6. 75歳を境に広がる家計格差、その理由とは?

75歳を超えると、同じ高齢者世代でも家計や生活の状況に大きな差が生まれやすくなります。もはや年齢だけで実態を測ることは難しく、健康状態や家族構成、保有資産などが生活の安定度を左右する重要な要素となります。

例えば、同じ75歳以上の夫婦であっても、以下のような状況では家計の中身は大きく異なります。

  • 夫婦ともに健康で自立した生活を送っている世帯
  • 夫婦のどちらかが要介護状態にある世帯
  • 配偶者を亡くし、単身世帯に近い暮らしをしている世帯

6.1 健康状態が家計の大きな分岐点に

75歳以降の暮らしで特に差がつきやすいのが、医療や介護にどれだけの費用がかかるかという点です。健康を維持できている間は家計も比較的安定していますが、通院が増えたり介護サービスを利用し始めたりすると、支出が急増するケースは少なくありません。

特に介護が必要になると、以下のような新たな負担が発生します。

  • 医療費や介護サービス利用料
  • 介護用品の購入費や住宅の改修費
  • 家事代行や移動支援など外部サービスの利用料

こうした費用は一般的な家計調査のデータには表れにくく、同じ年金収入であっても生活のゆとりに差が生まれる大きな要因です。

6.2 家族構成の変化が固定費の負担を重くすることも

もう一つ見逃せないのが、家族構成の変化です。夫婦二人で暮らしている場合と、どちらかが亡くなり一人暮らしに近い状態になった場合では、生活環境が大きく変わります。

単身に近い状況になると、次のような課題に直面しやすくなります。

  • 住居費や光熱費が思ったほど減らない
  • 通院や家事の負担が増大する
  • 外部のサービスに頼る機会が増える

世帯人数が半分になっても支出が比例して減るわけではなく、生活を維持するための固定費が残るため、かえって一人あたりの家計負担が重く感じられることもあります。

6.3 「平均値」では実態を測れない年代へ

このように、75歳以降の家計は、

  • 年金収入の額
  • 保有する貯蓄額

だけで決まるものではなく、健康状態や生活環境に大きく左右されます。そのため、「平均的な後期高齢者夫婦」のデータだけでは、個々のリアルな生活実態を把握することは困難です。

重要なのは、平均値と自分を比較することではなく、自身の健康や家族の状況を踏まえ、将来どのような支出が発生しそうかを具体的にシミュレーションしておくことです。

こうした個人差が広がるなか、家計への影響をさらに大きくするのが、75歳から加入する後期高齢者医療制度と医療費の自己負担割合です。この制度を正しく理解しているかどうかは、老後の資金計画に直結します。

それでは次に、後期高齢者医療制度の仕組みについて詳しく見ていきましょう。

7. 後期高齢者の医療費、自己負担割合はどう決まる?1割・2割・3割の判定基準

75歳になると、すべての人が後期高齢者医療制度に加入します。この制度では、前年の所得に応じて、医療機関の窓口で支払う医療費の自己負担割合が決定されます。

基本的な負担割合は1割ですが、医療費の増大に対応するため、2022年10月からは一定以上の所得がある方を対象に2割負担が導入されました。

7.1 自己負担割合の判定基準

  • 1割:現役並み所得者、および2割負担の対象者に該当しない方
  • 2割:一定以上の所得がある方。以下の1と2の両方に該当する場合。
    1. 同じ世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上の人がいる
    2. 同じ世帯の被保険者の「年金収入」+「その他の合計所得金額」の合計が、1人の場合は200万円以上、2人以上の場合は合計320万円以上に該当する
  • 3割:現役並み所得者。
    • 同じ世帯の被保険者の中に課税所得が145万円以上の方がいる場合(注)ただし、一定の基準や要件を満たすと、負担割合が1割または2割になることがあります。

なお、負担増を緩和するための特例措置は2025年9月末で終了したため、今後は2割負担に該当する世帯が増える可能性があります。

医療費の自己負担割合が上がると、その分だけ家計への直接的な負担も大きくなります。貯蓄の取り崩しを抑えるためにも、自分がどの区分に該当するのかを定期的に確認しておくことが重要です。