本日7月31日、厚生労働省が公表した「厚生年金保険・国民年金事業月報(令和8年3月現在)」によると、この3月に新しく老齢厚生年金(第1号・25年以上)を受け取り始めた人の平均月額は9万3038円であることがわかりました。
既存の受給者全体の平均15万4747円と比べると、6万1709円下回る水準です。
この記事では、月次データで見えてきた「年金デビュー世代」の実額と、既存受給者との差の背景について、元公務員の視点から整理していきます。
1. 「年金デビュー世代の月額」この記事の3つのポイント
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令和8年3月に新規裁定された老齢厚生年金(第1号・25年以上)の平均月額は9万3038円だった -
既存受給者の平均15万4747円と比べると6万1709円低く、新規裁定と既存の間には大きな差がある -
国民年金だけで年金デビューした人の平均は月5万7916円で、既存受給者の6万770円と比べても2854円低い
2. 2026年3月に年金デビューした人の老齢厚生年金は月9万3038円
厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業月報(令和8年3月現在)」には、その月に新しく年金の受給権が発生した人(新規裁定)の平均月額が集計されています。令和8年3月に老齢厚生年金(厚生年金保険第1号・25年以上)を新しく受け取り始めた人の平均は月9万3038円でした。
この9万3038円という平均月額には、まだ基礎年金を受け取っていない(報酬比例部分のみを受け取っている)人も含まれています。
そのため、全体の平均額が低く見えています。基礎年金と厚生年金を両方受け取り始めた人の平均月額を見ると、実際には約13万8000円程度となります。
2.1 既存受給者との差は6万1709円。年間では74万円を超える
既存の受給者全体の平均月額15万4747円と比較すると、新規裁定者は月あたり6万1709円下回っています。1年に換算すれば74万508円の差となり、家計の支出計画を組み立てるうえで無視できない金額です。
3. 国民年金だけで年金デビューした人の平均は月5万7916円
老齢厚生年金の受給権を持たず、国民年金だけを受け取り始めた新規裁定者の平均月額は5万7916円でした。既存受給者の平均月額6万770円と比べると2854円低く、厚生年金ほど大きな差ではないものの、僅かに下振れが見られます。
3.1 令和8年度の老齢基礎年金満額7万608円との比較
厚生労働省が公表した「令和8年度の年金額改定について」によると、令和8年度の老齢基礎年金の満額は月7万608円です(昭和31年4月2日以後生まれ)。新規裁定の平均5万7916円は満額との差が1万2692円あり、40年間の全期間で保険料を納めた人の受給額には及ばない水準です。
国民年金は40年(480か月)の納付で満額に到達する仕組みで、免除や未納の期間があると受給額はその分減ります。新規裁定者の平均が満額を下回るのは、加入期間や免除期間の影響が反映されている結果と読み取れます。
4. 新規裁定が既存受給者を下回る背景の3つの要素
厚生労働省の月次データからは、新規裁定と既存受給者のあいだに大きな差が生じている構図が見えます。この差が生まれる背景には、複数の要素が重なっています。
4.1 加入期間や被保険者期間の違い
老齢厚生年金の年金額は、被保険者期間中の標準報酬月額と加入月数を基礎に計算されます。既存受給者の中には、共済組合との通算期間を含めて加入期間の長い人が多くいます。一方、新規裁定にはさまざまな加入履歴の人が含まれるため、平均としては低めに出やすい構造があります。
4.2 在職老齢年金による一部支給停止
60歳代前半に再雇用や継続雇用で働きながら年金を受け取り始める人は、在職老齢年金の仕組みで報酬比例部分の一部が支給停止となる場合があります。新規裁定者に働きながら受給する人が含まれるため、平均月額が下振れする要因のひとつと考えられます。
