お盆休みの帰省や家族との集まり、エアコンのフル稼働による電気代など、夏は何かと出費が増えやすい季節です。

そんななか、8月14日(金)は偶数月の「年金支給日」です(通常は15日ですが、2026年8月15日は土曜日のため、前営業日にあたる14日に支給されます)。

2026年度(令和8年度)の公的年金は4年連続の増額となり、国民年金(老齢基礎年金)の満額は月額7万608円、厚生年金の標準的な夫婦モデル額は月額23万7279円となりました。一方で、物価上昇が続くなか、「年金は増えたけれど生活は楽になったと感じにくい」という声も少なくありません。

その背景には、年金額の改定に影響する「マクロ経済スライド」があります。年金額は毎年見直されますが、増額率が物価上昇率を下回る場合には、実際に購入できるモノやサービスの量、いわゆる「実質的な価値」は目減りする可能性があります。

本記事では、お盆前の年金支給日にあわせて、日本の公的年金制度の基本的な仕組みや2026年度の年金改定のポイントを整理するとともに、「年金は増えたのになぜ生活が楽になったと感じにくいのか」という理由について分かりやすく解説します。

筒井 亮鳳

ファイナンシャルアドバイザーとして、日々多くの方の資産形成や退職後のお金の相談を受けていますが、「年金がいくら増えるか」だけでなく、「増えた分が本当に生活を楽にしてくれるのか」まで踏み込んで考える方はまだ少ないと感じています。年金額は毎年の改定だけでなく、物価の動き、そしてご自身の加入履歴によっても大きく変わるものです。この記事のデータを、ご自身の受給見込みを確認するきっかけにしていただければと思います。

1. 2026年度「年金額改定」この記事の3つのポイント

  •  2026年度の年金額は4年度連続で増額。国民年金の満額は月額7万608円、厚生年金のモデル額(夫婦2人分)は月額23万7279円
  •  年金額が増えても、物価上昇率を下回れば実質的な生活水準の改善にはつながらない
  •  受給額は年齢・男女で差があり、厚生年金は男性16万9967円・女性11万1413円

2. 【基本を整理】日本の公的年金は「国民年金と厚生年金」の2つで成り立つ

公的年金制度は、一般的に「2階建て構造」と呼ばれています。

すべての人に共通する1階部分が「国民年金(基礎年金)」、会社員や公務員などが上乗せして加入する2階部分が「厚生年金」です。

厚生年金と国民年金の仕組み1/12

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

2.1 1階部分にあたる国民年金

  • 加入対象者:原則として日本に住む20歳以上から60歳未満の全員
  • 年金保険料:全員一律、ただし年度ごとに改定あり(2026年度月額:1万7920円)
  • 受給額:保険料を40年間欠かさず納付すれば満額(2026年度月額:7万608円)

2.2 2階部分にあたる厚生年金

  • 加入対象者:会社員や公務員、またパートなどで特定適用事業所(※1)に働き一定要件を満たした人
  • 年金保険料:収入に応じて(上限あり)変わる(※2)
  • 受給額:加入期間や納めた保険料により個人差あり

※1 特定適用事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※2 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される

国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満の人が原則として加入し、一律の保険料を納める制度です。

一方、厚生年金は会社員や公務員などが国民年金に上乗せして加入し、収入に応じた保険料を負担します。

3. 2026年度の年金額は4年度連続で増額

厚生労働省によると、2026年度の年金額の例は次のとおりです。

2026年度(令和8年度)の年金額の例2/12

2026年度(令和8年度)の年金額の例

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額)):7万608円(1人分※1)
  • 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分※2)

※1昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円(対前年度比+1300円)です。このように年齢により受給額が異なります。
※2男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。

厚生年金の月額23万7279円は、1人分ではなく夫婦2人分の金額です。

具体的には、平均標準報酬が賞与を含む月額換算で45万5000円の男性が40年間就業した場合に受け取る老齢厚生年金と、夫婦2人分の老齢基礎年金の満額を合計したモデルです。

現在は共働き世帯や単身世帯、自営業者など、働き方や世帯構成が多様化しています。

そのため、この金額はあくまで一例であり、実際に受け取る年金額は一人ひとりの加入履歴によって異なります。

2026年度の改定で、年金額は4年度連続の増額となり、国民年金の満額も引き上げられています。

4. 2026年度の年金額が増えても「実質的な価値」が増えるとは限らない

「4年連続で年金が増額された」と聞くと朗報に思えますが、受給者の実感と乖離があるのはなぜでしょうか。その理由は「マクロ経済スライド」による調整と物価高のスピードにあります。

  • 前年の物価上昇率: +3.2%
  • 基礎年金の改定率: +1.9%
  • 厚生年金(報酬比例部分)の改定率: +2.0%

現役世代の負担軽減と制度の持続可能性を保つため、物価や賃金の伸びから調整を行う「マクロ経済スライド」が発動された結果、年金の伸び率は物価の上昇率(3.2%)を下回る設定となっています。

特に8月は、酷暑によるエアコン代(電気代)の上昇や、お盆の帰省・食品価格の値上がりが直撃する時期です。額面の振込額がいくら増えていたとしても、実際の「買いもの力(実質的な価値)」は目減りしており、生活面でのゆとりを感じにくい状況が続いています。

8月14日(金)の支給日は、夏のイベントや秋以降の生活設計を見直す絶好のタイミングです。

額面の数字に惑わされず、物価変動の影響を踏まえた実質的な収支計画を立てることが、今後の安心したセカンドライフにつながります。「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」などを活用し、ご自身の受給予定額を最新の条件でチェックしてみましょう。

筒井 亮鳳

制度の仕組みや今年度の改定内容を押さえたところで、次のページでは、実際に年金を受給しているシニア世代が、年齢や男女でどれくらいの差があるのか、具体的なデータを見ていきます。