5. 医療保険・がん保険より「貯蓄」で備える方が合理的
高齢期の医療費対策は、民間の医療保険やがん保険に頼るより、貯蓄で備えるほうが合理的です。保険は「万が一の大きな損失」に備える仕組みですが、高齢期の医療費はそもそも公的制度で大きく抑えられています。
そのため、冷静に考えると民間保険で上乗せして備える必要性は薄いのです。
5.1 公的保険の手厚さ
公的医療制度には高額療養費制度があるため、自己負担は実際には毎月一定額で頭打ちになります。高額な医療費が青天井でかかる事態は、公的制度がすでに防いでくれています。
たとえば保険適用の医療費が100万円かかっても、窓口負担が高額療養費制度の上限を超えた場合は、実際の自己負担は数万円程度です。「医療費で破産する」というイメージは、日本の公的保険のもとでは起こりにくいのが実情です。
5.2 保険料の割高さ
医療保険やがん保険の保険料は、加入年齢が上がるほど高くなります。高齢で新規加入すると、受け取る給付金より払う保険料が多くなる「掛け損」も起こりやすいといえます。
これは、高齢になるほど病気のリスクが高まり、その分の保険料が価格に反映されるためです。長生きして健康に過ごせば、結局ほとんど給付を受けないまま保険料だけを払い続ける結果にもなりかねません。
5.3 資金の自由度が低い
保険は「入院・手術」など決められた事由でしか給付されません。一方で、手元の貯蓄なら通院交通費や差額ベッド代、介護費用など、保険が対象外とする出費にも柔軟に使えます。
近年は入院が短期化し、通院での治療も増えているため、「入院したらいくら」という従来型の保険ではカバーしきれない出費が増えています。貯蓄であれば、医療に限らず生活費や住まいの修繕など、その時々で本当に必要な用途に回せる点も強みです。
具体的には、保険料として毎月数千円を払う代わりに、その分を「医療・介護用の予備資金」として別口座に積み立てる方法が挙げられます。使わなければそのまま資産として残せるため、無駄になりません。月数千円でも10年・20年と続ければまとまった額になり、心強い備えとなるでしょう。
著者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1000記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引主任士など。
監修者
株式会社モニクルリサーチ メディア編集本部 公開室
元・厚生労働省担当記者(社会保障専門紙)
中央大学法学部を卒業後、東証プライム上場IT企業での法人営業を経て、厚生労働省記者クラブに所属する行政・自治体向けの社会保障専門紙記者として活動。
現在は「公的社会保障制度(年金・医療・介護)」の仕組みと、「私的資産形成(NISA・iDeCo)」の税制優遇制度を横断的に分析し、生活者のための家計防衛術を提供する編集者として活動している。
各省庁が公表する難解な一次情報(e-Gov法令検索の条文データや、総務省統計局の家計調査など)を読み解き、現役世代からシニア層までを対象に、事実に基づいた実用的な解説記事を継続的に執筆している。
【経歴・専門性】
前職の専門紙記者時代には、厚生労働省本省および各地方自治体(保険者)を直接取材対象とし、現場の最前線で以下の重要政策の決定プロセスと一次情報に触れてきた。
これらの政策取材を通じ、「制度の複雑化が引き起こす、生活者のサイレントな不利益(申請漏れや制度の不知による経済的損失)」の構造を実務レベルで把握。役所の論理で構築された難解な制度設計を、IT企業時代に培ったデータ分析手法と掛け合わせることで、客観的指標(平均値ではなく中央値を用いた実態把握など)に基づく解説記事を執筆している。
【具体的な実績・保有資格・メディア掲載歴】
公的機関の一次データに依拠した客観的な記事執筆により、Yahoo!ニュース「経済ランキング」において多数の1位を獲得。具体的な執筆・担当領域における実績は以下の通りである。
- 公的年金・給付金領域:日本年金機構の公表資料に基づく「在職老齢年金による支給停止基準」や「年金生活者支援給付金の受給要件」の解説。また、国税庁のガイドラインに沿った定額減税や各種給付金の対象者判定フローの実務的整理。
- 医療・介護保険領域:高額療養費制度などの自己負担限度額の算出方法や、公的保障のセーフティネット範囲の図解解説。
- 資産運用領域:金融庁のNISA特設サイトや、iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)のデータに基づく税制優遇メリットの数値化。特定の金融商品の購入推奨は行わず、公的年金の不足分を補うための長期積立投資の制度整理に特化。
- 貯蓄・家計管理領域:家計調査などの官公庁統計データに基づいた、年代別・世帯年収別の貯蓄実態の論理的解説、およびインフレ時代におけるリスク管理手法の情報提供。
- 保有資格・実務知見:東京商工会議所 ビジネスマネジャー検定試験®合格。上場企業での実務経験と当資格で培った「組織マネジメント」や「コンプライアンス・リスク管理」の視点を個人の家計防衛に転用し、ビジネスパーソンが納得できる論理的な解説の裏付けとしている。
【読者へ提供する価値と発信理念】
「役所の論理ではなく、生活者の視点で制度を翻訳する」ことを発信の基本理念としている。
複雑怪奇な社会保障制度においては、制度を知らないこと自体が直接的な経済的損失に直結する。この情報非対称性を是正し、「知っていれば救われたはずの人が損をする現状をゼロにする」ことが現在の活動における最大のミッションである。
そのため、記事執筆にあたっては個人の主観や推測、投資推奨は避ける。
そのうえで、読者の生活や資産に影響を与える領域であることを自覚し、読者が「国に頼りすぎず、国を賢く利用する」ための正確で安全な判断材料を提供し、生活者とその家族を守るための実用的な知見を届け続けている。
(2026年6月16日更新)