4.3 繰上げ受給を選んだ人の存在
繰上げ受給を選ぶと、繰上げ月数×0.4%の減額が生涯続きます。令和8年3月の新規裁定者のうち8.2%が繰上げ受給を選んでおり、この人たちの年金額は減額後の水準で平均値に反映されています。
新規裁定の平均月額はあくまで受給が始まった月の集計で、加入期間や在職状況が人ごとに異なります。自分の年金額は、ねんきん定期便やねんきんネットで見込額を確認し、社会保険料や住民税が引かれた後の手取りをイメージしておくと家計の見通しが立てやすいと思います。
5. 「額面と手取りは違う」新規裁定の月額から差し引かれるもの(元公務員が解説)
新規裁定の平均月額9万3038円は「額面」の金額で、実際に振り込まれる金額とは異なります。年金からは複数の項目が天引きされ、手取りベースはさらに小さくなります。
額面と手取りのギャップを事前に把握しておくと、受給開始後の家計運営に無理が生じにくくなります。
5.1 年金から天引きされる社会保険料と税金
年金から特別徴収される主な項目は、次の4種類です。65歳を境に対象となる保険料が入れ替わる点にも注意が必要です。
1つめは国民健康保険料または後期高齢者医療保険料です。国民健康保険料は74歳まで、75歳以降は後期高齢者医療保険料に切り替わり、それぞれ前年所得や均等割で計算されます。
2つめは介護保険料で、65歳以上の第1号被保険者が対象です。3つめと4つめは所得税と住民税で、前年の課税所得に応じて天引きされます。
6. 年金デビュー後に家計へ組み込みたい3つの視点
年金の受給開始後は、月ごとの収支と年間ベースの支払いを別々に見る視点が役に立ちます。元公務員の視点から、家計の組み立てで押さえておきたい3つの視点を整理します。
6.1 毎月の年金額と手取りの両方を家計表に書く
額面ベースだけで家計を計画すると、初回振込の手取り額に戸惑う場面が生まれやすくなります。ねんきん定期便やねんきんネットの見込額はあくまで額面の情報のため、天引き想定を差し引いた手取りベースの数字を家計表に併記しておくと安心です。手取りの目安は、市区町村のホームページで公開されている国民健康保険料や介護保険料の試算ツールで確認できます。
6.2 偶数月ごとにまとめて入る仕組みで支出を平準化する
年金の振込は偶数月の中旬にまとめて2か月分が振り込まれる仕組みです。奇数月は振込がないため、月次の家計簿を書く場合は「入金月」と「使う月」を分けて考えると管理しやすくなります。
奇数月の生活費と光熱費、固定支出を、偶数月の入金額から逆算して積み立てておくと安定します。
6.3 公的給付や自治体独自の支援制度を年1回見直す
住民税非課税世帯に該当する人は、老齢年金生活者支援給付金が支給される可能性があります。自治体独自の給付や医療費・介護保険料の減免制度も、所得や世帯の状況で対象が変わります。
年金の額面は改定率に応じて毎年変わり、住民税の課税判定も前年収入で変わるため、年に1回はまとめて自治体窓口で確認する習慣を持つと、支援を受け損ねる場面が減ります。
年金生活者支援給付金については、こちらの記事で詳しく解説しています:年金に上乗せでもらえる「年金生活者支援給付金」とは?対象者・給付額・申請方法を解説
7. まとめにかえて
令和8年3月に新しく年金を受け取り始めた人の平均月額は、老齢厚生年金(第1号・25年以上)で9万3038円、国民年金で5万7916円でした。
既存受給者との差が生まれる背景には、加入期間の違いや在職老齢年金による一部支給停止、繰上げ受給の存在などが重なっています。
自分の年金額は、ねんきん定期便やねんきんネットで見込額を確認し、社会保険料や住民税が天引きされた後の手取りを想定しておくことが役に立ちます。判断に迷うときは、年金事務所や街角の年金相談センターに足を運んで、相談してみましょう。
参考資料
太田 彩子
