7月も半ばに入り、夏のボーナスを手にして家計の計画を立てている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、株式会社帝国データバンクが2026年6月30日に発表した調査によると、7月の飲食料品値上げは2566品目にのぼり、私たちの暮らしには依然としてシビアな物価高の波が押し寄せています。
先月、6月15日の公的年金支給日には、今年度の新しい改定額が反映された年金が初めて支給されました。
2026年度、厚生年金は2.0%、国民年金は1.9%のプラス改定となりましたが、相次ぐ値上げを前に「額面が増えた分だけ実際の生活にゆとりが生まれるものだろうか」と、将来の年金生活に不安を感じる現役世代の方もいるでしょう。
私自身、かつて家族の介護に直面した経験があり、老後に向けた「想定外の備え」がいかに大切かを身をもって痛感しました。
現在はそうした実体験や、介護・終活に関する日々の学びを活かしながら、金融メディアの編集者として「暮らしとお金」のトレンドを追っています。
日々のニュースやデータを見つめる視点からお伝えしたいのは、老後の安心には「年金収入の現在地の把握」と「リアルな生活費を見据えた備え」が不可欠だということ。
今回は、家計と向き合う機会の多い今の時期だからこそ知っておきたい、月額15万円以上の厚生年金を受け取る女性の割合や、本当に必要な老後への備えについて紐解いていきます。
1. この記事でわかるポイント
- 女性の厚生年金の平均受給額は月額約11万1000円で、全体平均を下回る
- 月15万円以上受け取っている女性は約12.3%で、男性の約68.8%との差が大きい
- 老後資金を考えるうえでは、年金見込額の確認と早めの資産形成が重要
2. まず知っておきたい「公的年金」の仕組み
最初に、公的年金制度の基本を確認しておきましょう。
日本の公的年金は、すべての人が加入する「国民年金」と、会社員や公務員などが加入する「厚生年金」の2つで構成されています。
2.1 国民年金(1階部分)の概要
- 加入対象:原則、日本に住む20歳から60歳未満の方
- 保険料:1万7920円(※1):全員一律、年度ごとに見直しあり
- 年金額:7万608円(※2)✕調整率:未納期間がある場合は減額調整
※1:2026年度(令和8年度)の月額 ※2:2026年度(令和8年度)の月額。40年間年金保険料を納付した場合に受け取れる「満額」(昭和31年4月2日以後生まれの方の場合)
2.2 厚生年金(2階部分)の概要
- 加入対象:主に会社員、公務員など
- 保険料:報酬比例制(報酬により決定)
- 年金額:加入期間や納付保険料により決定(国民年金に上乗せ支給)
現役時代に厚生年金へ加入していた期間や収入によって、老後に受け取る年金額は大きく変わります。
国民年金は保険料が一律ですが、厚生年金は報酬比例制のため、収入が高いほど保険料も増え、その分将来受け取る年金額も変わる仕組みです。
3. 女性の厚生年金「ひと月15万円超」はわずか8人に1人?
