7月に入り、本格的な夏の暑さが続く時期となりました。冷房などの光熱費が膨らみやすいこの季節、75歳以上のシニア世代のご自宅には、お住まいの自治体から新しい「後期高齢者医療保険料の決定通知書」が届き始めるタイミングでもあります。
75歳から全員が加入する後期高齢者医療制度では、前年の所得等に応じて病院窓口での負担割合が「1割・2割・3割」のいずれかに判定されます。
特に1割から2割への変更は、窓口での支払いが単純に2倍になることを意味するため、日々の通院を要するシニア家計にとって無視できない要素です。
さらに、2026年度(令和8年度)からは、全世代で少子化対策を支える「子ども・子育て支援金」の徴収が本格的にスタートしており、後期高齢者医療制度の保険料に上乗せされる形で年金からの天引きが始まっています。
本記事では、医療費の窓口負担が2割になる具体的な収入基準をフローチャートで整理するとともに、新たな支援金がシニア家計に及ぼす影響について客観的に解説します。
1. 日本の公的医療保険制度とは?
日本では、すべての人が公的医療保険に加入する仕組みとなっており、職業や年齢などによって加入する制度が異なります。
主な制度は次の3つです。
- 被用者保険:会社勤めの人が対象
- 国民健康保険:自営業者・フリーランス・退職者などが対象
- 後期高齢者医療制度:原則75歳以上の人が対象
こうした制度によって、必要な医療サービスを受けやすくするとともに、医療費の自己負担を抑える仕組みが整えられています。
今回は、その中でも75歳以上の人を対象とする「後期高齢者医療制度」について見ていきましょう。
2. 75歳になると原則加入対象となる「後期高齢者医療制度」について
後期高齢者医療制度は、公的医療保険制度の一つとして運営されています。
対象となるのは原則75歳以上の人で、75歳の誕生日を迎えると、それまで加入していた国民健康保険や勤務先の健康保険、共済組合などから自動的に移行します。
また、65歳以上74歳以下の人でも、一定の障害があると認定された場合は、この制度へ加入することができます。
次に、後期高齢者医療制度における医療費の自己負担割合について確認していきましょう。
2.1 窓口負担は1割・2割・3割のいずれか
後期高齢者医療制度では、所得状況に応じて医療機関で支払う自己負担割合が決まります。
適用される負担割合は「1割」「2割」「3割」の3区分です。
制度開始当初は、一般的な所得水準の人は1割負担、現役世代並みの所得がある人は3割負担という仕組みでした。
その後、医療費の増加や現役世代の負担軽減を目的として、2022年10月から一定以上の所得がある人を対象に2割負担が導入されています。
負担割合の区分は次のとおりです。
- 3割負担:現役並み所得者(同じ世帯の被保険者の中に住民税課税所得が145万円以上の方がいる場合)
- 2割負担:一定以上所得のある方
- 1割負担:一般所得者等(同じ世帯の被保険者全員の住民税課税所得がいずれも28万円未満の場合など)
厚生労働省の試算では、後期高齢者医療制度の加入者のうち約20%、およそ370万人が2割負担の対象になると見込まれています。
2.2 2割負担への軽減措置はすでに終了
2割負担の導入に伴い、急激な自己負担増を抑えるための特例措置が設けられていました。
2022年10月1日から3年間は、外来診療における負担増加額を月3000円までに抑える配慮措置が実施されていましたが、この制度は2025年9月30日で終了しています。
現在は原則どおり2割負担が適用されています。
ただし、配慮措置終了後も高額療養費制度は利用できるため、外来診療における自己負担額には上限が設けられており、その上限額は月額1万8000円、年間では14万4000円です。
3. 医療費が「2割負担」になる収入基準を確認
医療費の自己負担割合が2割となるのは、次の2つの条件をともに満たした場合です。
- 同じ世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上の方がいる。
- 同じ世帯の被保険者の「年金収入」+「その他の合計所得金額」の合計額が以下に該当する。
・1人の場合は200万円以上
・2人以上の場合は合計320万円以上
たとえば単身世帯であれば、年金収入とその他所得の合計額が200万円以上になると、2割負担の対象となります。
月額換算ではおよそ16万6000円以上が一つの目安です。
次章では、フローチャートを用いて負担割合について分かりやすく確認していきます。
3.1 【フローチャート図】医療費の窓口負担が2割になる人の判定基準
後期高齢者医療制度における窓口負担割合は、課税所得や収入状況などをもとに決定されます。
2割負担に該当するかどうかは、まず課税所得の条件を満たしているかを確認し、そのうえで年金収入とその他所得の合計額が基準額以上かどうかによって判定されます。
ご自身や家族の状況を確認する際は、以下の条件を参考にしてみましょう。
- 単身世帯:現役並み所得者に該当しない→課税所得が28万円以上である→年金収入とその他の合計所得が200万円以上である
- 複数人世帯:現役並み所得者に該当しない→世帯内75歳以上の方等のうち課税所得が28万円以上の方がいる→年金収入とその他の合計所得が合計320万円以上である
このように、同じ後期高齢者医療制度の加入者でも、世帯構成や所得状況によって負担割合は異なります。
なお、2026年度から「子ども・子育て支援金制度」が開始されており、今後はシニア世代の保険料負担がさらに増加する可能性があります。
4. まとめにかえて
本記事で解説してきた『医療費の負担割合』やは、75歳以上のシニア家計における毎月のキャッシュフローに直接影響を及ぼす重要なチェックポイントです。
注意したいのが『自身の窓口負担が変更された通知を見落とし、病院や薬局での支払いが急に増えてから慌てて家計を見直す』というヒューマンエラーです。
毎年夏頃に交付される新しい保険証や決定通知書は、必ずご自身やご家族で開封し、確認する習慣をつけてください。
また、医療費の負担増や手取りの減少を恐れるあまり、必要な受診をためらったりするのは本末転倒です。
国の『高額療養費制度』などの制度も正しく知り、過剰な不安を手放すこと。その上で、実質的な年金手取り額の枠内に日々の生活費をスリムに収めていきましょう。
参考資料
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
- 政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」
- 厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」
- こども家庭庁長官官房総務課支援金制度等準備室「子ども・子育て支援金制度について」
- 厚生労働省「令和6年度からの後期高齢者医療の保険料について」
- 東京都後期高齢者医療広域連合「一部負担金の減額・免除等」
- 大阪府後期高齢者医療広域連合「後期高齢者医療制度の概要」
- こども家庭庁「加速化プランによる子育て支援の拡充と子ども・子育て支援金」
- こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」
齊藤 慧