年金支給日は、原則偶数月の15日です。次回の支給は8月14日であり、7月は6月に支給された年金で生活費をやりくりしていく必要があります。

偶数月15日は、65歳から受け取れる老齢年金だけでなく、亡くなった人の遺族が受け取れる遺族年金も支給されます。亡くなった人が厚生年金保険に加入していた場合に受け取れる遺族厚生年金については、2028年4月から制度改正が行われる予定です。この制度改正は影響を受ける人とそうでない人がいるため、どのように変わるのかをよく押さえておく必要があります。

この記事では、遺族厚生年金の改正内容や、影響を受ける人・受けない人について解説します。

1. 【2028年4月】遺族厚生年金の改正内容は?

遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者や老齢厚生年金の受給権者などが亡くなったときに、所定の要件を満たす遺族へ支給される年金です。配偶者や子どもなどの遺族が受け取れますが、属性によって受給要件が異なります。

たとえば、子どものいない妻は、夫が亡くなった時点で30歳未満の場合、原則5年間の給付となります。一方、30歳以上であれば無期限で遺族厚生年金を受け取れます。また、妻を亡くした子どものいない夫については、55歳以上でなければ受給権が発生せず、実際に受給できるのは60歳からです。

こうした属性による受給格差を解消すべく、遺族厚生年金は2028年4月に改正される予定です。主な改正内容を見てみましょう。

遺族厚生年金の見直し1/3

遺族厚生年金の見直し

出所:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」

  • 子どものいない人は男女ともに、60歳未満までは原則5年給付(男性は2028年4月から実施、女性は20年かけて段階的に実施)
  • ただし、障がい状態や収入が十分でない場合など、配慮が必要であれば5年目以降も給付を継続
  • 有期給付の収入要件(年収850万円未満)を廃止
  • 年金額の増額(有期給付加算・死亡分割)

2028年4月からは、子どものいない人は60歳未満までは原則5年の有期給付になります。ただし、女性は2028年度に40歳以上になる人であれば、現行制度どおり無期給付となります。

給付期間が短くなる一方、給付額は増額が予定されており、限られた期間で手厚く保障するといった趣旨の制度に変わる見込みです。60歳以上の場合は、現行制度と変わらず無期給付となります。

この制度改正でどのような人が影響を受けるのか、次章で詳しく解説します。

2. 遺族厚生年金の見直しで影響を受ける人

遺族厚生年金の見直しで影響を受けるのは、以下に該当する人です。

遺族厚生年金の見直しで影響を受ける人2/3

遺族厚生年金の見直しで影響を受ける人

出所:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」

  • 18歳年度末までの子どもがおらず、2028年度末時点で40歳未満の女性
  • 18歳年度末までの子どもがいない60歳未満の男性

今回の改正で注意が必要なのが、2028年度末時点で40歳未満の子どものいない女性です。現行制度で5年の有期給付となるのは30歳未満ですが、制度改正後は40歳未満で有期給付の対象となります。2028年度末時点で40歳を迎えていない人は、有期給付の対象になると考えておきましょう。

加えて、女性については、20年かけて段階的に見直ししていく予定です。そのため、今後少しずつ有期給付の対象になる年齢が拡大されていくと考えられます。まだ有期給付の対象でない人も、早いうちから備えを用意しておくのが望ましいです。

一方、男性は今回の改正がプラスに動く可能性が高いです。現行制度では受給権の発生が55歳、受給は60歳からとなっており、実質的に退職後の収入補填という役割になっていました。しかし、改正後は60歳未満であっても、5年間の有期給付を受けられます。新たに給付対象となる男性は年間約1万6000人です。これまで対象外だった若年層やミドル層への保障が手厚くなり、恩恵を実感しやすくなるのではないでしょうか。

