6. 40歳代会社員が「年金+α」の老後資金を作るには?【FPと一緒に考える】投資の失敗を乗り越える3つの視点
「老後の資金は準備したいけれど、投資でまた失敗するのは怖い」
今回は、そんな葛藤を抱えていた方の事例をご紹介します。
運用に消極的だった状態から一転、外貨建て資産やNISAを活用して「年金+α」のゆとりをデザインしていくまでのステップを、分かりやすくお伝えします。
6.1 【ご相談内容】過去の元本割れ経験から、運用が怖くて動けない
「老後の生活費について、公的年金だけでは心もとない。ゆとりある生活を送るために『年金+α』の資金をどう作ればいいか迷っている」
このようなお悩みを抱えてご相談に来られたのは、40歳代の会社員の方です。
将来に向けた準備が必要だと頭では分かっていても、いざ行動しようとすると何から手をつければよいのか分からず、立ち止まってしまっていました。
お話を伺うと、過去に投資信託で元本割れを経験したことがあり、資産運用に対して慎重な姿勢をとられていたことが分かりました。そのため、手元の資金は主に職場の財形貯蓄を利用して手堅く積み立てていらっしゃいました。
しかし、物価上昇などの経済環境の変化を背景に、「このままのペースで本当に老後のゆとりが作れるのだろうか」と強い不安を抱えていらっしゃったのです。
「運用は減ってしまうかもしれない怖いもの」というイメージが先行し、新しい一歩を踏み出せずにいたこの方ですが、お話をを通じて少しずつ資産形成に対する捉え方が変化されます。
以下に、相談を重ねる中でたどり着いた「3つの考え方」をご紹介しましょう。
6.2 アドバイス1:資産を「円だけ」で持ち続けるリスクに気づく
まず見直したいのは、資産を円だけで持ち続けることのリスクです。
この方は過去の経験から運用に抵抗を感じていましたが、金利が固定される債券の仕組みや、為替の変動に対する付き合い方を知ることで、少しずつ見方が変わっていきました。
「財形貯蓄をそのまま続けるより、今の環境を活かして外貨建ての債券に切り替えたほうが、将来的に大きな差がつきそうだ」
そう気づかれたように、円だけで資産を持つこと自体が、物価上昇(インフレ)局面では「実質的な目減り」というリスクになり得ます。
手元の資金をすべて安全資産(円預金など)に置いておくのではなく、一部を外貨建ての資産などに分散していくことが、将来の物価上昇から資産を守るための有効な選択肢となります。
6.3 アドバイス2:ライフステージに応じた運用の使い分け(複利と単利)
そのうえで意識したいのが、ライフステージに応じた運用の使い分けです。
資産形成について考える際、とにかく「増やし続けること」ばかりに目が行きがちですが、増やす時期と使う時期で目的を分けることが重要です。
- 現役世代(増やす時期): 時間を味方につけ、「複利効果」で効率よく資産を育てる。
- リタイア後(使う時期): 資産を守りながら、「単利」で年金のように定期的な収入源として受け取る。
ご相談者様も「現役世代のうちは複利効果で資産を育て、老後は単利で年金のように受け取るという使い分けが合っているかもしれない」と納得されていました。
時期によって運用スタイルを切り替えるという考え方は、老後のキャッシュフローを安定させるうえで大変重要な視点です。
6.4 アドバイス3:複数の手段を組み合わせる
老後の生活費を補うためには、複数の手段を組み合わせるという発想も欠かせません。
当初、年金以外の資金をどう準備すべきか漠然とした不安を抱えていたご相談者様ですが、NISAなどの非課税制度を活用した積立投資にも目を向けるようになりました。
「年金だけで生活が不安になったとき、どこから補填すればいいか迷っていたが、NISAや手持ちの資産を組み合わせて使えばいいと分かった」
一つの正解(特定の商品だけ)に頼るのではなく、複数の引き出しを持っておくことが大きな安心感を生みます。
何か一つの商品で劇的に増やすことを目指すより、手元の預貯金、外貨建て資産、そしてNISAなどの税制優遇制度をバランスよく組み合わせることが、将来の生活費を補う最も現実的な手段となります。
6.5 まとめ:まずは現状のバランスを見直すことから始めよう
過去の失敗から「運用=避けるべきもの」だと決めつける前に、まずはご自身の資産状況を確認してみてください。
円資産と外貨資産のバランスを見直す
- 「増やす時期」と「使う時期」の目的を整理する
- NISAなどの制度をどう組み合わせるかを考える
これらを一つずつ整理してみることが、「年金+α」のゆとりある老後を作る第一歩になります。不安なときは一人で抱え込まず、プロに相談しながらご自身に合ったペースで資産形成を進めていきましょう。
7. 監修者からのコメント
過去の投資での元本割れなどから、資産運用に対して臆病になってしまうお気持ちはとてもよく分かります。
しかし、物価高が続く今の状況下では、資金を「円の預貯金」だけで持ち続けること自体が、実質的に資産を目減りさせるリスクになり得ます。
まずは「ねんきん定期便」等で将来の収支の目安を把握することが大切な第一歩です。
その上で、NISAなどの非課税制度や外貨建て資産など、複数の手段を組み合わせることでリスクを分散して備えることができます。
現役時代は時間を味方につけて「複利」で育て、老後は「単利」で安定的に受け取る。ご自身のライフステージに合わせた無理のない資産形成を検討していきましょう。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
奥田 朝
