公的年金は原則として偶数月の15日に、直前2カ月分がまとめて支給されます。

次回の支給日は8月14日(本来15日ですが、土日祝日の場合は直前の平日に繰り上げ)で、6月分・7月分がまとめて振り込まれる予定です。

2026年度は国民年金が前年度比1.9%、厚生年金が2.0%の増額改定となりましたが、物価上昇が続く中、増えた金額以上に生活費の負担を感じているシニア世代も少なくありません。多くの方にとって年金は老後の生活を支える「限られた収入源」であり、だからこそ、一度に大きな被害を受けてしまうと生活への打撃は計り知れません。

中本 智恵
私も銀行員時代、年金を受け取るご高齢のお客様の資産相談に数多く携わってきましたが、「年金だけが頼りだから、絶対に減らすわけにはいかない」というお声を幾度となく耳にしてきました。だからこそ、その大切な収入を狙う詐欺の存在には、当時から強い危機感を持っています。

今回は、シニア世代が実際に受け取っている年金の平均月額を年代別に確認したうえで、その大切な年金を脅かす特殊詐欺の最新被害状況について解説します。

1. この記事の3つのポイント

  •  65歳以上の平均年金月額は厚生年金約15万円台、国民年金約6万円台で年代を通じて安定的に推移
  •  2025年の特殊詐欺被害額は過去最悪の約1,423億円と、前年(約719億円)からほぼ倍増
  •  被害者・被害額とも65歳以上のシニア層が半数超を占め、特に「警察官」をかたる詐欺の被害額が突出

2. 【年金月額一覧表】60歳代・70歳代・80歳代「1歳刻みの平均はいくら?」

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、シニア世代が実際に受け取っている年金の平均月額を年代別に確認しましょう。

2.1 60歳代の平均月額

厚生年金

  • 60歳:9万9664円
  • 61歳:10万4455円
  • 62歳:10万9323円
  • 63歳:6万8758円
  • 64歳:8万3901円
  • 65歳:14万9862円
  • 66歳:15万2378円
  • 67歳:15万2356円
  • 68歳:15万2709円
  • 69歳:15万1284円

※65歳未満の受給額には、特別支給の老齢厚生年金のうち、報酬比例部分のみを受給している方が含まれる点にご留意ください。

国民年金

  • 60歳:4万5186円
  • 61歳:4万6371円
  • 62歳:4万7784円
  • 63歳:4万7258円
  • 64歳:4万7896円
  • 65歳:6万1240円
  • 66歳:6万1369円
  • 67歳:6万1345円
  • 68歳:6万1293円
  • 69歳:6万978円

※65歳未満で年金を受給している人は、繰上げ受給を選択しているケースです。

本来の受給開始年齢である65歳以上では、平均月額は厚生年金が約15万円、国民年金が約6万円となっており、おおよその受給水準の目安となります。

2.2 70歳代の平均月額

続いて、70歳代の受給者が受け取っている年金の平均月額を見ていきましょう。

厚生年金

  • 70歳:15万455円
  • 71歳:14万8371円
  • 72歳:14万6858円
  • 73歳:14万5583円
  • 74歳:14万7774円
  • 75歳:15万1410円
  • 76歳:15万1241円
  • 77歳:15万962円
  • 78歳:15万862円
  • 79歳:15万3115円

国民年金

  • 70歳:6万1011円
  • 71歳:6万770円
  • 72歳:6万234円
  • 73歳:6万32円
  • 74歳:5万9813円
  • 75歳:5万9659円
  • 76歳:5万9555円
  • 77歳:5万9349円
  • 78歳:5万9124円
  • 79歳:5万8676円

2.3 80歳代の平均月額

では最後に、80歳代の平均受給額も確認していきましょう。

厚生年金

  • 80歳:15万3729円
  • 81歳:15万5460円
  • 82歳:15万7744円
  • 83歳:15万9994円
  • 84歳:16万2555円
  • 85歳:16万3947円
  • 86歳:16万5577円
  • 87歳:16万5557円
  • 88歳:16万6200円
  • 89歳:16万6767円

国民年金

  • 80歳:5万8623円
  • 81歳:5万8269円
  • 82歳:5万8003円
  • 83歳:5万7857円
  • 84歳:5万9675円
  • 85歳:5万9425円
  • 86歳:5万9228円
  • 87歳:5万9204円
  • 88歳:5万8756円
  • 89歳:5万8572円

