夏のボーナス支給が近づくこの時期、ふとご自身の家計や将来のお金について考えを巡らせることも多いのではないでしょうか。

現役で働く世代の方々は、ボーナスを前に今後の資産形成の計画を立てているご家庭も多いことでしょう。

一方、筆者を含めたプレシニア世代にとって、老後の支えとなる「公的年金」の受給額は大きな関心事です。

しかし、昨今の物価高もあって「年金だけで本当にやっていけるのか」と不安が残るのも正直なところ。そんな時に情報を集めておきたいのが、あまり知られていない「公的な支援制度」の存在です。

実は、公的年金以外にも「自ら申請手続きをしなければ受け取れないお金」があるのをご存知でしょうか。

特に、60歳代以降も働き続けるシニアの方々を支える「雇用保険からの給付金」は、知っているかどうかで家計に大きな差が生まれます。

「もっと早く知っていれば…」と後悔しないためにも、事前の把握は欠かせません。

この記事では、定年を控えた「プレシニア世代」の皆さまに向けて、セカンドキャリアを考える上で欠かせない雇用保険からの給付金3種類を詳しく解説します。

ご自身やご家族が定年後にどのような働き方を選ぶべきか、そのヒントとして、この機会にぜひ一緒にチェックしてみませんか。

※LIMOでは、個別の相談・お問い合わせにはお答えできません。

1. この記事の3つのポイント

  • 話題の年金ルール改正。しかしプレシニアにとって切実なのは「給与減」のリスク
  • 働くシニアの給与減や失業リスクをカバーする「雇用保険の3つの給付金」を解説
  • 給付金は「自ら申請しないともらえない」ため、制度を把握して賢く家計を防衛

2. 話題の「年金カットの壁」引き上げ。しかし大多数のプレシニアの現実は…?

内閣府の「令和7年版高齢社会白書」によれば、65歳から69歳で働く人の割合は、男性で6割以上、女性で4割以上にのぼります。

長くなる老後の生活を支えるため、「公的年金」と「仕事による収入」の二本柱で家計を回すスタイルは、もはやシニア世代のスタンダードになりつつあります。

一方で、働き続けるシニアにとって大きな懸念だったのが「在職老齢年金制度」です。

2026年度(令和8年度)の4月からは、この年金が減額される基準額(支給停止調整額)が、月額「51万円」から「65万円」へと引き上げられました。

しかし、「これで働き方が大きく変わる」と捉えるのは少し大袈裟かもしれません。

なぜなら、そもそも年金と給与の合計が月額51万円を超える方は全体から見れば少数派だからです。

65歳以上の在職老齢年金制度の状況2/5

65歳以上の在職老齢年金制度の状況

出所:厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」

厚生労働省の試算でも、現行制度で年金が支給停止となっているのは、65歳以降で働く年金受給者のうち約16%(約50万人)にとどまっており(2022年度末)、今回の改正で新たに全額受給できるようになるのは約20万人とされています。

つまり、大多数のプレシニアにとってより切実な問題は、年金カットの壁よりも、「60歳を過ぎると現役時代より給与が減ってしまう」「定年後の再就職のハードルが高い」という収入ダウンの現実の方であると言えそうです。

だからこそ、そうした働くシニアの経済的リスクをカバーし、申請すれば受け取れる「雇用保険」の存在を今のうちから知っておくことが重要になります。

次の章からは、プレシニアみなさんの心強い味方となる「雇用保険に関連する3つの給付金」について具体的に解説していきます。

3. 申請しないともらえない?働くシニアを支える雇用保険の給付金3選

就労意欲のあるシニア世代を経済的に支援するため、雇用保険から支給される3つの給付金についてご紹介します。

3.1 65歳未満の早期再就職を応援する「再就職手当」

再就職手当は、失業した方がより早く安定した仕事に就くことを後押しするための制度です。失業からの期間が短いほど、手厚い給付を受けられる点が特徴です。

再就職手当の支給要件

  • 対象者:雇用保険の受給資格者で、基本手当の受給資格を持つ方
  • 支給要件:基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある方が、雇用保険の被保険者として再就職するか、事業主として被保険者を雇用する場合など、定められた要件を満たした際に支給されます。

再就職手当の給付率

  • 手当の額:就職日の前日までの失業認定を受けた後の基本手当の支給残日数に応じて、給付率が変わります(1円未満は切り捨て)。
    • 所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職した場合:「支給残日数の60%」
    • 所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合:「支給残日数の70%」

再就職手当の計算式

ちなみに、再就職手当を受け取った方が新しい職場で6カ月以上働き、その間の給与が離職前より低い場合、「就業促進定着手当」の対象になることもあります。

3.2 60歳~65歳未満の賃金ダウンを補う「高年齢雇用継続給付」

高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満で働き続ける方を対象とした給付金制度です。60歳時点の賃金と比べて、現在の賃金が一定水準まで下がった場合に支給されます。

高年齢雇用継続給付の支給要件

  • 対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある、60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者
  • 支給条件:賃金が60歳到達時の75%未満の状態で働き続ける場合

高年齢雇用継続給付の支給率

  • 支給額:最高で賃金額の10%(※)に相当する額
    ※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たした方は15%

【早見表】高年齢雇用継続給付(2025年4月1日以降)

老齢年金を受け取りながら厚生年金に加入し、「高年齢雇用継続給付」を受給する場合、在職による年金の支給停止に加えて、最大で標準報酬月額の4%(※)相当額が支給停止となるため注意が必要です。
※2025年3月31日以前に支給要件を満たした方は6%

3.3 65歳以上で失業した場合の一時金「高年齢求職者給付金」

高年齢求職者給付金とは、65歳以上の雇用保険加入者が仕事を辞めた際に、一時金として支給されるお金です。

高年齢求職者給付金の支給要件

  • 対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で失業状態にある方
  • 支給要件:以下のすべての条件を満たす必要があります。
    1. 離職日以前の1年間に、被保険者期間が通算して6カ月以上あること
    2. 失業の状態にあること(就職への積極的な意思と能力があり、求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態)

高年齢求職者給付金の給付金額

  • 支給額
    • 被保険者であった期間が1年未満の場合:基本手当の30日分に相当する額
    • 被保険者であった期間が1年以上の場合:基本手当の50日分に相当する額

65歳未満の方が対象の「基本手当(失業手当)」は4週間に1度の認定を経て支給されますが、高年齢求職者給付金は一時金として一括で受け取れる点が大きな違いです。

4. まとめ

今回解説した雇用保険の給付金のように、世の中には「受給資格があっても、自分から申請しないと受け取れないお金」が数多く存在します。

お住まいの自治体の広報誌やウェブサイトなども、日頃からチェックする習慣をつけておきたいですね。

定年が近づく『プレシニア世代』にとって、「何歳まで、どんなペースで働くか」というセカンドキャリアの選択はとても悩ましい問題です。

だからこそ、今回ご紹介したような公的給付の存在を事前に知っておくことが、心に余裕を持った働き方を選ぶための大きなヒントになるでしょう。

「老後のお金」への備えというと、つい貯金や投資で「貯める・増やす」ことにばかり意識が向きがちです。

しかし、働き続けるシニアを支える国や自治体の支援制度をしっかり把握し、賢く使い倒すことも、私たちプレシニア世代にとっては立派な「生活防衛策」になります。

後になって「知らなくて損をした…」と後悔しないためにも、今のうちからしっかりアンテナを張り、ご自身にあった豊かなセカンドライフへの準備を進めていきましょう。

参考資料