今年も折り返し地点となる6月末を迎えました。先日、6月15日には新年度の改定額が反映された初めての公的年金が支給されました。
厚生労働省の発表によれば、今年度の年金額は国民年金が前年度比+1.9%、厚生年金が+2.0%と、4年連続のプラス改定となっています。
その一方で総務省が公表した前年(2025年)平均の消費者物価指数の総合指数の前年比は+3.2%の上昇でした。
さらに帝国データバンクが6月30日に公表した「食品主要195社」価格改定動向調査(2026年7月)によると、7月の飲食料品値上げは2566品目にのぼり、9月には3000品目を超えるなど、「中東発」の値上げラッシュが夏以降に本格化すると予測されています。
つまり、年金の額面は増えても物価高には追いついておらず、実質的な価値は「目減り」しているのがリアルな現状です。
かつての親や祖父母の時代は、55歳や60歳で定年を迎え、その後の老後期間も現在ほど長くはありませんでした。
実際、国民年金制度が始まった1960年代初頭は、一般的な定年が55歳で、平均寿命は男性約65歳、女性約70歳という時代だったのです。
しかし、現在の平均寿命は男性が81歳、女性が87歳を超えています。さらに今年2026年4月からは、働きながら年金をもらう際の減額ライン(在職老齢年金の支給停止調整額)が月額65万円へと大幅に引き上げられるなど、シニアが長く働き続けることを国が後押しする形へと、ライフスタイルや制度は大きく変化しています。
終わりの見えない物価高に加え、かつてとは比べ物にならないほど長くなった老後。今の現役世代は、親や祖父母の世代以上に丁寧に老後資金を準備していく必要があります。
今回は、私たちの老後の暮らしに欠かせない「公的年金」について、最新の統計データをもとに男女の比較や働き方別の受給額をみていきたいと思います。
1. そもそも「厚生年金・国民年金」の違いとは?年金制度のキホン
まずは年金制度の基本をおさらいしておきましょう。
日本の公的年金は、「国民年金」と「厚生年金」から構成されます。
1.1 国民年金・厚生年金の違いとは?
- 【国民年金】…原則として日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入します。年金保険料は全員一律です。
- 【厚生年金】…会社員や公務員などが「国民年金」に上乗せして加入します。年金保険料は報酬(給与・賞与)に基づき決まります。
例えば、自営業、専業主婦(夫)であれば国民年金のみの加入。サラリーマンや公務員は国民年金+厚生年金の加入となります。
2. 男女でこんなに違う?公的年金「平均受給額」のリアル
ここからは国民年金と厚生年金の男女差を、厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から見ていきます。
2.1 国民年金の平均受給額:男女差は約4000円
【男子】
- 平均受給額…6万1595円
【女子】
- 平均受給額…5万7582円
国民年金は日本国民の大半が加入することになっており、保険料も定額であるため、男女の差は4013円と比較的少ないことが分かりました。
しかし、厚生年金に関しては給与や加入期間によって年金受給額が変動するので、次に厚生年金について見ていきましょう。
2.2 厚生年金の平均受給額:男女差は約5万8000円!その背景とは
【男子】
- 平均受給額…16万9967円
- 受給権者数…1067万9944人
【女子】
- 平均受給額…11万1413円
- 受給権者数…540万5752人
厚生年金は男女で5万8554円/月の差が出ています。また、受給権者の人数を見ても約2倍近くの差が出ています。
この背景には、女性の結婚・出産・育児などのライフイベントによる退職や休職で働き方を変えざるを得ない期間が生じやすく、就業期間が短くなったり給与が下がったりしていることが影響していると考えられます。
現在の年金受給者が現役時代だった頃、日本の企業は今ほど女性の社会進出が進んでいる時代ではなかったでしょう。
現在の現役世代が年金を受給する時代にはこうした調査結果もかなり変化していることが考えられます。
3. 【働き方別】5つのパターンで見る将来の年金目安(個人編)
平均受給額だけでは、ご自身の将来像がイメージしにくいかもしれません。
ここでは、厚生労働省が公表した令和8年度(2026年度)の改定による「多様なライフコースに応じた年金額(概算)」をもとに、5つの働き方パターンの受給目安をご紹介します。
