食料品や日用品の値上げが相次ぎ、生活コストの増加が家計を圧迫する昨今、老後の資金に不安を抱く方は少なくありません。

総務省の調査によれば、65歳以上の単身無職世帯では生活費が年金収入を上回り、毎月約3万円の赤字が発生している厳しい実態が浮き彫りになっています。

その一方で、高齢者世帯の4割以上が「収入のすべてを公的年金に依存している」というデータもあり、年金が老後の命綱となっていることがわかります。

本記事では、各種公的データをもとに、現在のシニア世代が受け取っている年金受給額のリアルな事情と、物価高に直面する家計の現実について詳しく紐解いていきます。

この記事の年金額データなどの数値は、以下の記事を引用しています。

【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
奥田 朝

現役世代の方で将来の年金受給額を把握されている方は意外と少ないものです。

老後資金の準備において最も大切なことは必要額を知ることです。

将来の生活費や収入を概算でも把握しておくことで、より具体的な準備を進めていくことができます。

「ねんきんネット」を活用して簡単にシミュレーションをすることができますので、この機会にぜひ第一歩を進めてみましょう。

1. 日本の公的年金制度「国民年金」と「厚生年金」の基本構造

日本の公的年金制度は、基礎部分となる「国民年金(基礎年金)」と、その上に加わる「厚生年金」の2種類で構成されています。

この仕組みは、一般的に「2階建て構造」と呼ばれています。

ここでは、それぞれの年金制度の基本的な内容を確認していきましょう。

厚生年金と国民年金の仕組み1/4

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

1.1 【1階部分】国民年金(基礎年金)の概要

  • 加入対象:原則として日本国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての人
  • 保険料:国民年金保険料は所得にかかわらず一律ですが、年度ごとに見直されます(2026年度は月額1万7920円)
  • 受給額:保険料を40年間(480カ月)すべて納付すると、満額を受け取ることができます(2026年度は月額7万608円)
  • 国民年金の加入者は第1号から第3号までの被保険者に区分され、このうち第2号被保険者が次に説明する厚生年金にも加入します。

厚生年金の保険料を納めている場合、国民年金保険料を個別に支払う必要はありません。

同様に、第3号被保険者についても、個人で保険料を納める義務はありません。

1.2 【2階部分】厚生年金の概要

  • 加入対象:会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所(※1)に勤務し、一定の要件を満たす人が国民年金に上乗せして加入
  • 保険料:収入に応じて厚生年金保険料が変動します。ただし、保険料計算の基となる収入には上限が設けられています(※2)
  • 受給額:加入していた期間や納付した保険料額によって個人差が生じます

※1 特定事業所:1年のうち6カ月以上、適用事業所における厚生年金保険の被保険者(短時間労働者を除く、共済組合員を含む)の総数が51人以上となる見込みの企業などを指します。

※2 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)と標準賞与額(上限150万円)に保険料率を乗じて算出されます。

2. 2026年度の年金額はいくら?厚生年金・国民年金のモデルケースを確認

公的年金の支給額は、物価や現役世代の賃金の動きを反映し、毎年度改定される仕組みになっています。

2026年1月23日、厚生労働省は2026年度(令和8年度)における年金額の目安を公表しました。

新年度の4月分から適用される改定率は、国民年金(基礎年金)で+1.9%、厚生年金(報酬比例部分)で+2.0%です。

  • 国民年金(老齢基礎年金・満額):月額7万608円(1人分 ※1
  • 厚生年金(夫婦2人分のモデルケース):月額23万7279円(夫婦2人分※2

※1 昭和31年4月1日以前に生まれた方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額6万9108円(前年度比+1300円)です。
※2 平均的な収入(賞与を含む月額換算で45万5000円)の男性が40年間就業した場合に受け取り始める年金額(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金満額)の給付水準です。

