7月も中旬に入り、夏のボーナスを手に、お盆の帰省や旅行の計画を立てている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ファイナンシャルアドバイザーとして多くの方の資産形成のご相談に乗る中で、「将来、本当に年金はもらえるのでしょうか」といった漠然とした不安の声をよく耳にします。

実は、厚生年金を月20万円以上受け取れる人は、月10万円未満の人より少ないというデータもあります。この記事では、年金のリアルな実態から、長寿化に伴う認知症リスク、そして家族が集まる機会に話しておきたい「終活」まで、最新のデータを基に解説します。

1. 厚生年金、平均受給額15万円台「月10万円未満」の受給者は全体の何パーセント?

厚生年金(国民年金部分を含む)の受給額に関する分布を詳細に見ていくと、少し意外な事実が見えてきます。多くの方が老後の生活費の目安と考える「月額20万円以上」を受け取っている人よりも、「月額10万円未満」の受給者の方が多いという現実があるのです。

※この記事で紹介するのは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の、国民年金の月額部分を含む年金額です。

厚生年金・国民年金の平均年金月額(2024年度末現在)1/3

厚生年金・国民年金の平均年金月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

1.1 データで見る厚生年金受給額の分布(男女全体)

  • 月額10万円未満の受給者:19.0%(およそ5.3人に1人)
  • 月額20万円以上の受給者:18.8%(およそ5.4人に1人)

ごくわずかな差ですが、「10万円に満たない」層が、比較的高額な年金を受け取る層の割合を上回っていることがわかります。
もし国民年金のみを受け取っている人も含めて全体を見渡した場合、この「10万円未満」の割合はさらに大きくなると考えられます。

平均受給額は15万円台とされていますが、実際には個人間で大きな差があり、受給者の8割以上が「月20万円未満」であるのが現状です。このことが、自助努力による資産形成の重要性が叫ばれる理由の一つといえるでしょう。

老後の生活が始まってから「想定していたより年金が少ない」と困ることのないように、現役で働いているうちから、ご自身の年金見込額を現実的に把握しておくことが大切です。公的年金制度だけを頼りにするのではなく、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)などを活用して、早めに「自分年金」の準備を始めることが、将来の生活にゆとりをもたらすポイントになります。

2. 日本の平均寿命、男性81歳・女性87歳!シニアの4人に1人「認知機能低下サイン」あり?

厚生労働省が発表した『令和6年簡易生命表の概況』によれば、日本の最新の平均寿命は男性で81.09歳、女性で87.13歳となっています。前年と比較すると男性は横ばい、女性はわずかに短くなりましたが、長期的な視点で見れば寿命は大きく延伸しています。

このように長くなった老後の時間を豊かに暮らすためには、資産の準備だけでなく、公的年金制度や医療・介護に関するリスクを正しく理解しておくことが欠かせません。特に、長生きするほど向き合う可能性が高まる「認知症」への備えは重要です。

2.1 シニアの約4人に1人に認知機能低下のサイン?認知症の最新データ

65歳以上の高齢者における認知症の現状(令和4年(2022年)時点の推計値)3/3

65歳以上の高齢者における認知症の現状(令和4年(2022年)時点の推計値)

出所:政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」

政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」で示されている令和4年(2022年)時点の推計値によると、65歳以上の高齢者3603万人における認知症の状況は以下のようになっています。

  • 認知症と診断された人:約443万人(高齢者人口の12.3%)
  • 軽度認知障害(MCI)の人:約559万人(同15.5%)

認知症の方と、その予備群とされるMCI(軽度認知障害)の方を合わせると、合計で約1002万人にのぼります。これは、65歳以上のシニアのうち、およそ4人に1人が認知機能について何らかの注意や支援を必要としている状態であることを示唆しています。認知症は誰にとっても身近な課題であり、特にMCIの段階でいかに早く気づき、対応するかがその後の生活の質を大きく変えるといわれています。

このような社会的な背景もあり、「終活」への関心が高まっています。

3. 「終活」の必要性は理解しているが…60歳代・70歳代におけるエンディングノートの課題

【グラフ】終活に対するイメージ(全体・男女別・年代別)

【全体・男女別・年代別】終活に対するイメージのグラフ

出所:NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)第2回終活意識全国調査報告書【確定版】(2025年7月)

長寿化が進み、認知症のリスクも身近になる中で、「終活」への関心が高まっています。NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)が公表した『第2回終活意識全国調査報告書【確定版】(2025年7月)』によれば、「終活」という言葉を知っている人は96.2%に達しています。しかし、その具体的な活動の一つである「エンディングノート」については、知っていても実際に書くという行動に移せている人は少ないのが現状です。特に年齢を重ねるほど、「まだ自分には早い」と感じたり、体力的な問題で筆が進まなかったりする傾向が見られます。

3.1 エンディングノートは持っているだけ?年代別の意識と実行率の差

  • 認知度:60歳代以上では9割以上の人が知っている。
  • 所有率:70歳代以上が24.2%で最も高いものの、50歳代以下では1桁台にとどまる。
  • 実行率(所有者のうち記入している割合):20歳代では9割以上が記入している一方、70歳代以上では約半数に留まる。

年齢が上がるにつれて、記載すべき内容が複雑で多岐にわたることや、「まだ先のこと」という気持ちから後回しにしてしまうこと、さらには健康状態の変化などが、記入を妨げる要因になっている可能性があります。ご自身の資産や医療、介護に関する希望をきちんと残すためにも、気力と体力が十分にあるうちから少しずつ準備を進めておくことが大切です。

【調査概要】NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)第2回終活意識全国調査報告書【確定版】(2025年7月)

  • 調査目的 :高齢社会における終活意識の実態を明らかにし、個人が豊かで安心した人生後半期を送るための支援策や啓発活動に役立てる
  • 調査対象 :20~89歳の男女
  • 調査地域 :全国
  • 調査方法 :インターネットリサーチ
  • 調査時期 :2024年12月4日(水)~12月6日(金)
  • 回答者数 :2,052名
  • 割付方法 :人口構成比割付(令和2年国勢調査の性年代別人口比率に基づく)
  • 調査委託先 :株式会社マクロミル

4. まとめ:老後の安心は現役時代からの準備が鍵

ここまで、厚生年金の受給額の実態、長寿化に伴う健康リスク、そして終活の現状について見てきました。

「年金が月10万円未満」というデータを見ると、将来に不安を感じるかもしれません。しかし、現役時代にこの現実を直視することは、早めに対策を講じるための良い機会と捉えることができます。iDeCoやNISAを活用した「自分年金」の構築や、認知症などに備えてご自身の希望を書き留めておく「エンディングノート」の準備は、どちらも大切な資産防衛策です。

「まだ自分には関係ない」と先延ばしにせず、心と体に余裕があるうちから、できることから始めてみるのはいかがでしょうか。家族が集まる機会に将来について話し合うことが、安心して老後を迎えるための第一歩となるでしょう。

参考資料

鶴田 綾