7月に入り、2026年もいよいよ後半戦がスタートしました。

夏のボーナスシーズンを迎え、新NISAの非課税投資枠をどのように活用しようかと考えを巡らせている方も多いのではないでしょうか。

筆者は証券会社の元ファイナンシャルアドバイザーで、富裕層のライフプランに寄り添った資産運用をご提案してまいりました。

これから投資を始める方や、すでに運用されている方のなかには「オルカンとS&P500、結局どちらを選べばいいのか」という疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

全世界に幅広く分散投資するオルカン(全世界株式)と、成長著しい米国市場に集中投資するS&P500。

どちらのパフォーマンスが優れているのかは、多くの方にとって非常に大きな関心事ですよね。

この記事では、2026年5月末時点の最新データを用いて、両ファンドの投資対象や運用成績を詳しく比較します。

さらに、「もし1年前に120万円を一括投資していたら」「もし毎月10万円の積立投資を続けていたら」という2つのシナリオで資産の推移をシミュレーションし、皆さまの投資先選びのヒントをお届けします。

※本記事は特定の投資商品を推奨するものではありません。

1. 「オルカン」と「S&P500」の基本的な違いとは?投資対象を解説

はじめに、両ファンドの基本的な特徴について確認していきましょう。

1.1 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の概要

このファンドは、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み・円換算)に連動する成果を目指します。

投資対象は日本を含む先進国や新興国の株式で、広範囲に分散投資をおこなう点が特徴です。

2026年5月末時点における資産の構成比率は、以下のようになっています。

  • 先進国株式(除く日本): 82.7%
  • 新興国株式: 12.2%
  • 国内株式: 5.0%

「全世界株式」という名称から、米国への投資比率が低いイメージを持つかもしれませんが、実際には組入国トップはアメリカで、全体の62.4%を占めています。

その後に日本(5.0%)、イギリス(3.1%)、台湾(3.0%)、カナダ(2.9%)と続きますが、アメリカだけで6割以上を占める構成となっています。

1.2 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の概要

こちらはS&P500指数(配当込み・円換算)をベンチマークとしており、アメリカの主要企業約500社に投資するファンドです。

資産は実質的に100%米国株式で構成されているため、ファンドの価格変動はS&P500指数の動きとほぼ連動します。

1.3 構成上位銘柄の共通点と相違点

両ファンドを比較検討する上で重要なポイントとなるのが、組み入れられている上位銘柄のラインナップです。

オルカンの組入上位10銘柄は以下の通りです。

  • NVIDIA CORP(アメリカ): 4.9%
  • APPLE INC(アメリカ): 4.3%
  • MICROSOFT CORP(アメリカ): 2.9%
  • AMAZON.COM INC(アメリカ): 2.5%
  • ALPHABET INC-CL A(アメリカ): 2.1%
  • ALPHABET INC-CL C(アメリカ): 1.9%
  • BROADCOM INC(アメリカ): 1.8%
  • TAIWAN SEMICONDUCTOR MANUFAC(台湾): 1.7%
  • META PLATFORMS INC-CLASS A(アメリカ): 1.3%
  • TESLA INC(アメリカ): 1.2%

S&P500の組入上位10銘柄は以下の通りです。

  • NVIDIA CORP(アメリカ): 7.9%
  • APPLE INC(アメリカ): 7.0%
  • MICROSOFT CORP(アメリカ): 4.8%
  • AMAZON.COM INC(アメリカ): 4.1%
  • ALPHABET INC-CL A(アメリカ): 3.5%
  • BROADCOM INC(アメリカ): 3.1%
  • ALPHABET INC-CL C(アメリカ): 2.7%
  • META PLATFORMS INC-CLASS A(アメリカ): 2.1%
  • TESLA INC(アメリカ): 1.9%
  • MICRON TECHNOLOGY INC(アメリカ): 1.6%

NVIDIA、Apple、Microsoft、Amazon、Alphabetといった巨大テクノロジー企業が上位を占めている点は、両ファンドに共通しています。

最も大きな違いは、それぞれの銘柄が占める比率にあります。

S&P500ではNVIDIAが7.9%、Appleが7.0%と、特定の銘柄への集中度が高いことがわかります。

一方、オルカンではそれぞれ4.9%、4.3%と、S&P500に比べて比率がやや低く抑えられています。

また、オルカンの上位銘柄には台湾のTSMCが含まれていますが、S&P500はすべてアメリカの企業で構成されています。

投資対象が「分散」か「集中」かという違いはありますが、上位を構成する銘柄は大部分が共通しているため、値動きにも似た傾向が現れやすい構造といえるでしょう。

2. 【2026年5月末】オルカンとS&P500の運用成績を徹底比較

続いて、2026年5月末時点における直近の騰落率を比較してみましょう。

2.1 騰落率の比較:直近1年間

  • オルカン: +43.7%
  • S&P500: +43.1%

2.2 騰落率の比較:直近6カ月

  • オルカン: +15.4%
  • S&P500: +13.5%

2.3 騰落率の比較:直近3カ月

  • オルカン: +9.2%
  • S&P500: +12.3%

2.4 騰落率の比較:直近1カ月

  • オルカン: +5.1%
  • S&P500: +5.4%

直近1年と6カ月の期間ではオルカンが、直近3カ月と1カ月の期間ではS&P500が、それぞれわずかに相手を上回る結果となりました。

2026年3月には世界的に株式市場が調整局面を迎えましたが、4月から5月にかけては急反発し、両ファンドともに大きく値を戻しました。

直近6カ月でオルカンがS&P500の成績をわずかに上回った背景には、「為替の変動」と「新興国株式市場の堅調さ」という2つの要因が考えられます。

為替市場では、5月にかけてドル円相場がやや円高(ドル安)方向に推移しました。

この動きにより、米国株のみで構成されるS&P500よりも、投資先の通貨が分散されているオルカンの方が、円換算での資産価値の減少を抑制できました。

さらに、オルカンが資産の12.2%を投じている新興国株式が、この期間に+29.3%という高い上昇率を記録したことも、ファンド全体のパフォーマンス向上に貢献しました。

