英国のEU離脱が確実な情勢になってきました。離脱で欧州経済は混乱しそうですが、日本経済への悪影響は限定的だろう、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は考えています。
失われる「自由貿易のメリット」は限定的
経済学者は、自由貿易のメリットを強調します。両国が得意な物を大量に作って交換すれば、両国ともにメリットがある、というわけです。理屈としては全く正しいのですが、両国の得意分野が異なる場合には大きなメリットがある一方で、両国の得意分野が似通っていて産業構造も似ている場合には、メリットは大きくありません。
欧州大陸と英国は、ともに先進国ですから、得意な物は似通っています。フランスはワイン、英国はスコッチが得意だ、といった程度の話でしょう。
したがって、英国がEUを離脱して自由な貿易が難しくなったとしても、域内経済全体に与える影響は限定的でしょう。
フランスのワインメーカーは「イギリスがワインを輸入しなくなったら大打撃だ」と考えているかもしれませんが、心配無用です。スコッチ好きなフランス人が「スコッチは関税がかかるから、ワインで我慢しよう」と考えるので、ワインの輸出が減った分を国内向け出荷が補ってくれるからです。
イギリスのスコッチメーカーについても、同様ですね。大陸向けの輸出は減るでしょうが、国内向けの出荷は増えるので、プラスマイナスどちらが大きいか、といったところでしょう。