相次ぐ物価高の中で、「これまで貯めてきたお金の実質的な価値が目減りしてしまうのでは」と不安を抱く方が増えています。
実際、総務省統計局が2026年6月に公表したデータによると、生鮮食品を除く総合指数は前年同月比1.4%の上昇となっており、インフレの影響は無視できません。
私はかつて証券会社で、ファイナンシャルアドバイザーとして多くのお客様の資産運用をご提案してまいりました。
とくに、退職や老後生活が視野に入る60歳代の方からは「大切な資産をどう守ればよいか」「同世代はどれくらい貯蓄があるのか」といったご相談も伺ってきました。
そこで今回は、60歳代二人以上世帯の「平均貯蓄額や中央値」の最新データを紐解きながら、2026年に還暦を迎える人のお金事情と、資産を守るためのヒントについてわかりやすく解説します。
資産形成に向けた計画を立てる参考に、ぜひご覧ください。
1. 【60歳代二人以上世帯】平均貯蓄額・中央値はいくら?
金融経済教育推進機構(J-FLEC)が2025年に公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、60歳代二人以上世帯の金融資産保有額は次のとおりです。
※金融資産保有額とは、預貯金だけでなく株式、投資信託、生命保険などを含んだ金額です。ただし、日常的に使う普通預金の残高は含まれていません。
1.1 60歳代(二人以上世帯)の貯蓄額(平均・中央値)
- 60歳代二人以上世帯:平均2683万円/中央値1400万円
平均は2683万円ですが、貯蓄額を低い順に並べたときの真ん中にあたる中央値は1400万円。
平均は一部の貯蓄が多い世帯に引き上げられるため、より実感に近いのは中央値のほうといえます。
金融資産を持たない「貯蓄ゼロ」の世帯が12.8%、約8世帯に1世帯。
一方で「2000万円以上」ある世帯は39.6%(2000〜3000万円が12.4%、3000万円以上が27.2%)と4割近くにのぼり、世帯ごとに金額の幅が広く、二極化の様子がうかがえます。
2. 還暦を迎える人(60歳)のお金事情は?
もう一つ、PGF生命が2026年3〜4月に実施した「2026年の還暦人(かんれきびと)に関する調査」(PGF生命調べ・1966年生まれの男女2000名・全国・インターネット調査)から、2026年に60歳を迎える人のお金事情をみていきます。
- 貯蓄500万円未満:54.3%
- 貯蓄2000万円以上:20.1%
- 投資をしていない:53.1%
- 投資をしている人の平均投資額:1729万円
貯蓄500万円未満が半数を超える一方で、「2000万円以上」も2割。
同じ60歳でも、貯蓄額には大きな開きがあることがうかがえます。
さらに、投資をしていない人が半数を超える一方、投資をしている人は平均1729万円とまとまった金額を運用しており、ここにも差がみられます。
なお、先ほどのJ-FLECは世帯ごとの調査、こちらのPGF生命の調査は個人を対象にしたもので、調査の方法や母数が異なります。
それぞれ「世帯(あるいは個人)ごとに差が大きい」という共通点がみえてきます。
3. 物価高のなか、どう備える?
貯蓄とお金事情のデータをふまえて、物価高のなかでの備え方を2つの視点からみていきましょう。
3.1 実質的な価値を保つ視点をもつ
物価が上がると、預貯金として持っているお金で買えるものは少しずつ減っていきます。
預貯金で生活防衛資金を確保したうえで、資産の一部を新NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)といった税制優遇制度で運用し、物価上昇に備えるのも選択肢の一つです。
ただし、投資には元本割れや価格変動などのリスクが伴います。
金融商品や投資方法などによってリスクが異なるため、ご自身の家計や考え方、リスク許容度に合うものを無理のない範囲で検討したいところです。
3.2 世帯で見通しを共有する
二人以上世帯では、年金の受け取り方や貯蓄の取り崩し方を世帯で話し合っておくと、物価高のなかでも見通しが立てやすくなります。
どちらかが先に退職する場合や、収入が変わるタイミングを見据えて、早めに家計の計画を共有しておきたいところです。
4. まとめにかえて
今回みてきたとおり、60歳代二人以上世帯の貯蓄は平均2683万円・中央値1400万円でした。
還暦を迎える人の調査でも、貯蓄500万円未満が5割、2000万円以上が2割と、お金事情には大きな開きが見られます。
私はかつて証券会社で多くのお客様の資産運用に携わってまいりましたが、これほど貯蓄額に開きがあるからこそ、平均の数字だけに一喜一憂してはいけないと現場で強く実感してきました。
物価の上昇によってお金の価値が目減りしていくいま、大切なのは周囲と比較することではなく、まずはご自身の「現在の貯蓄額」と「毎月の収支」を可視化することです。
その上で、記事の後半でお伝えした「2つの備え方」を参考に、ご自身のライフプランに合った具体的な資産防衛のステップを一歩ずつ踏み出してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」
- 総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)5月分(2026年6月19日公表)」
- PGF生命「2026年の還暦人(かんれきびと)に関する調査」
安達 さやか