
そこでおすすめしたいのが、次のような考え方です。
基本の積立額は、収入が変動しても確実に続けられる金額に設定する
本記事のシミュレーションはあくまで「継続できた場合」の結果です。まずは、多少の収入減があっても無理なく継続できる金額を基準に考えましょう。
収入が増えた分は、まず生活防衛資金の充実に、その後は積立額の上乗せに回す
昇給やボーナス、退職金などで一時的に余裕ができた場合、すぐに積立額を増やすのではなく、まずは生活防衛資金(生活費の半年〜1年分程度)が十分かどうかを確認しましょう。単身者は、働けなくなった際の収入源が自分一人しかないため、この備えがより重要になります。
積立額の増額は、一時的な余裕ではなく、継続的な収入増を確認してから行う
ボーナスなど単発の収入で積立額を増やすと、翌年以降に息切れしてしまう可能性があります。昇給など、継続的に見込める収入の変化があった場合に、積立額の見直しを検討するとよいでしょう。
たとえば、当初は月5万円の積立を継続し、数年後に昇給などで恒常的に月2万円の余裕が生まれた場合、月7万円に増額する、という進め方であれば、無理なく資産形成のペースを上げていくことができます。
大切なのは、「いつまでにいくら増やすか」という計画に縛られすぎることではなく、自分の収入や生活の変化に応じて、積立額を柔軟に見直していく姿勢です。
まとめ
今回ご紹介したように、50歳から65歳までの15年間でも、毎月5万円を利回り3%で積み立て続ければ、約1134万円の資産形成が見込めます。
さらに、老後資金の目安としてよく挙げられる「2000万円」を目指す場合、想定利回り3%であれば、毎月9万円前後の積立が目安になることも確認しました。
ただし、いずれのシミュレーションも、「毎月一定額をサボらず積み立て続けた場合」の結果です。
新NISAの非課税メリットを十分に活かすためには、「非課税」であることに加えて、「長期間、サボらずに継続できること」が非常に重要です。
自分の収入や生活の変化に応じて積立額を柔軟に調整しながら、無理のないペースで、65歳までの資産形成を続けていきましょう。
参考資料
加藤 聖人