公表データによると、70歳代から80歳代の平均年金月額は、厚生年金がおおむね14万~16万円台、国民年金は5万~6万円台で推移していることがわかります。

3. 【特殊詐欺】限られた年金を脅かす被害額 過去最悪の1,423億円、高齢者の被害は依然5割超

3.1 被害額はこの1年でほぼ倍増

5月22日に警察庁が公表した「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」によると、2025年中の特殊詐欺の認知件数は27,832件、被害額は約1,423億円にのぼりました。

前年(2024年)の被害額は約719億円だったため、1年間で被害額がほぼ倍の規模に膨らんだことになります。

  • 認知件数:27,832件
  • 被害額:約1,423億円
  • 既遂1件あたりの被害額:523.6万円

一度に500万円を超える被害に遭うケースも珍しくなく、年金という限られた月々の収入では到底埋め合わせがつかない金額であることがわかります。

3.2 被害者の半数超は65歳以上のシニア層

年代別に見ると、65歳以上の高齢者が占める割合は、法人被害を除く認知件数のうち51.3%、被害額のうち59.2%と、いずれも半数を超えています。

若年層への被害拡大も報じられていますが、金額面では依然としてシニア世代が最も大きな影響を受けている構図です。

3.3 「警察官」をかたる詐欺が被害を押し上げる要因に

2025年から新たに集計が始まった、警察官などを装って現金をだまし取る手口は、件数では特殊詐欺全体の4割弱にとどまるものの、被害額では7割を占めています。

この手口の既遂1件あたりの被害額は900万円を超えており、他の特殊詐欺の手口(1件あたり257万円程度)と比べて突出して高額です。「警察官から電話がかかってきた」という時点で、まず疑ってかかる姿勢が欠かせません。

4. 年金という「限られた収入」を守るために

今回は、シニア世代が受け取る年金の平均月額と、その年金を脅かす特殊詐欺の最新被害状況について解説しました。

厚生年金は月額14万円〜16万円台、国民年金は5万円〜6万円台という、決して余裕のある金額とは言えない中で、2025年には特殊詐欺の被害額が過去最悪の1,423.1億円を記録し、2026年も高水準の被害が続いています。

年金は一度失ってしまうと取り戻すことが難しい大切な収入源です。

日頃から家族と定期的に連絡を取り合う、知らない電話には安易に折り返さない、「警察官」「還付金」といったキーワードが出た時点でまず家族や警察相談専用窓口(#9110)に相談する、といった基本的な備えを、ぜひこの機会に見直してみてください。

5. 元銀行員が窓口で実際に見てきた「振込直前」のヒヤリ・ハット

中本 智恵

銀行員時代、窓口やATMコーナーで高額の引き出しや振込を依頼されるご高齢のお客様に、行員が声をかけて詐欺被害を未然に防いだ場面を経験したことがあります。記事にあるとおり、「警察官」をかたる手口は1件あたりの被害額が900万円を超えるなど突出しており、実際に「警察から預金を移すよう指示された」とおっしゃりながら来店されるお客様にお会いしたこともあります。共通していたのは、電話口で「あなただけに特別に教える」「他の行員には言わないように」といった、家族や第三者への相談を遠ざけるような言葉をかけられていた点でした。

とくに年金という収入は、記事にあるとおり厚生年金で月14万〜16万円台、国民年金では5万〜6万円台と決して大きな金額ではなく、一度500万円規模の被害に遭ってしまうと、その後の生活を大きく圧迫し、取り戻すことが極めて困難になります。だからこそ、日頃から「電話一本で大金を動かす場面はまず疑う」という姿勢を、ご本人だけでなくご家族とも共有しておくことが重要です。

銀行員時代の経験からお伝えしたいのは、窓口やATMで通常と異なる高額の取引をしようとすると、行員から声をかけられることがありますが、それは疑われているのではなく、大切な資産を守るための確認だということです。「急いでいるから」「他の人に言わないでほしいから」と焦らされたときこそ、一度立ち止まり、家族や警察相談専用窓口(#9110)に相談する習慣を持っていただきたいと思います。

 

参考資料

中本 智恵