5. 「日本株全部買い」を防ぐ銘柄絞り込みの2軸
しかし、ここで一つの問題が生じます。先ほど見たように、戦略17分野はあまりにも幅広く、日本の主要産業のほとんどを網羅しています。
泉田氏もこの点について、次のように指摘しています。
「これ、言っちゃうと日本株全部買いになっちゃうんだよね」
インフラ整備ならゼネコン、フードテックなら食品メーカー、ゲームならエンタメ企業と、関連する企業を挙げていけばキリがありません。限られた資金の中で、投資家はどのように銘柄を絞り込んでいけばよいのでしょうか。
泉田氏は、銘柄選びにおいて「2つの軸」を持つことが重要だと語ります。
5.1 軸1:大きなマーケット(TAM)を狙っているか
1つ目の軸は、その分野の市場規模が十分に大きいかどうかです。
ビジネスの世界ではこれを「TAM(Total Addressable Market:獲得可能な最大市場規模)」と呼びます。TAMが大きければ大きいほど、その市場に参入する企業が成長し、企業価値(株価)が大きくなるポテンシャルを秘めていると泉田氏は見ています。
5.2 軸2:その領域で日本企業がグローバルに強いか
2つ目の軸は、その分野において日本企業が世界的に見て競争力を持っているかどうかです。いくら市場が大きくても、海外の強力なライバルに勝てなければ、日本企業の業績にはつながりません。
泉田氏は、この2つの軸を掛け合わせて分析することの重要性を説きます。
「まず大きなマーケットを狙ってるっていうところ(中略)あとその領域でグローバルで見た時に日本の企業が強みを持ってるかどうか」
例えば、「サイバーセキュリティ」という分野を考えてみましょう。デジタル化が進む中で市場規模(TAM)は間違いなく巨大です。しかし、「日本企業がグローバルに強いか」という2つ目の軸で考えるとどうでしょうか。
セキュリティソフトやシステムと聞いて、真っ先に思い浮かぶのは海外の企業名ではないでしょうか。このように考えると、サイバーセキュリティ分野の恩恵を最も受けるのは、日本企業ではなく海外企業かもしれない、という推測が成り立ちます。
一方で、先ほど挙げた「フィジカルAI」やロボット部品の分野は、市場規模が巨大であると同時に、日本企業がグローバルで圧倒的なシェアと技術力を持っている領域です。
このように2つの軸でフィルターをかけることで、より確度の高い投資テーマを見つけ出すことができると期待されています。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日