梅雨が明け、本格的な夏が近づく6月。日々の気温差で体調管理が気になるこの時期は、将来の健康や家計について考える良い機会かもしれません。
特にシニア世代にとって、老後の生活を支える公的医療保険は非常に重要な制度です。
日本では「団塊の世代」が全員75歳以上となり、後期高齢者の人口が増加しています。これに伴い、医療制度、特に自己負担のあり方への関心が高まっています。
年齢とともに医療機関を利用する頻度は高くなる傾向にあり、年金収入が中心となる世帯では、医療費が家計に与える影響は小さくありません。「老後の生活は大丈夫だろうか」という漠然とした不安には、医療費の増加に対する懸念も含まれているのではないでしょうか。
75歳以上の方が加入する後期高齢者医療制度では、医療費の自己負担割合が所得に応じて変わります。2025年秋に2割負担の軽減措置が終了したことで、負担増を実感している方もいるかもしれません。
後期高齢者の医療費負担は、世帯の所得状況によって1割・2割・3割のいずれかに決まります。将来の医療費を予測するためにも、この判定基準を正しく理解しておくことが大切です。
この記事では、後期高齢者医療制度の仕組みを解説するとともに、自己負担割合を決める「収入や所得の目安」を具体的に見ていきます。
1. 【75歳以上】後期高齢者医療制度の基本。加入で何が変わるのか解説
後期高齢者医療制度は、75歳以上の方を対象とした公的な医療保険制度です。75歳の誕生日を迎えると、原則として、それまで加入していた健康保険の種類や就労状況に関係なく、自動的にこの制度に切り替わります。
また、65歳から74歳の方でも、一定の障害認定を受けている場合は、本人が希望すれば申請によって加入できます。
制度への移行にあたり、特別な手続きは基本的に不要です。保険証(または資格確認書)は、お住まいの都道府県ごとの広域連合から新しく交付される仕組みです。
後期高齢者医療制度に移行すると、医療機関で支払う窓口負担は一律ではなくなります。
世帯の所得や住民税の課税状況に応じて、「1割」「2割」「3割」のいずれかの負担割合が適用されるため、実際の医療費負担額に大きな差が生まれます。
ここからは、後期高齢者医療制度における自己負担割合が、どのような基準で決定されるのかを詳しく見ていきましょう。
2. 【75歳以上】医療費の自己負担割合「1割・2割・3割」はどう決まる?判定基準を解説
後期高齢者医療制度では、医療機関での自己負担割合が、被保険者の所得に応じて3つの区分に設定されています。この判定は世帯ごとに行われ、以下のいずれかの割合が適用されることになります。
1割負担の対象者:標準的な所得水準の方
多くの後期高齢者の方がこの区分に該当し、後述する2割・3割負担の要件に当てはまらない場合に適用されます。
2割負担の対象者:一般所得者で一定以上の所得がある方
1割負担と3割負担の間に設けられた区分で、所得が一定の基準を超えると適用されます。なお、制度導入時に設けられていた、医療費の急な負担増を緩和するための「2割負担の人への配慮措置」は、2025年9月末をもって終了しています。
3割負担の対象者:現役世代並みの所得がある方
課税所得や収入金額が多く、「現役並み所得」と判定された場合に適用される、最も負担割合の高い区分です。
3. 年金「単身200万円・夫婦320万円」が分かれ道?医療費負担が跳ね上がる条件とは
窓口での負担割合は、被保険者個人の所得だけでなく、同じ世帯にいる後期高齢者全員の所得状況を基に判定されます。
この判定は毎年8月に定期的に見直されるほか、所得の修正や世帯構成の変更があった際にも、その都度再判定が行われる仕組みになっています。
3.1 後期高齢者医療制度「窓口負担割合」の判定基準を早見表で確認
ご自身やご家族がどの負担割合に該当するのか、判定の基準となる所得や収入の具体的な目安を詳しく見ていきましょう。
3.2 1割負担となる「一般の所得者」の条件
後述する2割または3割負担の条件に当てはまらない場合
3.3 2割負担となる「一定以上の所得がある方」の条件
以下の①と②の両方の条件を満たす場合
- ①同じ世帯にいる被保険者のうち、課税所得が28万円以上の方がいる。
- ②同じ世帯の被保険者全員の「年金収入」と「その他の合計所得金額」を合わせた金額が、以下の基準に該当する。
・被保険者が1人の世帯:200万円以上
・被保険者が2人以上の世帯:合計320万円以上
3.4 3割負担となる「現役並み所得者」の条件
同じ世帯にいる被保険者のうち、課税所得が145万円以上の方がいる場合
上記の条件に加えて、さらに以下の収入要件などを満たす方。
- 世帯内の被保険者が1人:収入合計額が383万円以上
- 世帯内の被保険者が2人以上:被保険者全員の収入合計額が520万円以上
- 世帯内の被保険者が1人で、70歳以上75歳未満の方もいる場合:被保険者と70歳以上75歳未満の方の収入合計額が520万円以上
3.5 フローチャートでわかる!後期高齢者医療制度「医療費の窓口負担割合」
後期高齢者医療制度の窓口負担割合は所得によって決まりますが、フローチャートを使うと判定のプロセスがわかりやすくなります。
世帯の課税状況や収入額を順に追っていくことで、ご自身が「1割・2割・3割」のどの区分に当てはまるのかを整理できるでしょう。
ご自身の自己負担割合は、後期高齢者医療資格確認書で確認できます。紙の資格確認書をお持ちの方は、その記載内容を見れば現在の負担割合がわかります。
マイナ保険証を利用している場合は、マイナポータルからの確認が可能です。医療機関を受診する前に確認しておくと、おおよその医療費を把握でき、安心して利用しやすくなるでしょう。
4. 【75歳以上】後期高齢者医療制度の窓口負担割合は「世帯全体の所得」で判定
後期高齢者医療制度では、医療費の窓口負担割合は個人の収入だけでなく、同じ世帯にいる後期高齢者全員の所得を合算して判定します。
