内閣府が7月に公表した「景気ウォッチャー調査(令和8年6月調査)」によると、街角の景況感を示す現状判断DI(季節調整値)は「44.0」(前月差0.4ポイント上昇)となったものの、生活に直結する「家計動向関連DI」については飲食関連等の落ち込みにより低下を示すなど、長引く物価高の中で家計の厳しさが浮き彫りになっています。

日々のやりくりに工夫が求められ、将来への不安や生活防衛の意識が高まる中、「自分の退職金は世間一般と比べて多いのだろうか、それとも少ないのだろうか」「定年時に平均でいくらもらえるのが普通なのだろうか」と、老後の資金計画を立てる上で気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

2026年7月現在、働き方の流動化に伴い、退職給付制度のあり方も議論が進んでいます。

ネット上の情報では「定年退職金の平均は約2000万円」といった数値を目にすることがありますが、これは企業規模や勤続年数、さらには一部の大企業のデータによって平均値が押し上げられている側面もあります。

本記事では、厚生労働省や東京都などの公的機関が公表している資料に基づき、企業規模・勤続年数・学歴別の退職金相場を客観的に紐解きます。

あわせて、統計データを読み解く際の注意点や、自社の支給額を確認する実務上のポイントを整理して解説します。

1. この記事の3つのポイント

  •  企業規模別の相場:定年退職金の平均相場は、大企業(大学卒)で約1900万〜2100万円前後、中小企業(大学卒)で約1100万〜1200万円前後と、2倍近い開きが見られる傾向にある。
  •  平均値と中央値の視点:統計上の「平均値」は一部の高額受給者によって引き上げられやすいため、ご自身の受取額を見積もる際は、より実感に近い「中央値」や自社の規程を確認することが大切である。
  •  退職金水準の変化:過去20年ほどで退職金の平均支給額は徐々に減少傾向にあり、基本給連動型から「ポイント制」や「確定拠出年金(DC)」へ移行する企業が増加している。
齊藤 慧

行政や社会保障の現場を取材してきた経験からお伝えすると、統計における「平均額」という数値は、時に実態と乖離した印象を与えることがあります。

例えば、退職金の統計には一部の上場企業や役員手当が含まれているケースがあり、全体の平均値を押し上げている場合があります。

ご自身の老後設計においては、「世間の平均が2,000万円だから自分の家計も安心(あるいは不安)」と判断するのではなく、まず「自社の退職金規程で定められた計算式」や「確定給付・確定拠出年金の積立状況」を客観的に確認することが、現実的な防衛策の第一歩になると言えます。

※本記事は、編集部および執筆者が厚生労働省などが公表する公式資料を確認の上、執筆・検証しています。

2. 【企業規模・学歴別】退職金の平均相場一覧

退職金の支給額に大きな影響を与える要素の一つが「企業規模(大企業か中小企業か)」と「最終学歴」です。

公的機関が公表している直近の統計データ(厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」、中央労働委員会「令和7年賃金事情等総合調査」、東京都「令和6年中小企業の賃金・退職金事情」)をもとに、定年退職(勤続35年以上等)におけるおおよその相場感を整理します。

2.1 大企業(資本金5億円以上・従業員1000人以上等)

  • 大学卒:約1900万〜2100万円前後
  • 高校卒:約1600万〜2000万円前後 ※金額は主に管理・事務・技術職を想定した目安です

2.2 中小企業(東京都内のモデル退職金等)

  • 大学卒:約1100万〜1200万円前後
  • 高校卒:約900万〜1000万円前後

※上記数値は、直近の公式調査をもとに、定年退職時の傾向を分かりやすくレンジでまとめたものです。