4. 全世帯・働く世帯の「平均貯蓄と年収」の関係

純貯蓄額と年収には、どのような関係があるのでしょうか。

総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果の概要」をもとに、純貯蓄階級別の平均年間収入を見てみましょう。

なお、ここでいう「純貯蓄額」とは、預貯金や有価証券などの金融資産から住宅ローンなどの負債を差し引いた金額を指します。

データを見ると、勤労者世帯では、純貯蓄100万円未満の世帯で平均年間収入が比較的高くなっています。

これは、住宅ローンなどの負債を抱えた高収入世帯が含まれるためと考えられ、この層を除くと、おおむね純貯蓄額が多い世帯ほど年間収入も高くなる傾向が見られます。

一方、全世帯では純貯蓄額と年間収入が必ずしも連動しているわけではありません。

これは、全世帯には現役世代だけでなく、退職後に年金を受給しながら長年かけて形成した資産を保有する高齢世帯も含まれているためです。

現在の年間収入がそれほど高くなくても、多くの純貯蓄を保有しているケースがあります。

このことから、純貯蓄額は年収だけで決まるものではなく、年齢やライフステージ、住宅ローンの残高、長年の貯蓄や資産形成の積み重ねなど、さまざまな要因が影響していることが分かります。

したがって、資産状況を比較する際は、年収だけでなく純貯蓄額もあわせて確認することが大切です。

5. 監修者コメント:「うちは平均以下」と感じたときに考えたいこと

中本 智恵

今回のデータで印象的なのは、勤労者世帯では純貯蓄が多いほど年収も高い傾向がある一方、全世帯で見るとその関係が薄れる点です。これは、年金を受け取りながら長年かけて資産を築いてきた高齢世帯が含まれているためで、「今の年収」だけが資産形成のすべてではないことを示しています。

住宅ローンや教育費の負担が重なる現役時代は、どうしても純貯蓄が伸びにくい時期です。ただ、この時期に貯蓄額だけを追いかけるのではなく、負債の返済計画と資産形成をあわせて見直すことが、将来の純貯蓄を大きく左右します。

「平均以下だから」と一喜一憂するよりも、自分の世帯属性やライフステージに近いデータと照らし合わせながら、無理のないペースで純貯蓄を積み上げていく視点を持つことをおすすめします。

6. 平均貯蓄額だけでは見えない「わが家の立ち位置」を知ることが大切

本記事では、全世帯と勤労者世帯の平均貯蓄額や中央値、貯蓄4000万円以上を保有する世帯の割合、さらに純貯蓄額と年収の関係について紹介しました。

全世帯の平均貯蓄額は2059万円ですが、中央値は1264万円にとどまっており、平均値は一部の高額資産保有世帯の影響を受けていることが分かります。

また、勤労者世帯では平均1717万円、中央値1015万円となっており、住宅ローンや教育費など現役世代特有の支出が貯蓄額に影響していることがうかがえます。

さらに、勤労者世帯では、おおむね純貯蓄額が多いほど年収も高くなる傾向が見られましたが、資産形成は年収だけで決まるものではありません。

資産状況を考える際は、「平均額」と比較するだけでなく、自分と近い世帯属性やライフステージのデータも参考にしながら、無理のない資産形成を続けていくことが大切です。

参考資料

中本 智恵