3. シミュレーション:1年前に120万円を一括投資した場合の評価額

もし1年前の2025年5月末に120万円を一括で投資していたら、現在の評価額はいくらになっているのかを試算します。

3.1 オルカンに一括投資した場合

オルカン2/3

オルカン

出所

1年前の基準価額を約2万6261円(2026年5月末の3万7737円 ÷ 1.437)と推定します。

この場合、120万円で購入できた口数は約45万6951口(120万円 ÷ 2万6261円 × 1万)となります。

  • 購入口数(概算): 約45万6951口
  • 現在の評価額(税引前): 約172万4000円
  • リターン(概算): 約+52万4000円

3.2 S&P500に一括投資した場合

S&P5003/3

S&P500

出所

1年前の基準価額を約3万930円(2026年5月末の4万4260円 ÷ 1.431)と仮定します。

この場合、120万円で購入できた口数は約38万7972口(120万円 ÷ 3万930円 × 1万)です。

  • 購入口数(概算): 約38万7972口
  • 現在の評価額(税引前): 約171万7000円
  • リターン(概算): 約+51万7000円

この一括投資シミュレーションでは、両ファンドの間に大きな差は見られませんでした。

どちらのファンドも、1年間で120万円の投資が171万円以上に増えた計算です。

ただし、これはあくまで現時点での試算結果であり、実際の投資では購入するタイミングや為替相場の状況によって成果は変動します。

4. シミュレーション:1年前から毎月10万円を積立投資した場合の評価額

次に、2025年6月から2026年5月までの1年間、毎月末に10万円ずつ積立投資を続けた場合のシミュレーションをおこないます。

投資元本の合計は、一括投資と同じ120万円です。

この金額は、新NISAのつみたて投資枠における年間上限額とも一致します。

この試算は、各月末の基準価額に基づいて毎月の購入口数を計算し、それを現在の基準価額で評価した概算値となります。

4.1 オルカンに積立投資した場合

  • 総投資額: 120万円(10万円 × 12カ月)
  • 現在の評価額(税引前): 約142万1000円
  • 評価益(概算): 約+22万1000円(+18.4%)

4.2 S&P500に積立投資した場合

  • 総投資額: 120万円(10万円 × 12カ月)
  • 現在の評価額(税引前): 約140万5000円
  • 評価益(概算): 約+20万5000円(+17.1%)

積立投資では、価格が下落したタイミング(例えば2026年3月)でより多くの口数を安価に購入できる、いわゆるドル・コスト平均法の効果が期待できます。

今回のシミュレーション期間ではオルカンがわずかに優勢でしたが、両者の差額は1万5000円程度と、ごくわずかなものでした。

同じ120万円を投資した場合でも、一括投資と積立投資とでは、最終的な評価額に約30万円もの差が生まれています。

この差が生じた最も大きな要因は、「投資資金が市場で運用されていた期間」の違いです。

一括投資では、最初に120万円全額を市場に投じるため、1年間の運用期間を通じて上昇相場の恩恵を最大限に享受できました。

それに対して積立投資は、毎月10万円ずつ段階的に投資するため、投資されずに待機している資金が存在します。

今回のような上昇が続いた相場では、資金全体の運用効率が低くなるため、一括投資と比較して資産が増えるペースは緩やかになります。

しかし、これはあくまで相場が右肩上がりで好調だった場合のシナリオです。

仮にこの1年間が下落相場であったなら、結果は全く逆になっていたでしょう。

一括投資は120万円全体が下落の影響を直接受けて大きな損失を出す可能性があります。

一方で積立投資は、まだ投資していない資金が保全されるうえ、価格が下がった局面で安く買い増しができるため、一括投資に比べて損失を大きく軽減できる可能性があります。

5. まとめ:リスク許容度や、保有している資産全体のバランスを考慮した資産形成を

2026年5月末時点のデータに基づくと、直近1年および6カ月のパフォーマンスではオルカンが、直近3カ月および1カ月のパフォーマンスではS&P500が、それぞれわずかに上回る結果となりました。

一括投資と積立投資、いずれのシミュレーションにおいても、両ファンドの成績の差は非常に小さいものでした。

組み入れ上位銘柄の構成が似ていることからもわかるように、オルカンは全世界に分散投資をおこないつつも、実質的にはアメリカへの投資比率が高いファンドです。

このため、S&P500と値動きが連動する場面も少なくありません。

両者の決定的な違いは、「アメリカ以外の国や地域へ分散投資しているかどうか」という点にあります。

オルカンは新興国やヨーロッパ諸国の株式も投資対象に含んでいるため、市場の状況によってはS&P500とは異なる値動きを示すことがあります。

どちらのファンドが絶対的に優れているということではなく、ご自身の投資方針として「アメリカ市場への集中度をどの程度許容するか」が、選択の重要な判断基準となるでしょう。

いずれのファンドも、長期的な視点での積立・分散投資に適した商品設計となっています。

短期的な価格の変動に惑わされることなく、ご自身の投資目標やリスク許容度を踏まえて、じっくりと検討してみてはいかがでしょうか。

【投資に関するご注意】本記事は、特定の金融商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。投資には元本を割り込むリスクがあります。投資に関する最終的な判断は、必ずご自身の責任において行われるようお願いいたします。

※当記事は再編集記事です。

参考資料