そのため、「自分の収入は少ないから負担も軽いはず」と思い込んでいると、想定と異なる場合があるため注意が必要です。
例えば、ご自身の年金収入が多くなくても、同世帯の配偶者などに一定以上の所得があれば、世帯全体で「現役並み所得者」とみなされることがあります。この場合、医療機関での窓口負担は3割になります。
判定の重要なポイントは、「世帯内に課税所得145万円以上の後期高齢者がいるか」という点です。該当する方がいる世帯は、原則として現役並み所得者と判定され、3割負担になる可能性が高まります。
特に夫婦の一方に年金などの収入が偏っている世帯は、単身世帯よりも世帯合算の基準額を超えやすい傾向にあります。「個人の所得」だけでなく、配偶者を含めた「世帯全体の所得」で負担割合が決まるという制度の仕組みを、事前に理解しておくことが大切です。
5. 【75歳以上】年齢で医療費はどれくらい増える?負担の変化をデータで見る
後期高齢者医療制度を考える上では、加齢に伴い医療費がどのように変化するのかを把握しておくことも重要です。
厚生労働省の「国民医療費の概況」によれば、医療費は年齢とともに増加する傾向があり、特に75歳を超えると一人あたりの医療費が大きく上昇することがわかります。
5.1 年齢階級別の一人あたり国民医療費
厚生労働省が公表した「令和5年度 国民医療費の概況」によると、一人あたりの国民医療費は以下の通りです。
- 65歳未満:約22万円
- 65歳以上:約80万円
- 75歳以上:約95万円
75歳以上の医療費は65歳未満の約5倍にものぼり、高齢期には医療サービスの利用頻度が大幅に増える実情がうかがえます。
5.2 75歳以上で医療費が増加する背景
年齢が上がるにつれて、高血圧や糖尿病などの慢性疾患を持つ人が増え、定期的な通院や服薬が欠かせなくなるケースが多くなります。
加えて、心疾患、脳血管疾患、骨折などで入院治療が必要になる割合も高くなる傾向にあり、これが医療費全体を増加させる一因です。
さらに、医療費は一度きりの支出ではなく、通院費や薬代として継続的にかかることも多いため、高齢期の家計において医療費は生活費と並ぶ重要な支出項目となります。
6. 【75歳以上】高齢期の医療費支出が家計に与える影響とは
では、実際にどのような医療費負担が発生しているのでしょうか。
高齢期の医療費は、入院や手術といった高額なものだけではありません。日常的な通院費や薬代などの継続的な支出が積み重なり、家計に影響を与えることも少なくないのです。
6.1 医療費の内訳:「通院費」と「薬代」が占める割合
厚生労働省の「国民医療費の概況」によれば、医療費の内訳は以下のようになっています。
- 入院医療費:37.1%
- 入院外(外来・通院)医療費:34.7%
- 薬局調剤医療費(薬代):17.6%
6.2 家計への影響が大きい「毎月発生する医療費」
年齢を重ねると、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった慢性疾患により、定期的に医療機関へ通院する人が増加します。
その結果、診察費に加えて薬代や検査費用なども継続的に必要になります。
一回あたりの支払額は少額でも、毎月の通院が重なると年間の負担は決して小さくありません。家計管理において、見過ごすことのできない支出項目といえます。
6.3 一時的に大きな負担となり得る入院や手術費用
また、加齢とともに入院や手術が必要になる可能性も高まります。
自己負担割合が1割や2割であっても、入院が長期化すれば支払う金額は大きくなります。加えて、差額ベッド代や交通費、家族の付き添い費用など、公的医療保険が適用されない支出が発生する場合もあります。
老後の医療費を計画する際は、日々の通院費だけでなく、もしもの入院や手術に備えた費用も考慮に入れておくことが重要です。
7. まとめ:高齢期の医療費への不安にどう備えるか
後期高齢者医療制度の窓口負担割合は、所得や世帯構成によって決まりますが、この制度を取り巻く状況は将来的に変わる可能性があります。
注目すべき変化の一つが「子ども・子育て支援金」の導入です。これは少子化対策を社会全体で支えるために創設された制度で、後期高齢者医療制度でも、被保険者一人あたり月額約200円(※)が保険料に上乗せされる見通しです。
一人あたりの負担は少額に思えるかもしれませんが、年間では数千円規模になるため、家計への影響を感じる世帯も出てくるかもしれません。
少子高齢化が進む日本では、医療保険料や関連する負担が今後も少しずつ増えていく可能性は十分にあります。
制度の仕組みや将来の変更点を把握し、このような追加負担も考慮して家計全体を計画することが、安定した老後を送るための重要なポイントになるでしょう。
※支援金額は、お住まいの都道府県後期高齢者医療広域連合が定める条例に基づき、個人の所得などに応じて決定されます。月額の支援金額については、お住まいの市町村へお問い合わせください。後期高齢者医療広域連合ごとに支援金に関する保険料率は異なります。また、拠出は令和8年4月分からとなりますが、具体的な徴収開始時期については、ご加入の広域連合にご確認ください。
※当記事は再編集記事です。
参考資料
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査」
- 政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
- 厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」
- 厚生労働省「国民医療費の概況」
- こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」
- LIMO「年金いくらで2割負担?《75歳以上》後期高齢者医療制度のボーダーライン」
LIMO編集部社会保障解説班


