2026年6月4日までに個人向け国債と6月の地方債、共同発行市場公募地方債の利率が決定しました。

日本の長期金利(10年物国債利回り)は、日銀による金融政策の正常化(金利のある世界への移行)を受けて、2024年5月に約11年ぶりとなる1%台に乗せて以降、上昇が続いています。

2026年5月18日には一時2.8%を付け、約29年半ぶりの高水準となりました。

基準金利の引き上げに伴い、債券の利回り妙味がかつてないほど高まっています。これを受けて、国債や地方債は有力な資産運用先として、いま大きな脚光を浴びています。

本記事では、利回りの変化をダイレクトに把握できるよう、地方債の標準的な発行パターンである「国債カーブ+18bp(0.18%)」の上乗せ金利で決定された、個人向けの主要銘柄をピックアップしました。

変則的な銘柄を排除し、比較が容易な「標準モデル」に絞り込むことで、5月から6月にかけた発行条件の具体的な推移と、その最新トレンドを紐解きます。

今月の債券市場における、最新の発行条件の動向を詳しく見ていきましょう。

1. 10年物地方債は共同債で2.8%台前半に、5月から最大

財務省および各自治体から発表された10年物債券の条件は以下の通りです。

6月の発行条件1/2

6月の公共債発行条件

出所:各種資料より筆者作成

半年ごとに適用利率が見直される変動型である個人向け国債は、初回の利回りが1.74%で条件決定しました。

一方、地方債の利回りは、日本の金利の基準である「国債の金利」に、一定の「上乗せ金利(スプレッド)」をプラスして決める仕組み(スプレッドプライシング)になっています。

ベースとなる国債の金利は、満期までの期間(数カ月のズレなど)によって細かく変動しますが、そこにプラスされる「上乗せ幅」は東京都や大阪府などを除いて、どの自治体も基本的に同じです。そのため、表面上の利回りが違って見えても、実質的な条件は横並びで公平に決定されています。

6月の標準モデルの地方債は2.729~2.782%で決まり、個人向けの販売があった個別銘柄では埼玉県債、神奈川県債がそれぞれ2.764%、2.729%となりました。

なお、神奈川県債は償還が2036年3月19日であり、厳密には10年にやや満たないためその分利回りも低くなっています。ただ、実質的な上乗せ幅(国債カーブ対比+18bp)は同じです。

地方債は本来、プロの投資家である「機関投資家」が中心のマーケットですが、実はその一部は個人投資家にも販売されるようになっています。

6月分の新発債として3日条件決定の埼玉県債や神奈川県債が個人でも購入できましたが、一部のネット証券では発売即完売という人気ぶりでした。

4日には、共同発行市場公募地方債(共同債)が2.832%で条件決定し、一部は個人投資家へも販売されています。

共同債は、複数自治体がコスト削減と安定調達のため、地方財政法に基づき2003年から共同で発行する地方債です。最大の特徴は、資金調達の有無に関わらず全参加団体が「連帯債務」を負う強固な支払い体制にあります。

さらに災害時等の支払い遅滞を防ぐ専用ファンドも備えており、安全性への配慮が徹底されています。毎月発行されており、個人にとっても信頼性の高い投資対象といえるでしょう。 

2. 【5月債の振り返り】10年債の利回りを整理

5月は長期金利の上昇を受けて個人向け国債、地方債ともに4月債対比で利回りが上昇しました。

個人向け国債は4月債の1.55%→1.67%と、0.12%高くなりました。

一方、地方債の利回りは全体で0.15%前後の上昇幅となりました。

個別銘柄の最低ラインでみると、4月の2.560%から5月は2.707%(静岡県債 )へと0.147%アップしており、共同債(2.612%→2.767%)は0.155%高くなった計算です。

なお、標準モデルのスプレッドは国債カーブ+18bpで、横ばいでした。

5月の発行条件2/2

5月債の発行条件

出所:各種資料より筆者作成

5月から6月にかけての変化をみると、個人向け国債では1.67%→1.74%と、0.07%引き上げられました。

地方債は、個人向けの販売があった銘柄では、5月の千葉県債(2036年5月23日償還)の2.727%に対して、同じ条件決定方式かつ発行された月と同じ月に満期を迎えるタイプである6月の埼玉県債(2036年6月25日償還)は2.764%と、0.037%利回りが高くなっています。

同様に、3月償還組は、5月の静岡県債の2.707%に対して、6月の神奈川県債は2.729%と、0.022%の差となっています。

いずれもベースとなる国債利回りからの上乗せはカーブ+18bpと同じなため、単純に5月から6月にかけての金利上昇が反映された格好です。

3. 地方債 vs 国債:迷ったときの選び方ガイド

債券投資には、「信用力が高いほど利回りは低くなり、信用力が下がるほど利回りは高くなる」という大原則があります。そのため、国に比べるとどうしても信用力が一段下がる地方債のほうが、国債よりも高い利回りに設定されています。

しかし、目先の「利回りの良さ」だけで安易に地方債へ飛びつくのは禁物です。一見するとよく似ている両者ですが、信用の度合いだけでなく、「ピンチのときの換金ルール(流動性)」や「金利タイプ(固定か変動か)」という決定的な違いがあるからです。

