2026年6月を迎え、今年度の年金額や住民税の決定通知書が手元に届く時期となりました。

物価高が家計を圧迫するなか、シニア世代の生活防衛に直結するのが、ベースとなる老齢年金とは別に国や自治体が用意している「公的給付」です。

しかし、これらの支援策は条件を満たしていても自動的に振り込まれるわけではありません。所定の窓口へ自ら足を運び、期限内に手続きを行う必要があります。

本記事では、60歳以上の方が対象になりやすい5つの上乗せ給付金について、年金事務所とハローワークの管轄別に受給条件を整理します。あわせて、パートなど短時間労働者の手取りに直結する「社会保険の適用拡大」の最新動向を解説します。

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1. 公的給付の基本原則:申請しなければ受給できない制度とは

公的年金制度は、老齢・障害・遺族年金を通じて生活を支える基盤となっています。

しかし、これらの年金は支給要件を満たしても自動的に支給されるわけではありません。受給するためには、所定の「年金請求書」を提出し、請求手続きを完了させる必要があります。

同様に、国や地方自治体が提供する多くの手当、給付金、補助金なども、受給には申請手続きが不可欠です。

申請期限の遵守や必要書類の提出といった規定を守らない場合、給付額が減額されたり、受給資格を失ったりする可能性があります。

公的支援制度を確実に利用するためには、自身が対象となる制度の内容を正確に把握し、定められた手続きを着実に進めることが重要です。

2. 老齢年金に上乗せで受給できる2つの制度

老齢年金を受給している方が特定の要件を満たすと、基本の年金額に加えて支給される2つの制度について解説します。

2.1 1. 加給年金:年金の家族手当

加給年金は、しばしば「年金の扶養手当」や「家族手当」に例えられる制度です。

老齢厚生年金の受給者が、特定の要件を満たす年下の配偶者や子を扶養している場合に、年金額が加算されます。

加給年金の支給要件

  • 厚生年金の被保険者期間が20年(※)以上ある方:65歳に到達した時点(または定額部分の支給開始年齢に達した時点)
  • 65歳到達後(または定額部分の支給開始年齢到達後)に被保険者期間が20年(※)以上となった方:在職定時改定、退職改定、または70歳に到達した時点

(※)または、共済組合などの加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15年から19年

上記のいずれかの時点で、「65歳未満の配偶者」または「18歳に達する年度の末日までの子、もしくは1級・2級の障害状態にある20歳未満の子」がいる場合に、年金が加算支給されます。

ただし、対象の配偶者が被保険者期間20年以上の老齢厚生年金や退職共済年金を受給する権利を持つ場合、あるいは障害年金などを受給している際には、配偶者加給年金額は支給停止となります。

2025年度における加給年金の支給額

加給年金の加給年金額2/8

加給年金の加給年金額

出所:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

2025年度における加給年金の年額は、対象者に応じて以下の通りです。

  • 配偶者:23万9300円
  • 1人目・2人目の子:各23万9300円
  • 3人目以降の子:各7万9800円

また、老齢厚生年金受給者の生年月日に応じて、配偶者加給年金額には3万5400円から17万6600円の特別加算が上乗せされます。

振替加算とは

加給年金の対象である配偶者が65歳に達すると、加給年金の支給は終了します。しかし、その配偶者が老齢基礎年金を受給しており、かつ一定の要件を満たす場合には、その配偶者の老齢基礎年金に「振替加算」が行われます。

2.2 2. 老齢年金生活者支援給付金

年金生活者支援給付金は、基礎年金の受給者が特定の所得要件を満たした場合に支給される制度です。この給付金には「老齢」「障害」「遺族」の3種類があり、それぞれに支給要件が定められています。

本項では、このうち「老齢年金生活者支援給付金」について詳述します。

老齢年金生活者支援給付金の支給要件

年金生活者支援給付金制度について3/8

年金生活者支援給付金制度について

出所:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

  • 65歳以上で老齢基礎年金を受給していること
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
  • 前年の公的年金などの収入金額(※1)とその他の所得の合計額が、昭和31年4月2日以降生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下であること(※2)

※1 障害年金・遺族年金などの非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以降に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

老齢年金生活者支援給付金の給付基準額

老齢年金生活者支援給付金の給付基準額4/8

老齢年金生活者支援給付金の給付基準額

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

2026年度の老齢年金生活者支援給付金における給付基準額は月額5620円であり、前年度から3.2%の増額となっています。

実際の給付額は、この基準額を基に、個々の保険料納付状況に応じて算出されます(後述の①と②の合計)。

老齢年金生活者支援給付金の給付額の計算式

  • ①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5620円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
  • ②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1551円× 保険料免除期間 / 被保険者月数480月

例えば、国民年金保険料を40年間すべて納付したケースでは、2026年度の給付額は月額5620円(年額7万7440円)となります。ただし、昭和16年4月1日以前に生まれた方は計算方法が異なります。

保険料免除期間に基づく計算に用いる金額は、毎年度行われる老齢基礎年金額の改定に連動して変動します。

3. 就労する60歳以上が対象となる雇用保険の3つの給付金

次に、就労を継続する60歳以上の方を対象とした、雇用保険に関連する給付金や手当について解説します。

高齢者の就労支援制度は整備が進んでいますが、60歳を境に平均給与が減少する傾向が見られます。また、再就職や雇用の継続が困難になるケースも少なくありません。

このような状況を支援するため、雇用保険には60歳以上の方が活用できる3種類の手当・給付金が設けられています。

※国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」によると、年齢階層別の平均給与は50歳代後半で男性735万円・女性356万円ですが、60歳代前半では男性604万円・女性294万円、60歳代後半では男性472万円・女性240万円となっています。

