2026年度も7月に入りましたが、昨月は今年度初めての年金支給日でした。

公的年金だけでは生活費に不安を感じる方にとって「年金生活者支援給付金」は、家計を支える重要な制度です。

この給付金は、年金の受給額に上乗せされる形で支給されますが、すべての人が自動的に受け取れるわけではありません。所得などの要件を満たし、かつ適切な請求手続きを完了している必要があります。手続きを忘れると、本来受け取れるはずの給付金が支給されないため注意が必要です。

この記事では、2026年度における年金生活者支援給付金の最新の基準額、対象となるための具体的な支給要件、そして見落としがちな申請方法について、専門的な視点から分かりやすく解説します。ご自身の年金受給額の実態とあわせて、この制度を最大限に活用するための知識を確認していきましょう。

齊藤 慧
本記事は、編集部が厚生労働省や日本年金機構が公表する「令和8年度(2026年度)の年金生活者支援給付金額」に関する公式資料を確認の上、執筆・検証しています。

1. 「年金生活者支援給付金」の基本を解説

年金生活者支援給付金は、老齢基礎年金、障害基礎年金、または遺族基礎年金を受給している方のうち、所得などの一定の条件を満たす場合に、年金に上乗せして支給される制度です。

この給付金は、対象となる年金の種類に応じて「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」の3つに分類されます。

1.1 【老齢】年金生活者支援給付金の支給要件

老齢年金生活者支援給付金の支給要件2/9

老齢年金生活者支援給付金の支給要件

出所:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

  • 65歳以上で老齢基礎年金を受給していること
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
  • 前年の公的年金などの収入金額(※1)とその他の所得の合計額が、昭和31年4月2日以降生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下であること(※2)

※1 障害年金・遺族年金などの非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以降に生まれた方で合計額が80万9000円を超え90万9000円以下の方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下の方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

1.2 【障害】年金生活者支援給付金の支給要件

障害年金生活者支援給付金の支給要件3/9

障害年金生活者支援給付金の支給要件

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」

  • 障害基礎年金を受給していること
  • 前年の所得(※)が479万4000円以下であること(扶養親族の数に応じて増額)

※ 障害年金などの非課税収入は所得に含みません。

1.3 【遺族】年金生活者支援給付金の支給要件

遺族年金生活者支援給付金の支給要件4/9

遺族年金生活者支援給付金の支給要件

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」

  • 遺族基礎年金を受給していること
  • 前年の所得(※)が479万4000円以下であること(扶養親族の数に応じて増額)

※ 遺族年金などの非課税収入は所得に含みません。

いずれの給付金においても、前年の所得額が支給対象となるかを判断する重要な基準の一つとなっています。

2. 2026年度の改定内容:最新の給付基準額はいくら?

年金生活者支援給付金の支給額は、公的年金と同様に、毎年の物価変動を反映して改定される仕組みです。

2026年度は前年度比で3.2%の引き上げが決定しており、この増額は2026年6月の支給分(4月・5月分)から適用されます。

改定後の2026年度の支給額は以下の通りです。

年金生活者支援給付金の支給金額5/9

年金生活者支援給付金の支給金額

出所: 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

  • 老齢年金生活者支援給付金(基準額):月額5620円
  • 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級 月額7025円・2級 月額5620円
  • 遺族年金生活者支援給付金:月額5620円

ただし、老齢年金生活者支援給付金に関しては、上記の基準額をベースに、個々の保険料納付済期間や免除期間に応じて実際の支給額が計算されます。

3. 老齢年金生活者支援給付金の受給額イメージ:年間でいくらになる?

