6. 「高市銘柄」という見方と投資への向き合い方
今回の戦略17分野は、高市政権下で確定されたロードマップです。そのため、株式市場ではこれらの分野に関連する企業群が「高市銘柄」として意識される可能性があります。
泉田氏は、この政策のメッセージ性を次のように読み解いています。
「高市政権って日本株買えっていうことだと思うんだよね」
長らく「失われた30年」と呼ばれてきた日本経済ですが、国を挙げて成長分野に投資を行う姿勢は、日本株全体への力強い追い風になることが期待されます。
一方で、個人投資家にとっては悩ましい問題もあります。AIや半導体、ロボットといった先端分野の関連銘柄は、株価水準が高い「値がさ株(1株あたりの価格が高い銘柄)」であることが多く、資金力が限られる初心者には手が出しづらいという側面があります。
聞き手も、値がさ株が多いためになかなか手を出しづらく、いまいち乗り切れない思いがあるという率直な実感を漏らしていました。
しかし、泉田氏は悲観する必要はないと語ります。
「いろんな企業が関連しているんで、そこは1個1個深掘りしていれば自分に合うその投資先っていうのが見つかってくると思う」
完成品メーカーの株価が高くて買えなくても、そのメーカーに部品を供給している中堅企業や、特定の技術に特化したニッチトップ企業など、関連する企業は裾野広く存在しています。
17分野という大きなテーマの中で、自分の予算や投資スタイルに合った銘柄を探すプロセス自体が、投資の醍醐味と言えるでしょう。
7. まとめと投資におけるリスク・留意点
今回は、政府が打ち出した「戦略17分野」と官民投資370兆円超のロードマップについて、元機関投資家の視点から解説しました。
17分野それぞれが独立した巨大な投資テーマであり、一つずつ深掘りしていく価値があります。特に「フィジカルAI」のように、市場規模が大きく、かつ日本企業が世界的な強みを持つ分野は、長期的な成長が期待されています。
ただし、投資には常にリスクが伴うことを忘れてはいけません。今回紹介したロードマップはあくまで現時点での政府の方針であり、将来的な政権交代や財政状況の変化によって、政策の優先順位や投資額が変更される可能性は十分にあります。
また、国策として注目される「テーマ株」は、期待が先行して株価が急変動しやすく、値動きが大きくなる傾向があります。
「国策に売りなし」という言葉を鵜呑みにするのではなく、TAMの大きさや企業の競争力といった客観的な軸を持って分析することが大切です。投資判断は、ご自身の資金管理と責任において慎重に行ってください。
参考資料
- 内閣官房・内閣府「戦略17分野における『主要な製品・技術等』」(2026年6月24日 経済財政諮問会議・日本成長戦略会議 合同会議 資料1)
- 川崎重工業「NVIDIA、Analog Devices、Microsoft、富士通とフィジカルAIの社会実装に向けて協業し、開発を加速」(2026年5月22日)
- YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日