国民年金のみを受給する場合、保険料を全期間納付して満額(※3)であったとしても、月額は約7万円程度です。

また、受給開始を75歳まで遅らせる「繰下げ受給(※4)」を利用したとしても、月額は13万円に届かない水準となります。

※3 国民年金の保険料を40年間(480カ月)納付した場合に、65歳から受け取れる満額の年金額を指します。
※4 繰下げ受給とは、年金の受け取り開始を66歳から75歳までの間で遅らせる制度です。1カ月遅らせるごとに0.7%増額され、75歳開始では最大84%増額されます。

さらに、これらはあくまでモデルケースに基づいた金額にすぎません。

実際の受給額は現役時代の働き方や収入によって大きく異なるため、「ねんきんネット」などを活用して自身の見込み額を把握しておくことが重要です。

3. 厚生年金+国民年金の合算「額面ひと月15万円」を受け取れる人はどれほどいる?

厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者(男女全体)の平均月額は15万289円です。

なお、この金額には1階部分である国民年金(老齢基礎年金)の月額分も含まれています。

受給額ごとの人数分布は、以下のようになっています。

3.1 厚生年金の「受給額ごとの受給権者数」を見る

  • 1万円未満:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

厚生年金の受給額が月15万円以上となっている人は、全体の49.8%であり、半数に達していないことがわかります。

さらに、厚生年金を受け取っていない人も含めて考えると、この割合はより一層低くなると考えられます。

3.2  忘れてはいけない「年金から天引きされるお金」の存在

ここで注意したいのは、上記で見てきた年金額はあくまで「額面」であるという点です。 現役時代の給与と同じように、年金からも税金や社会保険料が天引きされます。

具体的に天引きされる主な項目は以下の通りです。

  • 介護保険料
  • 国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)
  • 所得税
  • 住民税

つまり、額面で月15万円を受け取れる場合でも、これらの負担が差し引かれるため、口座に振り込まれる「手取り額」はさらに少なくなります。

「ねんきん定期便」などで将来の受給見込額を確認する際は、この「天引き」があることを念頭に置き、実際に手元に残る金額で老後の生活設計を立てることが重要です。

4. 60歳代単身世帯の半数が「年金だけでは生活が厳しい」と回答、その実態とは

前章で見たように、公的年金からは税金や社会保険料が天引きされるため、生活費として実際に使える「手取り額」は想像以上に少なくなってしまいます。

では、この限られた手元資金でやりくりをしている現在のシニア世代は、日々の生活に対してどのように感じているのでしょうか。

J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」から各種調査結果をまとめたデータを見ると、シニア世代の厳しい実態が浮かび上がります。

家計の金融行動に関する世論調査4/4

家計の金融行動に関する世論調査

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

4.1 「年金でさほど不自由なく暮らせる」人はごく少数

60歳代および70歳代で、「年金でさほど不自由なく暮らせる」と回答した人の割合は、二人以上世帯・単身世帯のいずれにおいても8%~12%台にとどまっています。

4.2 「日常生活費もまかなうのが難しい」と感じる単身世帯が多い

「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答した人は、二人以上世帯では26%~33%台ですが、単身世帯では60歳代で50.7%、70歳代で35.5%にのぼります。

徳田 椋

年金生活にゆとりがないと感じる理由として、どの年代・世帯類型でも「物価上昇等」が最も多く、いずれも50%を超えています。

次いで「医療費の個人負担増」や「年金支給額の切り下げ」などが挙げられました。

この結果から、多くのシニア世帯が物価高による家計への圧迫を強く感じており、年金収入だけでゆとりのある生活を送ることが難しくなっている状況がわかります。

5. まとめ

現在のシニア世代の多くが「年金だけでは生活が厳しい」と感じており、その最大の理由は物価上昇による家計の圧迫です。

さらに、年金からは税金や社会保険料が天引きされるため、実際の手取り額は額面より少なくなり、ゆとりのある生活を送るのは容易ではありません。

だからこそ、現役世代のうちから老後資金の準備を始めることが重要です。

まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」を活用し、将来受け取れる年金の見込み額と必要な生活費を把握しましょう。

将来の収支を概算でも知ることが、安心できる老後への具体的な対策を進めるための大切な第一歩となります。