3. 年金改定を踏まえ、毎月の不足分にどう備えるか
この毎月の不足額を補填するのが、これまでに形成してきた貯蓄です。
先ほど確認した貯蓄額の中央値は、60歳代で300万円、70歳代で500万円でした。
毎月約3万円、年間で約36万円というペースで貯蓄を取り崩していくことを考えると、その重要性が見えてきます。
収入の主軸となる公的年金は、2026年度(令和8年度)において国民年金が1.9%、厚生年金が2.0%それぞれ増額改定されました。
しかし、この改定率は物価上昇率(3.2%)には及んでいません。
これは、賃金の変動率を基準とする仕組みや、年金財政の安定化を図るための調整機能(マクロ経済スライド)が適用されるためです。
結果として、年金額自体は増えても、物価の上昇ペースには追いついていないという側面があります。
だからこそ、実行可能な範囲で備えを進めておくことが大切です。
例えば、通信費や保険料といった固定費の見直し、健康な限り働き続けて収入を確保すること、年金の受給開始を遅らせて月々の受給額を増やす「繰下げ受給」などが選択肢として考えられます。
また、新NISAなどの制度を活用して資産運用を始める方法もありますが、運用には価格変動リスクが伴うため、生活に不可欠な資金を投じることは避けるといった注意が必要です。
どの選択肢を検討する場合でも、それぞれのメリット・デメリットやリスクを十分に理解した上で、ご自身の状況に合った対策を考えることが重要です。
4. まとめ
60歳代・70歳代のおひとりさま世帯における貯蓄額は、平均値で見ると60歳代が「1364万円」、70歳代が「1489万円」でした。
一方で、より実態に近いとされる中央値は、60歳代で「300万円」、70歳代で「500万円」となっており、個人差が非常に大きいことがわかります。
また、65歳以上の単身無職世帯の家計に目を向けると、毎月約3万円の不足分を貯蓄で補填しているのが現状です。
2026年度に年金額は増額されましたが、物価上昇が続く中では、家計の見直しが今後も重要になるでしょう。
まずはご自身の年金見込額や毎月の支出、現在の貯蓄額などを把握し、現状を正確に確認することから始めてみるのはいかがでしょうか。
※当記事は再編集記事です。
参考資料
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)〔単身世帯〕」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要」
- LIMO「【60~70歳代おひとりさまの貯蓄額】平均と中央値を見る。「ふつう」はいくら?2026年度の年金額改定・1カ月の生活費も」
LIMO編集部貯蓄解説班