初夏の爽やかな風が心地よい季節になりました。今年度は70歳代の家計に直結する医療費制度の変更がいくつかあります。そんなニュースなどみながら「自分の保険料や窓口負担はどうなるの」と気になる方もいるのではないでしょうか。今回は厚生労働省の調査結果をもとに、75歳から対象となる「後期高齢者医療保険料」の値上げと、全世代に関係する「高額療養費制度」の見直しについて解説します。特に高額療養費制度の中の70歳以上の外来特例についても見直しの対象になっているので分かりやすく解説します。
1. 【シニア世代】令和8度の後期高齢者医療保険料「全国平均は月7989円」
令和8・9年度の後期高齢者医療保険料(医療分)は、一人当たり全国平均で月額7989円となる見込みです。これは令和6・7年度の7411円から578円(7.8%)の増加となります。
1.1 負担増の主な理由は「医療費の増加」と「負担割合の引き上げ」
今回の改定では、医療給付費の増加などに伴う保険料(医療分)の引き上げに加え、「子ども・子育て支援金」の新しい支援金制度の導入による上乗せが見込まれています。
保険料が上昇する主な要因は、一人当たり医療給付費が約4.89%増加することや、医療給付費のうち後期高齢者が負担する割合が13.27%へ引き上げられたことです。一方で、過去の剰余金の活用や財政安定化基金からの交付を通じて、保険料の急激な増加を抑える工夫もされています。
2. 【シニア世代】高額療養費制度、通院を支える「70歳以上の外来特例」
医療費の窓口負担が1カ月で一定の金額を超えた場合、その超えた分が後から支給されて負担を軽くしてくれるのが「高額療養費制度」です。
どのくらい負担が軽くなるのか70歳以上・年収370万~770万円《3割負担》の方を例にみてみましょう。1カ月の医療費が100万円かかったとします。
- 自己負担の上限額:8万100円+(医療費−26万7000円)×1%=8万7430円
※自己負担の上限額や計算式は、ご本人の所得区分(年収など)によって細かく分かれています。ここでは「年収約370万〜770万円(3割負担)」の方を例にしています。 - 本来の窓口負担(3割)だと: 30万円を支払う必要があります。
- 高額療養費制度を使うと: 実際の自己負担は87430円で済みます。
残りの21万2570円は「高額療養費」として国から支給(払い戻し)されるため、窓口で一時的に大金を支払っても、最終的な負担はここまで抑えられます。
2.1 70歳以上の外来特例
さらに、70歳以上の方には、日々の通院(外来)にかかる窓口負担を特別に和らげる「外来特例」という仕組みが用意されています。
現在の制度では、一般的な所得の方(窓口負担2割)の場合、ひと月の通院負担の上限が1万8000円、年間の合計でも14.4万円までに抑えられています。この月ごと・年ごとの二つの上限があるおかげで、持病などで毎月のように通院が必要な方でも、家計を大きく痛めることなく安心して治療を続けられるようになっています。
3. 【令和8年8月から】「高額療養費の見直し」2つのポイントをみる
令和8年8月からは、医療費全体の伸びなどを踏まえ、将来にわたってこの安心な制度を維持するために、負担能力に応じた見直しが行われます。今回の改定は、一部で毎月の負担額が引き上がる代わりに、長引く治療による負担を抑える「新しい年間のストッパー(セーフティネット)」が新設されるのが大きな特徴です。
3.1 ①【新設】「高額療養費の年間上限」
外来(通院)の特例とは別に、入院なども含めた高額療養費制度全体に対して、新たに「年間の自己負担上限」が作られます。
■長引く治療を受ける方のための仕組み
これまでは「1カ月ごと」の限度額が基本でした。そのため、毎月の限度額には届かなくても、何カ月も治療が続くと支払いが積み重なって家計を圧迫することがありました。新制度は、そんな長期療養者の経済的負担を減らすためにつくられました。
■上限に達した後は支払いが不要に
月ごとの自己負担額が積み上がってこの新しい「年間上限額」に達した後は、その年の残りの期間、窓口での医療費の支払いが不要になります。
3.2 ②「70歳以上の外来特例」の上限額が変わります
上記のように「全体の年間上限」という強い味方ができる一方で、日々の通院を支える「70歳以上の外来特例」については、所得区分に応じて以下のように上限額が見直されます。
- 窓口負担が2割の一般区分:
月額上限が2万2000円に、年間の上限が21.6万円へと引き上げられます。 - 住民税が非課税の区分:
月額上限が1万1000円へと引き上げられます。ただし、毎月上限まで治療を受ける方の年間負担が大きく増えないよう、新たに「年間上限 9万6000円」が導入されます。 - 非課税の中でも特に所得が一定以下の方:
負担増への配慮として、現在の月額上限8000円のまま据え置かれます。
一部で上限額の引き上げは行われますが、このように長期療養が必要な方や低所得の方への配慮をしっかりと組み込むことで、将来にわたって皆様の生活を守るセーフティネット機能が維持されます。
4. まとめにかえて
今回は厚生労働省などの調査結果をもとに、令和8年度からの医療保険料の値上げや高額療養費制度の見直しについて解説しました。
保険料や外来特例の上限が引き上げられると聞き、少し身構えてしまった方もいらっしゃるかもしれません。確かに毎月の支出は増えますが、その一方で「医療費全体の年間上限」という強力なセーフティネットが新しく作られます。これからは長引く治療が必要になっても、一定以上の負担はストップするので、過度に恐れる必要はありません。
さらに2026年4月からは子ども・子育て支援金の拠出も始まりますから、今一度ご自身の家計のバランスを見直してみてはいかがでしょうか。国の制度を正しく知っておくことこそが、これからの暮らしを守る最大の武器になります。体調を第一に健やかな毎日を送りながら、一歩ずつこれからの変化に備えていきましょう。
参考資料
- 厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について」
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 厚生労働省「高額療養費制度について」
- 厚生労働省「高額療養費の見直しについて」
- 厚生労働省「外来特例について(追加資料)」
- 厚生労働省「高額療養費の年間上限の新設」
- こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」
- こども家庭庁「Q2. 令和8年度から始まる子ども・子育て支援金はどんな制度?何に使われるの?」
村岸 理美