年金生活者支援給付金は月額で表示されますが、実際の支給は2カ月分がまとめて年金と同じ口座に支給される仕組みです。

したがって、受給額を正確に把握するためには、年間の総額や支給のタイミングも理解しておくことが重要です。

例えば、老齢年金生活者支援給付金の基準額は月額5620円であり、年間に換算すると6万7440円になります。

支給は偶数月に行われ、4月・5月分が6月、6月・7月分が8月というように、2カ月分が後から支給されます。

年金生活者支援給付金の振込日6/9

年金生活者支援給付金の振込日

出所:神戸市「年金生活者支援給付金の振込みはいつですか?」

このため、1回あたりの支給額は約1万1240円※となり、これを年間で6回受け取る計算です。

月額では少額に感じるかもしれませんが、年間で合計すると生活費の助けとなるまとまった金額になります。

支給額やスケジュールを事前に把握しておくことで、より計画的な家計管理が可能になるでしょう。

※実際に支給される金額は個人によって異なります。

4. 申請しないと受給できない?請求手続きの2つのパターン

年金生活者支援給付金は、公的年金と同じく、請求手続きを行わなければ受給できません。

ここでは、対象となる可能性が高い2つのケースについて、具体的な手続きの流れを解説します。

4.1 パターン1:すでに年金を受給中で、新たに支給対象となった方

すでに年金受給中で新たに支給対象となった場合7/9

すでに年金受給中で新たに支給対象となった場合

出所:日本年金機構「年金生活者支援給付金請求手続きのご案内リーフレット」

例年9月の第1営業日(2025年の場合は9月1日)以降、対象者には日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送されます。

給付金の支給は請求した月の翌月分から始まるため、請求書が届いたら速やかに手続きをすることが大切です。

なお、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届いた場合、マイナポータルを利用した電子申請も可能で、その際は郵送での手続きは不要になります。

4.2 パターン2:これから老齢年金の受給を始める方

新規に老齢年金の受給が始まる人が支給対象となった場合8/9

新規に老齢年金の受給が始まる人が支給対象となった場合

出所:日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求する方の請求手続きの流れ」

65歳になる3カ月前を目安に、年金の受給手続きに必要な「年金請求書(事前送付用)」が届きます。その封筒の中に「年金生活者支援給付金請求書」が同封されています。

必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金請求書と一緒に年金事務所へ提出してください。

一度請求書を提出すれば、翌年以降も支給要件を満たしている限り、原則として改めて手続きをする必要はなく、継続して受給できます。

※年金生活者支援給付金の支給は、毎年度、前年の所得情報などに基づいて継続の可否が判定されます。この判定結果は、毎年10月分(12月支給)から1年間適用されます。

5. 参考:厚生年金・国民年金の平均受給額との比較

ここでは、厚生労働省の『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』を基に、国民年金と厚生年金の平均的な月額を男女別に見ていきましょう。

年金の個人差9/9

年金の個人差

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

5.1 厚生年金の平均月額

〈全体〉平均年金月額:15万289円

  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

5.2 国民年金の平均月額

〈全体〉平均年金月額:5万9310円

  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

会社員や公務員などが受け取る厚生年金(国民年金部分を含む)は、現役時代の加入期間や収入水準によって受給額に大きな個人差が生じます。そのため、月額2万円未満から25万円を超える方まで幅広く分布しています。

一方で、自営業者などが受給する国民年金のみの場合、男女ともに平均月額は5万円台です。満額受給できる場合でも、2026年度の基準では月額7万608円となります。

国民年金は厚生年金ほどの大きなばらつきはありませんが、受給額が限られるため、老後に向けた計画的な資産形成がより重要になるといえます。

6. まとめ:公的支援制度を理解し、自身の状況を確認しよう

本記事では、2026年度の年金生活者支援給付金に関する基準額、支給要件、そして申請方法について詳しく解説しました。

この給付金は、所得が一定基準以下の基礎年金受給者にとって、生活を支える重要な制度です。しかし、対象者であっても請求手続きをしなければ一切受け取ることはできません。

また、公的年金の受給額には個人差が大きく、特に国民年金のみを受給する場合は、生活資金が限られる傾向にあります。高齢者世帯の多くは、公的年金を主な収入源としつつ、就労収入などで家計を補っているのが実情です。

これらの状況を踏まえ、まずは制度の内容を正確に理解し、ご自身が対象となるか、申請は完了しているかを速やかに確認することが不可欠です。

利用できる公的な制度を把握し、ご自身の家計状況とあわせて見直してみてはいかがでしょうか。

7. 【監修者のコメント】この記事の総括とこれからの実務上の注意点

齊藤 慧

年金生活者支援給付金は、消費税収を財源として低所得の年金受給者を恒久的に支援する重要な福祉的措置です。実務上、注意すべきは『所得制限による受給権の変動』と『手続きの漏れ』になります。

この制度は前年の所得等をもとに毎年判定が行われるため、収入の増減や世帯構成の変化(同居家族の就労など)によって、受給できなくなったり、逆に新たに受給対象になったりします。

新たに要件を満たした方には例年9月頃に機構から案内が届きますが、『いつもの年金のお知らせだろう』と見落として時効を迎えてしまうケースもあるでしょう。

届いた封筒は必ず開封し、速やかに返送する対応を徹底してください。不安な場合は年金事務所へ確認を取ることも有効な自衛策です。

※当記事は再編集記事です。

参考資料