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【パターン1】会社員経験が長い男性(厚生年金中心)
- 想定:平均収入(月額換算)約50.9万円で約40年就業
- 年金月額の目安:17万6793円
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【パターン2】自営業・フリーランスの男性(国民年金中心)
- 想定:厚生年金への加入期間が約7.6年と短く、大部分が国民年金
- 年金月額の目安:6万3513円
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【パターン3】キャリアを重ねた女性(厚生年金中心)
- 想定:平均収入(月額換算)約35.6万円で約33年就業
- 年金月額の目安:13万4640円
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【パターン4】自営業として働いた女性(国民年金中心)
- 想定:厚生年金への加入期間が約6.5年と短い
- 年金月額の目安:6万1771円
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【パターン5】専業主婦の期間が長い女性(第3号被保険者中心)
- 想定:扶養内で過ごした期間が長く、厚生年金の加入期間は約6.7年
- 年金月額の目安:7万8249円
同じように長く働いたとしても、厚生年金に加入していたかどうかで、将来の受給額に月額10万円以上の差が生まれる可能性があることが分かります。
4. 【ふたりの老後】組み合わせ次第で最大18万円の差!夫婦の受給額シミュレーション
ここまで個人としての働き方に応じた受給目安を見てきましたが、「夫婦で合わせるとどうなるの?」と思われるかもしれません。
そこで、前章で紹介した「5つのパターン」を組み合わせて、夫婦のケース別の目安額(合計)を計算してみましょう。
4.1 共働き・片働き・自営業…あなたの家庭はどのパターン?
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【会社員同士の共働き夫婦】…約31万1400円
(パターン1の夫 17万6793円 + パターン3の妻 13万4640円) -
【会社員の夫+専業主婦の妻】…約25万5000円
(パターン1の夫 17万6793円 + パターン5の妻 7万8249円) -
【自営業・フリーランス夫婦】…約12万5200円
(パターン2の夫 6万3513円 + パターン4の妻 6万1771円)
自営業の夫を持つ専業主婦の妻は、年金制度上は第3号被保険者(扶養)にはなれず、第1号被保険者として国民年金保険料を納めるため、3つ目の「自営業夫婦」に近い形になります。
働き方の組み合わせによって、夫婦の受給目安額には最大で約18万円もの大きな差が生まれることが分かります。ご自身の世帯がどの組み合わせに近いか、イメージできたでしょうか。
5. 年金だけで「ゆとりある老後」は可能?リアルな不足額
年金は国が国民の老後生活を守るためにある制度ですが、年金だけで本当に過ごせるのか疑問が残ります。
生命保険文化センターが公表する「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査」の結果では、夫婦2人の「ゆとりある老後生活費」には平均39万1000円/月が必要となっています。
「最低限の日常生活費」でも平均23万9000円/月が必要とされており、前章で計算した「会社員同士の共働き夫婦」の目安額(約31万1400円)でも、「ゆとりある老後生活費」には約8万円足りないことになります。
「会社員の夫+専業主婦の妻」の目安額(約25万5000円)では、最低限の日常生活費を少し上回る程度で、ゆとりある生活には約13万円以上足りないことになり、自営業夫婦のケースなどではさらに厳しくなることが予想されます。
6. 現役世代が今からできること:「資産寿命」と「健康寿命」を延ばす備え
日々の物価高を実感する現役世代にとって、将来、年金だけでゆとりある老後を過ごせるかは切実な問題です。
預貯金や投資、年金など、ご自身のポートフォリオのバランスを最適化し、「資産寿命」を延ばす視点を持っておきたいものです。
また、健康寿命を延ばして長く働き、年金の受給額を増やすことも、長生きリスクへの強力な備えになります。
まずは「ねんきん定期便」で現在地を確認し、「老後にいくら必要か」を逆算して、ご自身のペースに合わせた備えを、できることから始めてみましょう。




