物価上昇が続く日本において、食品や日用品、光熱費などの出費が苦しいという方も多いでしょう。こうした背景もあり、近年の年金額はどのように推移しているのか気になります。

少子高齢化の影響を受け、「社会保障の自己負担はあがるのに年金は減る」そんな印象を持つ方もいるかもしれません。

実は年金額自体は、ここ数年増加傾向にあります。しかし「実質は減少している」という見方もあります。

本記事では、厚生年金や国民年金の金額の推移に加え、「夫婦2人のモデル年金」がどのように推移しているのかも調査していきます。

1. 「厚生年金や国民年金」平均額と推移

シニアが受給する老齢年金にフォーカスをあて、厚生年金と国民年金にわけて平均額を見ていきましょう。まずは直近のデータで令和6年度の数字を見ると、厚生年金(国民年金を含む)の平均月額は15万289円、国民年金の平均月額は5万9310円でした。

厚生年金の平均額(全年齢)1/3

厚生年金の平均額(全年齢)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

※国民年金の金額を含む

国民年金の平均額(全年齢)2/3

国民年金の平均額(全年齢)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

全体平均について、過去の推移を確認してみます。

1.1 厚生年金(老齢厚生年金):平均月額の推移

  • 令和6年度:15万289円
  • 令和5年度:14万6429円
  • 令和4年度:14万4982円
  • 令和3年度:14万5665円
  • 令和2年度:14万6145円

1.2 国民年金(老齢基礎年金):平均月額の推移

  • 令和6年度:5万9310円
  • 令和5年度:5万7584円
  • 令和4年度:5万6428円
  • 令和3年度:5万6479円
  • 令和2年度:5万6358円

続いて、「夫婦2人のモデル年金」の推移も見ていきましょう。

2. 「厚生年金と国民年金」のモデル年金とは?推移を見る

日本年金機構や厚生労働省からは、毎年「モデル年金」なる金額が公表されています。その定義は以下のようになっています。

2.1 【モデル年金】誰の分の年金か

  • 夫婦二人の基礎年金と夫に支給される報酬比例年金

2.2 【モデル年金】どんな夫婦がもらえる年金か

  • 平均的な収入(例えば令和8年度では平均標準報酬(賞与含む月額換算)45.5万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

つまり、平均的な収入を得ていた元会社員の夫+専業主婦の妻などの合計年金です。

会社員の方は厚生年金に加入しますが、専業主婦は国民年金(基礎年金)のみ。よって、2人分の国民年金と1人分の厚生年金というわけです。

この前提をもとに、過去の推移を確認してみましょう。

2.3 【モデル年金】過去からの推移

  • 令和8年度:23万7279円
  • 令和7年度:23万2784円
  • 令和6年度:23万483円
  • 令和5年度:22万4482円
  • 令和4年度:21万9593円
  • 令和3年度:22万496円
  • 令和2年度:22万724円

マクロ経済スライドや物価・賃金変動率の反映により、令和4年度までは微減や据え置きの傾向がありました。令和5年度以降は物価上昇率と賃金上昇率がマクロ経済スライド調整分を上回ったことによりプラス改定が続き、年金額が上昇していることがわかります。

3.  昭和59年から平成11年のモデル年金は意外な数字に

参考までに、もう少し過去に遡ってモデル年金を確認しましょう。

厚生労働省が公表する「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会報告書資料編」によると、昭和59年から平成11年のモデル年金は次のように変化しています。

昭和59年から平成11年のモデル年金3/3

昭和59年から平成11年のモデル年金

出所:厚生労働省の資料を元にLIMO編集部作成

今から32年前である平成6年(1994年)では、月額23万983円。平成11年(1999年)には23万8125円になっています。

今年度が月額23万7279円なので、ほぼ同じ水準といえます。ただしこれはあくまで名目額の比較で、後述するように物価上昇分を加味した実質ベースでは目減りしています。 

加えて、当時とは年金の設計や標準報酬月額の目安など、前提条件が異なる点にも留意が必要です

もし年金額に不安を感じる場合、どのように対策をすべきなのでしょうか。年金を増やす方法について見ていきます。

4. 年金を増やす方法

将来の年金を少しでも増やすために、有効な方法をいくつか見ていきましょう。

4.1 年金を増やす方法1. 付加保険料や国民年金基金

自営業などで国民年金にのみ加入している方は、国民年金保険料に加えて月額400円の付加保険料を支払うことで、年金額に「200円×付加保険料納付した月数」が上乗せされます。

もしくは、国民年金基金に加入し、任意の掛け金を支払うことで年金額を上乗せできます。ただし、付加保険料と国民年金基金は併用できません。

4.2 年金を増やす方法2. iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoで老後資金を積み立てるのであれば、掛け金はすべて所得控除の対象で、受取時の税制優遇も受けられます。

さらに運用商品なので、本来であれば運用益に20.315%の税金がかかりますが、iDeCoは運用期間中の運用益が非課税となるメリットもあります。税制優遇を受けながら、銀行預金よりもお金が増やせる可能性があるのです。

4.3 年金を増やす方法3. 長く厚生年金に加入する

厚生年金の受給額は、支払った保険料や加入期間によって決まります。

保険料は収入によって決まるので、年収が高いほど受給額が増えますし、加入期間を伸ばすことでも金額を上げられます。

また、繰下げ受給を検討することも有効です。こうした方法を活用するには、健康であることが大前提となります。

5. まとめにかえて

直近の年金データに加え、過去の推移を確認していきました。

「年金なんてどうせもらえない」「どんどん減っている」と思っている方にとっては意外にも、近年上昇が進んでいるのです。

しかし長い目でみれば、大きく増えているわけではありません。一方で物価上昇はどんどん進んでいるため、直近では「年金上昇率よりも物価上昇率が上回る」つまり実質は目減りという状況もみられるのです。

年金を増やす方法も解説しましたが、老後の備えは年金だけとは限りません。預貯金を貯める、資産運用を行う、支出を減らす、働く期間を延ばすなども大事な視点です。

広く考えれば、そのための健康管理も重要な老後対策となるでしょう。

いずれにしても、自助努力がとても大切になります。まずは自身の年金見込額を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。

参考資料