2. 成長の原動力は「AIサーバー向け基板」
なぜ、イビデンの業績はこれほどまでに伸びているのでしょうか。その最大の理由は、世界中を席巻している「AI(人工知能)」の波にあります。
会社が発表した電子セグメントの2026年度売上見通しは3,300億円に上りますが、その内訳を見ると、なんと約半分弱を「AIサーバー向け」が占める見込みとなっています。
汎用サーバーやパソコン向けの需要も底堅いものの、AIサーバー向けの需要が圧倒的な勢いで成長を牽引している構図です。
このAI需要の爆発的な拡大は、株式市場でも熱狂的に受け止められました。イビデンの株価は、2016年以降の長期的なスパンで見ると、3,000円付近から一時は23,000円へと駆け上がる劇的な上昇を見せています。
泉田氏も、この見事な株価の推移について次のように語ります。
「3000円ぐらいの付近からもう23000円とかいっちゃうからね。6倍ぐらいか。夢あるね。これ株式投資の醍醐味ですよね」
足元では株価の調整局面も見られますが、AIという巨大なメガトレンドに乗った企業の成長力が、いかに投資家を惹きつけるかを如実に物語っています。
3. 売上を超える「5,000億円」の巨額設備投資
この未曾有のAI需要を確実に取り込むため、イビデンは驚くべき経営決断を下しました。総額5,000億円に上る巨額の設備投資計画を発表したのです。
具体的には、2つの巨大な新工場を建設します。1つ目は「河間事業場」で、投資額は2,200億円。こちらはAI ASIC(特定用途向け集積回路)向けの高機能ICパッケージ基板を製造します。
2つ目は「大野事業場」で、投資額は2,800億円。こちらはAI GPU(画像処理半導体)向けの高機能ICパッケージ基板を製造します。いずれも2027年度から順次稼働し、量産を開始する予定です。
ここで、投資家目線で一つの大きな疑問が生じます。年間売上高が約4,162億円の会社が、自社の売上規模を上回る5,000億円もの資金を一体どうやって調達するのでしょうか。
泉田氏は、決算短信のバランスシート(貸借対照表)を読み解きながら、この疑問に切り込みます。まず、手元にある「現金及び預金」は約2,956億円です。
通常運転資金として残しておく必要があるため、これを全額投資に回すことはできません。また、すぐに現金化できそうな「投資有価証券」も約322億円にとどまります。
次に負債の部を見ると、1年内償還予定の社債や固定負債の社債、転換社債型新株予約権付社債、長期借入金などの「有利子負債」をすべて足し合わせても約1,925億円です。
つまり、手元の現金と通常の借入をかき集めても、5,000億円という巨大な工場建設費用には全く足りないのです。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日