2.1 編集部からのひとことポイント

中本 智恵

私が銀行員だった時代、ATMが最も混雑する日の一つが「偶数月の15日」、年金支給日でした。年金を受け取るシニア世代の方々にとって、この日は生活を支える大切な収入日であり、年金が暮らしの基盤になっていることを日々実感していました。

だからこそ、現役世代のうちから「将来自分が受け取る年金」だけでなく、「万が一の際に家族が受け取る遺族年金」の仕組みを理解しておくことが重要です。今回の法改正では、特に子どものいない40歳未満の女性など、制度変更の影響を受ける方もいます。5年間の給付終了後を見据え、働く力や資産形成を早いうちから意識しておくことが、将来の安心につながります。

お金の制度は、「知らなかった」では済まされないことが少なくありません。ご自身や配偶者の年金加入記録(ねんきん定期便など)を定期的に確認し、法改正の内容を自分事として捉えながら、必要な備えを進めていくことをおすすめします。

次章では、遺族厚生年金の見直しで影響を受けない人を解説します。

3. 遺族厚生年金の見直しで影響を受けない人

遺族厚生年金の見直しで影響を受けない人3/3

遺族厚生年金の見直しで影響を受けない人

出所:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」

遺族厚生年金が見直されても、すべての人が原則5年の有期給付に変わるわけではありません。以下に該当する人は、改正の影響を受けません。

  • すでに遺族厚生年金を受給している人
  • 60歳以上で死別した人
  • 18歳年度末までの子どもを養育している人
  • 2028年度に40歳以上になる女性

すでに遺族厚生年金を受給している人の給付期間が、今回の改正によって新たに5年間へ変更されることはありません。また、60歳以上で死別した人や2028年度に40歳以上になる女性も、現行制度のままです。

18歳年度末(障がいの状態にある場合は20歳未満)の子どもがいる場合は、子どもが対象年齢に達するまでは遺族厚生年金を受給でき、対象から外れると、その時点から「5年有期給付」に切り替わります。子どもがいてもずっと遺族厚生年金を受け取れるわけではない点に注意しましょう。

次章では「原則5年給付」の対象となる人が見るべきポイントなどを解説します。

4. 「原則5年給付」への対策は?

子どものいない人は、2028年4月の制度改正により、遺族厚生年金が原則5年給付になります。給付期間が大幅に短縮される代わりに、支給される年金は増える予定です。

5年間の給付には「有期給付加算」が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の金額(老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3)の1.3倍の金額が支給される見込みです。また、亡くなった配偶者のほうが現役時代の報酬が高かった場合、その人の厚生年金記録の一部を遺された配偶者の記録へ上乗せする「死亡分割」により、老後保障も手厚くします。

とはいえ、有期給付の対象になれば、遺族厚生年金だけで生活費を賄えるとは限りません。まずは以下のような点を確認してみましょう。

  • 自身および配偶者の厚生年金保険への加入状況
  • 配偶者が亡くなった後の世帯収入
  • 毎月の支出額や預貯金額
  • 生命保険の保険金額

不足しそうな金額やこれから貯蓄すべき金額を整理したうえで「働いて収入を増やす」「一時的に預貯金を取り崩して生活基盤を立て直す」といった方針を決めていくのが望ましいです。

5. まとめ

遺族厚生年金の改正で主な影響を受けるのは、18歳年度末までの子どもがいない人です。こうした人は、年齢などの要件に応じて、原則5年間の有期給付の対象となる可能性があります。

一方、すでに遺族厚生年金を受給している人については、原則として今回の制度改正の影響はありません。また、18歳年度末までの子どもを養育している間は現行どおり給付を受けられます。なお、子どもが規定の年齢に達した後は、制度の要件に応じて原則5年間の有期給付(給付内容の見直しあり)や継続給付へ移行する仕組みが検討されています。

改正の影響にかかわらず、現在の年金加入状況や預貯金額を確かめ、もしものことがあっても生活していける状態をつくっておくことが重要です。

参考資料

石上 ユウキ