アジサイの花が映える6月となりました。雨の季節は、今後の家計について落ち着いて考える良い時期です。生活保護と聞くと働けない人が利用するイメージがあるかもしれません。

しかし実際には、生活保護を受給している世帯のなかで最も多いのは高齢者世帯です。厚生労働省の調査によると受給世帯のうち54.8%を高齢者世帯が占め、そのうち51.2%は単身高齢者世帯となっています。

ではなぜ高齢者の一人暮らしは割合が高いのでしょうか。本記事では、生活保護受給世帯に占める単身高齢者の割合やその背景を確認するとともに、シニア世帯の家計収支の実態、生活保護の受給要件や支援内容について詳しく見ていきます。

1. 生活保護受給世帯の半数超を占める「単身高齢者」

生活保護を受給している世帯では、高齢者の一人暮らしが多いといわれますが、実際の状況はどうなっているのでしょうか。

厚生労働省の「生活保護の被保護者調査(令和8年2月分概数)」によると、世帯類型別の内訳では、高齢者世帯が89万5360世帯と全体の54.8%を占めています。

さらに、その内訳を見ると、高齢者世帯のうち単身世帯は83万6310世帯(51.2%)、2人以上の世帯は5万9050世帯(3.6%)となっています。

【世帯類型別世帯数及び割合(保護停止中を含まない)】

  • 高齢者世帯:89万5360世帯(54.8%)
    ・単身世帯:83万6310世帯(51.2%)
    ・2人以上の世帯:5万9050世帯(3.6%)
  • 高齢者世帯を除く世帯:73万7334世帯(45.2%)
    ・母子世帯:5万8218世帯(3.6%)
    ・障害者・傷病者世帯:41万8852世帯(25.7%)
    ・その他の世帯:26万264世帯(15.9%)

このように、生活保護世帯では高齢者世帯が半数以上を占めており、その大部分が単身世帯となっています。

では、なぜ生活保護受給世帯のなかで単身の高齢者が多いのでしょうか。

2. 生活保護の51.2%を「単身高齢者」が占める理由とは?

生活保護受給世帯で単身高齢者が多い背景には、年金だけで生活を成り立たせることの難しさがあります。

厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち、年金のみで暮らしている世帯の割合は43.4%でした。

公的年金の総所得に占める割合別世帯数の構成割合2/6

公的年金の総所得に占める割合別世帯数の構成割合

出所:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」

つまり、半数以上の世帯は年金以外の収入も含めて生活を支えている状況にあることがうかがえます。

また、高齢になると働いて収入を得ることが難しくなる傾向があり、さらに、配偶者との死別や未婚などをきっかけに、一人暮らしとなる高齢者も少なくありません。

単身世帯では、家賃や光熱費などの支出を一人で負担する必要があり、家族間で生活費を分担することもできません。

加えて、貯蓄を取り崩しながら生活するケースや、医療費・介護費の負担が増えるケースもあります。

このように、収入を増やしにくい一方で支出負担は続くため、生活保護受給世帯では単身高齢者の割合が高くなっていると考えられます。

では、年金を主な収入源として暮らす65歳以上の無職世帯の家計は、どのような状況なのでしょうか。

3. シニア世帯の家計は毎月どのくらい不足しているのか

続いて、総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」をもとに、65歳以上の無職世帯における家計収支を見ていきましょう。

3.1 高齢夫婦世帯は「毎月約4万円の赤字」

【65歳以上 夫婦のみ無職世帯】

  • 実収入:25万4395円
  • 可処分所得(手取り収入):22万1544円
  • 消費支出:26万3979円
  • 毎月の赤字額:4万2434円

3.2 高齢単身世帯は「毎月約3万円の赤字」

【65歳以上 単身無職世帯】

  • 実収入:13万1456円
  • 可処分所得(手取り収入):11万8465円
  • 消費支出:14万8445円
  • 毎月の赤字額:2万9980円

高齢夫婦世帯では、手取り収入にあたる可処分所得が22万1544円である一方、消費支出は26万3979円となっており、毎月4万2434円の不足が生じています。

また、高齢単身世帯においても、可処分所得11万8465円に対して消費支出は14万8445円となっており、毎月2万9980円の赤字となっています。

これらの数値は平均的な家計収支を示したものであり、突発的な医療費や介護費の増加、住宅修繕費などは別途負担となる場合があります。

こうした家計状況を見ると、年金収入だけでは生活費をまかなうことが難しい高齢者が一定数存在することや、生活保護受給世帯において単身高齢者の割合が高くなっている背景も理解しやすいのではないでしょうか。

もっとも、収入が不足しているからといって、誰でも生活保護を受給できるわけではありません。

生活保護を利用するためには、国が定める一定の要件を満たす必要があります。

では、生活保護の対象となるのはどのような人なのでしょうか。

次章では、制度を利用する前に知っておきたい基本的な条件について確認していきます。

4. 生活保護を利用できるのはどのような人?

