本格的な夏の暑さが感じられる季節となりました。6月に「住民税決定通知書(納税通知書)」が手元に届き、あらためて税負担を確認した方も多いでしょう。

住民税が課税されるかどうかは、税額そのものだけでなく、給付金の対象判定や医療・介護の保険料、高額療養費の自己負担限度額など、暮らしのさまざまな場面の基準として使われています。

本記事では、住民税がかからない「非課税」のボーダーラインを、年金収入・給与収入それぞれについて計算式から整理します。2026年度から給与収入のボーダーが変わった点もあわせて確認します。

※住民税の基準は法改正やお住まいの自治体により変わる場合があります。本稿は2026年7月時点の公表資料に基づき、東京23区など「1級地」の基準を目安として記載しています。

小西 雅美
日本生命でのリテール営業や銀行窓販営業、FP研修講師としての経験を通じて、税金や社会保険の仕組みについてのご質問を数多くいただいてきました。住民税の非課税ラインは、年金を受け取る世代の方から特にご質問が多いテーマです。ご自身やご家族の状況と照らし合わせながら確認していただければと思います。

1. 「住民税非課税」には2つの段階がある

個人住民税は、所得にかかわらず定額で課される「均等割」と、所得に応じて課される「所得割」の2つで構成されています。

このうち、給付金などの基準となる「住民税非課税世帯」は、一般に世帯全員の均等割・所得割がいずれも課されない状態を指します。均等割が非課税となる基準(1級地の場合)は次のとおりです。

個人住民税均等割における非課税限度額制度1/3

個人住民税均等割における非課税限度額制度

出所:総務省「個人住民税」

  • 扶養親族がいない単身の方:前年の合計所得金額が「45万円以下」
  • 同一生計配偶者または扶養親族がいる方:前年の合計所得金額が「35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の人数)+10万円+21万円」以下

本記事では、この「住民税がかからない所得の上限」(単身45万円・夫婦101万円)を「非課税基準額」と呼んで整理していきます。

なお、この基準額は生活保護基準の「級地区分」によって異なり、2級地・3級地の自治体では1級地よりも低い金額が適用されます。

2. 65歳以上:年金収入のボーダーラインは「単身155万円・夫婦211万円」

公的年金等に係る雑所得の速算表(令和2年分以後)2/3

公的年金等に係る雑所得の速算表(令和2年分以後)

出所:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」

年金は、受け取った金額がそのまま税金の計算に使われるわけではありません。年金収入から「公的年金等控除」という非課税の枠を差し引いた残りだけが、税金の計算に使う「所得」になります。65歳以上の方の場合、この控除は110万円です(年金収入330万円未満の場合)。

つまり、年金収入のうち110万円までは、税金の計算上はないものとして扱われます。たとえば年金収入が150万円の方なら、150万円−110万円=40万円だけが「所得」として数えられる仕組みです。

この110万円を先ほどの非課税基準に足し合わせると、年金収入のボーダーラインが計算できます。

2.1 単身世帯の場合

公的年金等控除110万円+非課税基準45万円=年金収入155万円以下
年金収入が155万円以下であれば、所得が45万円以下となり、住民税は非課税となります。月額に換算するとおよそ12万9000円です。

2.2 夫婦世帯の場合

公的年金等控除110万円+非課税基準101万円=年金収入211万円以下
配偶者を扶養する場合、本人の年金収入が211万円以下(月額およそ17万5000円)であれば非課税となります。ただし「非課税世帯」となるには、配偶者自身の年金収入も155万円以下であることが必要です。

65歳以上・無職夫婦世帯の実際の家計収支や年金受給額の平均については、こちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額・年金月額・1カ月の生活費をデータで見る

3. 65歳未満は控除額が小さく、ボーダーも低くなる

65歳未満の方は、非課税の枠(公的年金等控除)が小さくなります。65歳以上の110万円に対して、65歳未満は60万円です(年金収入130万円未満の場合)。単身の場合のボーダーラインは次のようになります。

  • 公的年金等控除60万円+非課税基準額45万円=年金収入105万円以下

同じ年金収入でも、65歳を境に結果が変わる点には注意が必要です。たとえば年金収入120万円の場合、65歳以上の方は所得10万円となり住民税は非課税ですが、64歳の方は所得60万円となり、非課税基準額の45万円を超えるため住民税がかかります。

なお、次のような方は65歳になる前から年金を受け取るため、この60万円の枠で判定されます。

  • 年金を早めに受け取り始める「繰上げ受給」を選んだ方
  • 生年月日により65歳になる前から受け取れる「特別支給の老齢厚生年金」の対象の方
小西 雅美
特に繰上げ受給を検討されている方は、この非課税ラインへの影響もあわせて確認しておくと安心です。

4. 【2026年度から変更】給与収入のボーダーは「100万円」から「110万円」に

パートやアルバイトなど給与収入のみの場合、給与収入から「給与所得控除」を差し引いた金額で判定します。

給与所得控除額速算表3/3

給与所得控除額速算表

出所:国税庁「No.1410 給与所得控除」

令和7年度税制改正により、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられ、住民税では2026年度分から適用されています。これにより、単身の方のボーダーラインは次のように変わりました。

  • 単身の方:給与所得控除65万円+非課税基準額45万円=給与収入110万円以下(従来は100万円以下)
  • 配偶者を扶養する夫婦2人世帯:給与所得控除65万円+非課税基準額101万円=給与収入166万円以下

※給与所得控除の65万円は、給与収入190万円以下の場合の金額です。

年金を受け取りながらパートで働く方は、年金の所得と給与の所得を合計した「合計所得金額」で判定されます。年金収入と給与収入それぞれから控除を差し引いた残りを足し合わせて、非課税基準額と比較する仕組みです。

基準額はお住まいの自治体により異なる場合があります。各市区町村の窓口や公式サイトで最新情報を確認のうえ、ご自身の世帯の判定に役立ててください。