4. AIの電力問題を解決するパワー半導体と電源IC

AIサーバーやデータセンターの普及に伴い、深刻化しているのが「電力問題」です。膨大な電力を消費するGPUに、いかに効率よく、安定して給電するかが新たなテーマとなっています。

電源IC・パワー半導体(SiC/GaN/IGBT)のマップ6/6

電源IC・パワー半導体(SiC/GaN/IGBT)のマップ

出所:AIサプライチェーン カオスマップ(イズミダイズム作成)

4.1 日本が強い産業用途と新たなプレイヤー

電力の制御や変換を行うのが「パワー半導体」や「電源IC」です。この分野では、ルネサス(車載・電源系)、三菱電機、富士電機、ロームなどが強い存在感を示しています。

パワー半導体の材料は、従来のシリコンから、より高電圧・高効率に耐えられるSiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)へと進化しています。

また、鉄道や電力網など高耐圧が求められる用途では「IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)」という技術が使われ、ここでは三菱電機などが強みを持っています。

一方で、AIの電力効率化という新テーマの中で、米国のNavitas(ナビタス)のような新星も登場しています。同社はNVIDIAの次世代電源アーキテクチャに選定されており、産業の電気の使い方が変わる中で、新たなプレイヤーが台頭する可能性も秘めています。

5. 【投資の核心】「儲かる=株価が上がる」とは限らない理由

ここまで見てきたように、半導体のバリューチェーンには数多くの日本企業が組み込まれています。泉田氏も「本当に意外と日本が重要なとこ抑えているんだなっていうのは改めて思いました」と述べるほどです。

しかし、株式投資の観点からは、非常に重要な「落とし穴」があります。それは、その企業が半導体関連で優れた技術や高いシェアを持っていたとしても、それが必ずしも「株価の上昇」に直結するわけではないということです。

5.1 専業度と寄与度を見極める

その最大の理由は「専業度と寄与度」の違いです。

例えば、化学メーカーや総合電機メーカーは、半導体材料や装置以外にも多種多様な事業を展開しています。三井化学であればナフサなどの石化事業が主体であり、三菱電機であれば家電から宇宙事業まで幅広く手がけています。

泉田氏は「やってる事業の寄与度、全体に対しての寄与度がやっぱり限定的な会社もあるからそこはしっかり調べた方がいいですね」と警鐘を鳴らします。半導体関連の需要が爆発的に伸びてその事業部の売上が倍増したとしても、会社全体の売上高に占める割合がわずか数パーセントであれば、全社の利益や株価に与えるインパクトは軽微にとどまってしまうのです。

一方で、SUMCO(ウェハー専業)や東京応化工業(フォトレジスト主体)、イビデン(パッケージ基板主体)のように、半導体関連事業の比率が高い「専業度の高い企業」であれば、業界の好調がダイレクトに業績と株価に反映されやすくなります。

また、投資機会を考える上で「上場していることの価値」も見逃せません。フォトレジストのJSRや、パッケージ基板の新光電気工業は、ファンドの買収により非公開化(上場廃止)の道を歩みました。

泉田氏は「上場して我々が取引できること自体が素晴らしいんですよ。だってどんなにいい会社も未上場だったら買えないからね」と語り、個人投資家がアクセスできる優良な上場企業の希少性を説いています。

5.2 ボトムアップ・リサーチの価値

では、投資家はどのようにして有望な銘柄を見つければよいのでしょうか。

答えは、各企業が発表する「決算短信」や「決算説明会資料」を読み解き、その企業の中で半導体・AI関連事業がどれくらいの比率(寄与度)を占めているかを確認することです。

「めんどくさいっていう風に思うかもしれないけど、逆にみんなができないんだから調べる価値がある」と泉田氏は強調します。

「AI関連だから上がるはずだ」という漠然としたイメージやテーマ性だけで投資するのではなく、バリューチェーンのどの部分を担い、それが全社業績にどれだけ寄与するのかを地道に調べる「ボトムアップ・リサーチ」。誰もが面倒くさがるこの作業にこそ、優良な銘柄に出会うチャンスが隠されているのです。

なお、本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。企業の業績や市場環境は常に変化するため、投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。

参考資料

※リンクは記事作成時点のものです。