3.1 1. 再就職手当(65歳未満対象)

再就職手当は、失業後の早期の再就職を促すための制度です。失業状態から再就職または事業開始までの期間が短いほど、給付額が大きくなる仕組みになっています。

再就職手当の支給要件

  • 対象者:基本手当の受給資格を持つ雇用保険受給資格者
  • 支給要件:基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある状態で、雇用保険の被保険者として再就職するか、または事業主として被保険者を雇用するなど、一定の要件を満たした場合に支給されます。

再就職手当の給付率

  • 給付額:就職日の前日時点における基本手当の支給残日数に応じて、以下の給付率で計算されます(1円未満は切り捨て)。
    • 支給残日数が所定給付日数の3分の1以上の場合:支給残日数の60%
    • 支給残日数が所定給付日数の3分の2以上の場合:支給残日数の70%

再就職手当の額5/8

再就職手当の額

出所:厚生労働省「再就職手当のご案内」

また、再就職手当を受給後、同じ事業所で6カ月以上雇用され、その間の賃金が離職前の賃金を下回る場合には、「就業促進定着手当」の支給対象となる可能性があります。

3.2 2. 高年齢雇用継続給付(60歳以上65歳未満対象)

高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の被保険者が、60歳時点と比較して賃金が低下した状態で雇用を継続する場合に支給される給付金です。

高年齢雇用継続給付の支給要件

  • 対象者:60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者で、被保険者期間が5年以上ある方
  • 支給条件:各月に支払われる賃金が、60歳到達時の賃金の75%未満に低下した状態で就労を継続していること

高年齢雇用継続給付の支給率

  • 支給額:各月の賃金の最大10%(※)に相当する額が支給されます。
    ※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は15%

【早見表】高年齢雇用継続給付(2025年4月1日以降)6/8

【早見表】高年齢雇用継続給付

出所:厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」

注意点として、老齢厚生年金を受給しながらこの給付金を受け取る場合、在職老齢年金制度による支給停止に加えて、最大で標準報酬月額の4%(※)相当額が年金から支給停止される調整が行われます。
※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は6%

3.3 3. 高年齢求職者給付金(65歳以上対象)

高年齢求職者給付金は、65歳以上の雇用保険被保険者が失業した場合に支給される一時金です。

高年齢求職者給付金の支給要件

  • 対象者:失業した高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)
  • 支給要件:以下の要件をすべて満たす必要があります。
    1. 離職日以前1年間に、被保険者期間が通算6カ月以上あること。
    2. 失業の状態にあること。これは、就職の意思と能力があり、求職活動を行っているにもかかわらず職業に就けない状態を指します。

高年齢求職者給付金の給付金額

  • 支給額
    • 被保険者であった期間が1年未満:30日分の基本手当相当額
    • 被保険者であった期間が1年以上:50日分の基本手当相当額

この給付金は、65歳未満の基本手当(いわゆる失業手当)が原則として4週間に1度支給されるのとは異なり、一括で支給される点が特徴です。

4. 2025年改正法による社会保険の適用拡大とその影響

2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」により、パートタイマーなど短時間労働者の社会保険加入要件が拡大されることになりました。

この改正は、いわゆる「106万円の壁」の撤廃に向けた重要な一歩となります。

4.1 短時間労働者における社会保険の加入要件見直し

2025年6月時点において、短時間労働者が社会保険に加入するためには、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 2カ月を超える雇用の見込みがある
  3. 学生ではない
  4. 所定内賃金が月額8万8000円以上(←いわゆる「106万円の壁」に関連)
  5. 従業員数51人以上の企業で働いている

今回の法改正では、このうち賃金要件(4)と企業規模要件(5)の撤廃が決定されました。これにより、全国の最低賃金の動向を考慮しつつ、3年以内に「106万円の壁」が廃止される見通しです。

さらに、企業規模要件は10年かけて段階的に緩和され、将来的には企業の規模にかかわらず社会保険への加入が適用されることになります。

5. 退職や再就職の節目は要チェック。制度変更の波を乗りこなし、もらい損ねを防ぐ

60歳以上の方が対象となる公的給付には、老齢年金に上乗せされる制度と、就労に関連する雇用保険からの給付が存在します。

これらの給付制度の多くは申請主義を採用しており、制度内容を把握していなければ受給機会を逸する可能性があります。特に加給年金や年金生活者支援給付金は、支給要件を満たしていても申請漏れが起こりやすいため注意が求められます。

加えて、社会保険の適用拡大は、短時間労働者の働き方にも影響を及ぼします。加入対象となることで、短期的な手取り額や将来の年金受給額に変化が生じます。

年度の変わり目は、自身の状況と公的制度を照らし合わせる良い機会です。まずは自身が対象となる給付制度を確認し、必要な申請手続きを進めることが重要です。

その上で、社会保険の適用拡大による影響も考慮し、収入と労働時間のバランスを再検討することが求められます。早期の情報収集と対応が、将来の経済的な安定につながります。

※当記事は再編集記事です。

参考資料