4. 実際の受給者は月いくらもらっている?分布データで確認

前章では、「平均年収300万円」「勤続38年」というモデル設定のもと、受給できる年金月額の試算値を導き出しました。それでは、現在実際に年金を受給して暮らしているシニア世代の支給額は、どのような状況になっているのでしょうか。

厚生労働省年金局がまとめた「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金を含む厚生年金受給者の受給金額の分布は以下の通りとなっています。

国民年金を含む厚生年金の受給者数4/5

国民年金を含む厚生年金の受給者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

  • 10万円未満の割合:19.0%
  • 10万円以上の割合:81.0%
  • 15万円以上の割合:49.8%
  • 20万円以上の割合:18.8%
  • 20万円未満の割合:81.2%
  • 30万円以上の割合:0.12%

国民年金と厚生年金の両方を受け取っている人のうち、月額15万円以上を受給している割合は全体の約49.8%と約半数を占めます。一方、今回の試算値である「合計月額12万3000円」を下回る「月額12万円未満」の受給者は、分布データで見ると全体の約32.6%です。約3人に1人が月額12万円未満で暮らしていることがうかがえます。

なお、ここで公表されている数値はいずれも税引き前の「額面」です。実際の振込額(手取り)は、ここから税金や社会保険料が控除された後の金額になる点に注意が必要です。

和田 直子
分布データを見ると、月12万円に満たない方が全体の3割ほどいる一方で、15万円以上を受け取っている方も約半数を占めています。この差は、現役時代の年収の高さだけでなく、厚生年金に加入していた期間の長さが大きく影響しています。自分の年金記録がどうなっているか気になる方は、ねんきんネットで実際の加入期間や見込み額を確認してみるとよいでしょう。

5. 年金受給時も「税金・社会保険料」が天引きされる点に注意

前章までに解説した「平均年収300万円・38年勤務」における年金額や統計データは、いずれも「額面」の数字であり、そのまま口座へ全額入金されるわけではありません。公的年金も現役時代の給与と同じように、一定額を超えると税金や社会保険料が差し引かれる仕組みになっているため、手元に残る実質的な金額は表示額よりも目減りします。

年金収入から自動的に控除(特別徴収)される主な税金・社会保険料は次の通りです。

  • 所得税
  • 住民税
  • 健康保険料(国民健康保険料、または75歳以上の後期高齢者医療保険料)
  • 介護保険料

ここで参考として、総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」のデータから、65歳以上の単身無職世帯における家計収支の平均値を見てみましょう。

65歳以上の単身無職世帯における収支状況5/5

65歳以上の単身無職世帯における収支状況

出所:総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」

  • 実収入(額面金額):13万1456円
  • 可処分所得(手取り収入):11万8465円
  • 消費支出:14万8445円
  • 非消費支出(税金・社会保険料):1万2990円

この調査では、年金などの実収入が13万1456円であるのに対し、税金や社会保険料として1万2990円が天引きされ、最終的な手取り額(可処分所得)は11万8465円となっています。実際に差し引かれる額はお住まいの自治体や前年の所得状況、家族構成等によって異なりますが、目安として年金収入全体の10%〜15%程度が天引きされるケースが多いと考えておくとよいでしょう。

和田 直子
額面の年金額だけを見て老後資金の計画を立ててしまうと、実際に使えるお金との間にズレが生じやすくなります。手取りは額面の8〜9割程度になることを踏まえたうえで、日々の生活費や住居費と照らし合わせておくことが、無理のない老後の家計管理につながります。

6. 老後計画は「年金制度・就労期間・手取り額」を総合的に見極めよう

本記事では、公的年金制度の仕組みを整理した上で、「平均年収300万円・38年間勤務」という試算条件をもとに、将来受給できる年金額の目安を解説しました。

今回の試算では、国民年金と厚生年金を合わせた年金月額は約12万3000円となりました。実際のシニア世代の受給状況を見ても、12万円未満の受給者が全体の約32.6%を占めるなど、年金額の個人差は現役時代の収入や勤務年数によって大きく分かれています。

さらに見落とせないのは、年金も額面通りに受け取れるわけではなく、税金や社会保険料が差し引かれることで手取りが10%〜15%程度少なくなってしまう点です。老後に向けた資産形成や生活設計を検討する際は、額面の年金額だけでなく制度の仕組みや「実際の手取り額」まで正確に把握し、無理のない計画を立てていくことが肝要です。

参考資料

和田 直子