投資の世界ではトップクラスに安全と言われる債券ですが、実は銘柄ごとに「守りの堅さ」には微妙なニュアンスの差があります。特に国債と地方債を比較する際は、次の2つのポイントを必ず頭に入れておきましょう。

3.1  「信用力」の差:国がバックか、自治体か

どちらも極めて安全性の高い資産ですが、厳密には以下のような「格付け(ランク)」の差があります。

日本国債(最高峰の安心感)

日本という国そのものが発行しているため、国内でこれ以上ないほど信用力が高い「安全資産」の筆頭です。

地方債(高水準だが、一律ではない)

日本の制度上、破綻するリスクは極めて低く抑えられています。ただし、自治体によって「財政の健康状態(台所事情)」は異なるため、国債に比べるとわずかながら地域ごとの格差が存在します。

3.2  「中途換金」の差:ここが一番のチェックポイント!

「急にお金が必要になって、途中で解約したくなったとき」のルールが180度異なります。

個人向け国債:「元本割れ」を回避できる親切設計

発行から1年が経過すれば、いつでも国が買ったときと同じ金額(額面)で買い取ってくれます。直近の利息を一部差し引かれはしますが、元本そのものが目減りする心配はありません。

地方債:「時価での売却」になる市場のリスク

満期を待たずに現金化したい場合は、証券会社を通じて市場で他の投資家に売却することになります。売る瞬間の市場価格で取引されるため、その時の金利状況などによっては「買ったときより安い価格」になってしまい、元本を割り込んで損をするリスクがあります。

3.3 賢く使い分けるための判断基準

  • 満期までじっくり持ち続けられるお金→利回りが魅力的な「地方債」
  • 途中で引き出すかもしれないお金→元本がしっかり守られる「個人向け国債」

このように、「そのお金をいつ使う予定なのか」というライフプランに合わせてチョイスすることこそが、債券投資で失敗しないための賢い第一歩です。

4. あなたはどっち派?目的で決める債券選びの「軸」

10年物の債券投資を検討しているものの、個人向け国債と地方債とで迷っているという人は、投資の目的とそれぞれの債券のメリットをしっかり押さえてください。

4.1 個人向け国債:向いているのはこんな人

「これからさらに金利が上がる!」と思うなら 、個人向け国債(変動10年)がいいでしょう。

将来的な金利上昇のチャンスをきっちり掴むなら、こちらが適しています。

世の中の金利水準が上がるにつれて、自分が受け取る利息も自動的に増えていくので、「今の金利のまま固定されてしまうのはもったいない」と感じる方にぴったりの選択肢です。

4.2 地方債:向いているのはこんな人

 「今の高い金利を今のうちにキープしたい!」と思うなら、主要自治体の地方債(共同債など)を検討してください。

魅力的な「今の利回り」を将来までロックすることができます。

地方債は基本的に「固定金利」タイプです。かつての超低金利期には考えられなかった「現在の高水準な利回り」を、満期を迎えるまでずっと維持できます。今後もし世の中の金利が下がったとしても、高い利息を受け取り続けられる安心感があります。

4.3 時期をずらした「組み合わせ戦略」も有効

債券投資は、「一度購入したらそれでおしまい」にする必要はありません。

たとえば、「当面は金利の上昇に備えて変動型の国債を持っておき、数年後に『そろそろ金利がピークだ』と判断したタイミングで、地方債(固定金利)に買い換えてガッチリ固定する」といったように、時期をずらしてパズルを組み合わせるような投資スタイルも非常に賢い選択です。

4.4 あえて買わずに「徹底的に様子見する」という選択肢も

「金利の天井はまだまだ先にある」と読むのであれば、焦って飛びつかずに6月は購入を見送って静観するのも立派な作戦です。

7月以降になって、さらに条件が良くなった地方債や、より魅力的な上乗せ金利が期待できる社債が市場に登場するのを「虎視眈々と待つ」というのも、十分に合理的な戦略と言えます。

5. まとめ

2026年6月の国債・地方債は、長期金利の上昇を受けて5月よりさらに利回りが引き上げられました。

個人向け国債(変動10年)は1.74%、共同発行地方債は2.832%と、魅力的な水準に達しています。

投資先を選ぶポイントは「金利タイプ」と「中途換金」の違いです。

  • 個人向け国債:半年ごとに利率が見直される変動金利。発行後1年経てば元本割れなしで換金できるため、今後の金利上昇への備えや安心感を重視する人向きです
  • 地方債:今の高い利回りを満期まで維持できる固定金利。途中で売却すると元本割れのリスクがありますが、満期までじっくり運用したい人に最適です

「まずは変動国債を持ち、金利のピークで固定地方債へ切り替える」といった組み合わせ戦略や、7月以降の条件好転を待つ様子見も賢い選択肢です。

ライフプランや金利予測に合わせて、最適な運用先を選びましょう。

参考資料

【免責事項】本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただけますようお願いいたします。

高原 祥子