厚生年金の受給額は、現役時代の収入や加入期間によって個人差があります。
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(老齢基礎年金を含む)の平均受給月額は男女全体で15万289円でした。
男女別では次のような結果となっています。
3.1 厚生年金の平均年金月額
- 全体:15万289円
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
では、女性のうち平均額に近い「月15万円以上」を受給している人はどの程度いるのでしょうか。
3.2 厚生年金を「月額15万円以上」受け取っている割合
- 女性の受給権者数:540万5752人
- うち、月額15万円以上受け取っている女性:66万4486人
- 割合:約12.3%(66万4486人 ÷ 540万5752人)
女性で厚生年金を月15万円以上受給している人は約12.3%で、およそ8人に1人という結果でした。
一方、男性では月15万円以上を受け取る人が約68.8%(735万998人÷1067万9944人)となっており、男女差が大きいことが分かります。
続いて、女性の受給額分布を詳しく見ていきましょう。
3.3 女性の厚生年金・受給額分布を見る
- ~1万円未満:1万2953人
- 1万円以上~2万円未満:3880人
- 2万円以上~3万円未満:2万9993人
- 3万円以上~4万円未満:6万3025人
- 4万円以上~5万円未満:6万1945人
- 5万円以上~6万円未満:6万9313人
- 6万円以上~7万円未満:18万892人
- 7万円以上~8万円未満:34万8764人
- 8万円以上~9万円未満:54万1901人
- 9万円以上~10万円未満:75万1358人
- 10万円以上~11万円未満:81万3990人
- 11万円以上~12万円未満:69万5128人
- 12万円以上~13万円未満:52万2466人
- 13万円以上~14万円未満:37万4169人
- 14万円以上~15万円未満:27万1489人
- 15万円以上~16万円未満:20万322人
- 16万円以上~17万円未満:14万7604人
- 17万円以上~18万円未満:10万5489人
- 18万円以上~19万円未満:7万1561人
- 19万円以上~20万円未満:4万8617人
- 20万円以上~21万円未満:3万3387人
- 21万円以上~22万円未満:2万1931人
- 22万円以上~23万円未満:1万4116人
- 23万円以上~24万円未満:8813人
- 24万円以上~25万円未満:5491人
- 25万円以上~26万円未満:3233人
- 26万円以上~27万円未満:1811人
- 27万円以上~28万円未満:927人
- 28万円以上~29万円未満:479人
- 29万円以上~30万円未満:223人
- 30万円以上~:482人
最も多い受給額帯は「10万円以上~11万円未満」です。
一方で、月15万円以上を受け取る女性は少数派となっています。
この背景には、結婚や出産、育児などを機に就業形態が変わり、厚生年金への加入期間や収入が男性より短くなりやすいことなどが影響していると考えられます。
公的年金だけで十分な生活水準を維持することは容易ではありません。
そのため、まずは自分が将来どのくらい年金を受け取れるのかを確認しておくことが大切です。
4. 年金月額とあわせて考えたい、介護や終活のリアルな費用
ねんきん定期便やねんきんネットで将来の年金見込額を確認しておくことはとても大切ですが、豊かなセカンドライフを思い描くには、それだけでは不十分かもしれません。
家族の介護・看取り、親族の相続を多数見てきた立場からお伝えしたいのは、「想定外の出費」に対する備えのたいせつさです。
総務省が公表した「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、75歳以上の後期高齢シニア夫婦(無職世帯)では、年金などの社会保障給付を中心とした収入に対して消費支出等が上回り、毎月約2万7000円の赤字が生じています。
さらに、加齢に伴い介護が必要になれば、この赤字幅は一気に膨らむ可能性があります。
ちなみにLIFULL介護の試算(※)では、生涯で介護に必要な金額はおよそ「2300万円」にのぼると試算されています。
また、認知症を発症して施設に入居する場合の費用や、墓じまいなどの終活にかかるお金も意識しておく必要があるでしょう。
だからこそ、現役時代のうちに「ねんきん定期便」で将来のベースとなる年金見込額を把握し、そこから不足するであろう生活費や介護費用などを逆算しておくことが求められます。
※2026年6月18日公表。要介護状態で自宅で1年過ごし、有料老人ホームに5年入居する想定で試算
5. まとめにかえて
今回は最新の統計データから、女性の厚生年金受給額の実態や、老後に向けたリアルな備えについて考えてきました。
月額15万円以上の厚生年金を受け取る女性は約12.3%にとどまり、男性との間には依然として大きな受給額の差が存在しています。女性は結婚や出産、育児、そして親の介護といったライフイベントにより、働き方の変更を余儀なくされやすいことが、将来の年金額に直結しているというシビアな現実があります。
公的年金だけで、ゆとりある老後や介護・終活の費用まですべてを賄うのは容易ではありません。だからこそ、まずは「ご自身の現在地」を知るために、ねんきん定期便などで受給見込額を確認してみてください。
その際、ねんきん定期便は年齢によって記載内容が異なる点に注意が必要です。50歳未満の場合は「これまでの加入実績に応じた年金額」が記載されており、今後の納付によって金額は増えていきます。
一方、50歳以上の場合は、現在の働き方のまま60歳まで納め続けたと仮定した「65歳からの年金見込額」が記載されるため、実際の受給額により近いリアルな数字を確認することができます。
ご自身の年齢に合わせた見方で現在地を正しく把握し、将来の不安を少しでも安心に変えるため、ご家族と話し合いながら、無理のない範囲で早めの資産形成を始めていきましょう。