2026年6月15日支給分の年金から、今年度の改定額が反映された金額が振り込まれました。年金を受給する世代にとっては大きなニュースとなりましたが、現役世代は意外にも知らない方が多いです。
身近なはずの年金ですが、制度の複雑さからどうしても敬遠してしまう方もいるのではないでしょうか。
未来の話と思いがちですが、私たち現役世代にとって「自分自身の年金見込額」を知ることは、とても重要です。知っていれば選択肢が増えますし、知らなければ後悔することも増えてしまうからです。
本記事では、「ねんきん定期便」を見て、自分の見込額の少なさに愕然とした40歳代女性の事例を紹介します。
- 支払った年金保険料の総額:約280万円
- 65歳からの年金見込額:約55万円(年額)
「年金保険料を280万円以上払ってきたのに…」と嘆く彼女の最大の後悔は、金額そのものではなく「過去の自分の無知」でした。
これからできる対策も踏まえて、くわしく見ていきましょう。
1. 【年金】40歳代女性の保険料と見込額のリアル
今回紹介するのは、関西地方に住む40歳代女性(既婚、子どもあり)です。大学卒業後は企業に就職しましたが、ライフステージの変化にともない離職を経験します。
現在は正社員として働いているものの、ふと気になってマイナポータル経由で年金見込額を確認したところ、想定以上に金額が低いことに衝撃を受けました。
確認したところ、現在までに支払った年金保険料の総額は約280万円。ここには第1号被保険者であった期間の国民年金保険料は含まれますが、学生納付特例を利用していた期間は含まれません。また、厚生年金保険の納付額は本人実績のみであり、事業主負担分は記載されていません。
一方、ねんきん定期便に記載されていた「65歳からの年金見込額」は約55万円でした。
「年額で55万円の年金と表示されてびっくりしました。落ち着いて考えると、あくまでも今までの実績分を加味した金額なので、これから働いて納めた分はまた上乗せされていくと思います。でも、今で55万なら60歳代まで働いても100万円ちょっとかもしれない。そう思うと急に老後が不安になりました。」
2. 年金ギャップ、後悔する本当の理由
なぜ思ったより見込額が低かったのか。実は、年金見込額が思った以上に少ないと感じる人は多いです。納付済みの保険料を見ると、その差がより大きく感じるでしょう。
そこで初めて後悔する人も多いですが、彼女は後悔の理由が3つあると語ります。
2.1 後悔①「手取りが減るから」と深く考えずに扶養に入ったこと
一番の後悔は、結婚や出産のタイミングで配偶者の扶養に入るとき「デメリットを深く調べなかったこと」です。
ライフコースの変化により退職し、配偶者の扶養に入ることはめずらしくありません。それ自体は自然な選択ですが、「周りもそうだから」「手取りが減るから」と、年金への影響を知らないまま第3号被保険者(扶養)を選んでいた場合、後悔してしまうことがあります。
知った上で選択するのと知らずに選択するのとでは、大きな違いがあるものです。
「あのとき制度を正しく知って選択していれば、ここまで後悔しなかった」と語ります。
2.2 後悔②転職の空白期間が生んだ「痛い未加入リスク」
また、彼女は結婚前にも一度転職を経験しているのですが、その時も深く考えずに「転職先が決まる前に退職」を選んでいました。
結果的に厚生年金加入期間が途絶え、2ヶ月間の国民年金加入期間が発生しています。
2.3 後悔③未加入期間の発生に気付かなかったこと
さらに年金の加入期間を確認していくと、2ヶ月の「未加入期間」があったことに気づきました。
ある事業所に就職した際、労務手続きなどがうまくいっておらず、空白期間が生まれたと考えられるとのことです。
事業主の登録が漏れていることもあるので、こうした加入期間の確認は定期的に行う必要があるのです。
いずれのケースも「知らなかった」「気づかなかった」に起因する後悔だといえます。
ただし、もし未加入期間に気付いたとしても、給与明細があれば今からでも年金事務所に「年金記録の訂正請求」を行うことで、履歴を取り戻せる可能性があります。
3. 40歳代から老後資金を挽回する「3つの方法」
ねんきん定期便を見た女性の後悔を紹介しました。同じように感じる方は少なくないのではないでしょうか。
では、同様の後悔を感じる方は、どのように挽回していけばいいのか見ていきましょう。
3.1 ライフイベントのたびに「公的制度」を自ら調べる
今後も親の介護、夫の転勤、子どもの環境変化など、離職が選択肢に入る壁が来る可能性はあります。
「なんとなく辞める(扶養に入る)」前に、休業補償や自治体の補助など、仕事を辞めずに済む制度がないか徹底的に調べることが大切です。「知ることは最大の防御である」という認識が重要です。
実際にこの女性も、「今までの人生の選択を後悔することはない」と話すとおり、必要な人生の岐路だったと思われます。
繰り返しますが、「あらゆる選択肢を知った上での選択だったかどうか」が、その後の納得感を変えると考えられます。
また、ねんきん定期便をこまめに確認することも大切です。インタビューで女性が回答していたとおり、50歳未満の定期便に記載されている金額は「今までの実績分を加味した金額なので、これから働いて納める分は含まれない」ことに注意が必要です。
転職や年収の変化で見込額は変わるものなので、その都度確認してみましょう。ねんきんネットでシミュレーションしてみるのもひとつです。
3.2 年金そのものを増やす
失った期間を取り戻すことはできませんが、これからの行動を変えることはできます。
厚生年金を増やすのであれば、長く働いて「加入期間を延ばす」というのが有効です。報酬比例制のため、「年収を上げる」ことも重要な視点です。
また「繰下げ受給を検討する」という方法もあります。繰下げ受給とは、本来であれば65歳から受け取る老齢年金を、66歳以降(最大75歳)に受け取ることによって、年金を増やす方法です。
年金を受け取るまでの間の収入源を確保することや、税金や社会保険料の負担が増えることなどに留意が必要ですが、こちらも「知っておいて損はない」制度と言えます。
3.3 年金以外の選択肢を「デメリット」まで調べて自分で決める
老後の柱は年金だけではありません。コツコツと老後資金を貯金する以外にも、例えば個人年金保険で備える方も多いです。近年ではNISAやiDeCoなどを選択する方も増えました。
早くに検討するほど、選択肢は多くなります。
ただし、誰かの受け売りではなく、それぞれの「リスクやデメリット」までしっかり調べた上で、「自分自身の責任と判断で」取捨択一することが、後悔しない老後への絶対条件となります。
4. まとめ:未来を変える第一歩は「現状を知る」こと
後悔を避けるには、まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で自分の現状(年金見込額)を知ることが重要です。
就業規則などで、退職金制度を調べるのもひとつですね。
今回の女性の後悔を見て、「そんな初歩的なことも調べなかったのか」と厳しい目を向ける方もいるかもしれません。
しかし、複雑な日本の社会保障制度において、すべての仕組みを完璧に把握できている人はどれくらいいるでしょうか。人の知識にはどうしても「偏り」が出ます。
「NISAなどの投資には詳しいけれど、公的年金には無頓着だった」、あるいはその逆など、誰しもお金の知識には「思い込み」や「死角」が存在するものです。
「知らなかった」と後悔できたことは、実は老後を変える最大のチャンスだとも言えます。これから先の老後に向けて、できることはたくさんあります。まずは調べることから始めましょう。
4.1 【編集部からご参考】年金の平均受給額と受給額別の人数分布
参考までに、今のシニアが受給している年金月額について、厚生労働省のデータをご紹介します。
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金の金額を含みます。
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円