生活保護は、希望すれば誰でも受けられる制度ではありません。

まずは預貯金などの資産を活用し、働くことができる場合には能力に応じて就労することが求められます。

そのうえで、世帯の収入が国の定める最低生活費を下回る場合に、不足する分が支給される仕組みです。

また、生活保護の審査は個人ではなく世帯全体を対象として行われ、預貯金や不動産、有価証券など換金可能な資産については、原則として生活のために活用する必要があります。

さらに、就労できる人は、その能力に応じて働くことが前提となり、あわせて、親族からの援助や年金など、利用できる制度や支援がある場合には、それらを優先的に活用することになります。

こうした要件を踏まえたうえで、なお生活を維持することが難しい場合に生活保護が支給されます。

次章では、生活保護の中心的な支援である「生活扶助」の仕組みについて見ていきましょう。

5. 生活保護の「生活扶助」の支給内容は?

生活保護は、あらかじめ決まった金額が支給される制度ではありません。

世帯ごとの収入や状況を踏まえ、生活に必要な額に不足が生じる場合に、その不足分を支援する仕組みです。

生活保護には8種類の扶助が設けられており、その中心となるのが「生活扶助」です。

生活保護の支給内容5/6

生活保護の支給内容

出所:厚生労働省「生活保護制度の概要等について」

  • 生活扶助:食費や被服費、光熱水費など日常生活にかかる費用
  • 住宅扶助:アパートなどの家賃について、定められた範囲内で実費を支給
  • 教育扶助:義務教育に必要な学用品費など
  • 医療扶助:医療サービスにかかる費用(医療機関へ直接支払われ、自己負担なし)
  • 介護扶助:介護サービスの費用(事業者へ直接支払われ、自己負担なし)
  • 出産扶助:出産にかかる費用を一定範囲内で支給
  • 生業扶助:就労に必要な技能習得や、高等学校等への就学にかかる費用を支給
  • 葬祭扶助:葬儀にかかる費用を一定範囲内で支給

生活扶助は、食費や衣類代、光熱水費など、日々の生活に欠かせない支出を支えるための扶助です。

また、単純な現金給付ではなく、最低限度の生活を維持するために必要な基準に基づいて算定される点が特徴です。

生活扶助の金額は全国共通ではなく、居住地域や世帯人数、年齢構成などによって異なります。

さらに、世帯に収入がある場合には、その収入を考慮したうえで不足する分が支給されます。

では、世帯ごとの生活扶助額の目安を見ていきましょう。

5.1 【世帯別】生活扶助額の目安

厚生労働省「生活保護制度の概要等について」によると、生活扶助額の目安は以下のとおりです。

【世帯構成:東京都区部等/地方郡部等】

  • 3人世帯(33歳、29歳、4歳): 16万4860円/14万5870円
  • 高齢者単身世帯(68歳):7万7980円/6万8450円
  • 高齢者夫婦世帯(68歳、65歳):12万2460円/10万8720円
  • 母子世帯(30歳、4歳、2歳): 19万6220円/17万4800円

このように、生活扶助額は世帯構成や年齢、居住地域によって異なります。

また、同じ人数の世帯であっても、住んでいる地域によって金額に差が設けられています。

さらに、高齢者世帯や子どものいる世帯など、それぞれの状況に応じた基準が設定されていることも特徴です。

このように、生活扶助は世帯ごとの事情を踏まえて支給額が決められる制度となっています。

6. 単身高齢者が多い背景には「収入」と「支出」の課題がある

本記事では、生活保護受給世帯に占める単身高齢者の割合やその背景を確認するとともに、シニア世帯の家計収支の実態、生活保護の受給要件や支援内容について解説しました。

生活保護は誰でも利用できる制度ではなく、資産の活用や就労能力の活用、他制度の利用などを踏まえたうえで、なお生活が困難な場合に支給されます。

生活保護を正しく理解するためには、制度の仕組みだけでなく、高齢者世帯を取り巻く家計の現状についてもあわせて知ることが大切だといえるでしょう。

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参考資料

中本 智恵