2026年4月28日に開催された財政制度等審議会の分科会において、高齢者の医療費負担について原則3割への引き上げに向けた「制度改革の工程表を2026年度内に作成すべき」との提言がなされました。

現在、75歳以上の人が加入する「後期高齢者医療制度」の自己負担割合は原則1割、所得によって2割、3割となっていますが、収入の多い人は「医療費が3割負担になるのはどのくらいの収入からなのか」という点で気になる人も多いでしょう。

本記事では、後期高齢者医療制度の加入者について年金収入いくらで3割負担になるかを解説します。後期高齢者医療制度の仕組みや自己負担割合の収入基準、申請により3割負担の対象外となるケースも紹介します。

1. 後期高齢者医療制度、75歳になったら自動で切り替わる!障害認定は65歳以上が対象

「後期高齢者医療制度」は、75歳以上の高齢者を対象とした公的医療保険制度です。

同制度が設けられる前は、高齢者も現役世代と同じく国民健康保険や勤務先の健康保険組合(または協会けんぽ)に加入するのが一般的でしたが、急速に進む高齢化とともに医療費が膨らみ、現役世代と高齢者が同じ制度に混在する状態では財政の安定が難しくなっていました。そのため、高齢者を対象とした独立した医療制度として創設されたのです。

日本国内に住民票を持つ人は、75歳の誕生日を迎えた時点で自動的にこの制度へ移行します。手続きは不要で、居住地の市区町村から「後期高齢者医療資格確認書」が郵送で届く仕組みです。

なお、65歳以上で一定の障害状態にある方は、本人の申請を経ることで75歳未満であっても加入できる特例(障害認定による特例加入)が設けられています。

2. 年金収入でも「現役並み所得者」として3割自己負担になるのはどんな人?

後期高齢者医療制度では、75歳以上の被保険者(または65歳以上の所定の障害者)の医療費の自己負担割合は、所得などに応じて3段階に設定されています。後期高齢者医療制度の被保険者が同一世帯に複数いる場合、自己負担割合は家族全員に適用されます。

  • 現役並み所得者:3割
  • 一定以上所得者:2割
  • 一般所得者・住民税非課税者:1割

各所得者の区分は、「住民税課税所得」と同一世帯の被保険者の「年金収入+その他の合計所得金額」に応じて次の通りです。

後期高齢者医療制度の所得者の区分1/4

後期高齢者医療制度の所得者の区分

筆者作成

2.1 住民税課税所得とは

自己負担割合の判定で用いる「住民税課税所得」は、収入から各種控除を差し引いたあとの所得です。

年金受給者は、公的年金収入から「公的年金等控除(65歳以上で年金収入330万円以下の場合は110万円)」を引いた額が雑所得となります。さらに、住民税の基礎控除(43万円)や社会保険料控除、人的控除(配偶者控除など)、医療費控除などを差し引いて計算します。

ここまで、後期高齢者医療制度の概要と自己負担割合が決まる所得基準について解説しました。次章では、自己負担割合の確認方法と3割負担の対象外となるケース、年金生活者で3割負担になる人の割合について解説します。

3. 自己負担割合の確認方法と注意点

後期高齢者医療制度の自己負担割合は、市区町村の後期高齢者医療制度担当課から毎年送付される「後期高齢者医療資格確認書」に記載されています。負担割合は毎年8月1日に前年の所得をもとに更新されます。

資格確認書のイメージ3/4

令和7年8月1日から令和8年7月31日までに交付する資格確認書

出所:東京都後期高齢者医療広域連合「資格確認書」

4. 3割自己負担の対象外になるのはどんな時?

住民税課税所得145万円以上の現役並み所得者は原則自己負担割合が3割ですが、世帯内の被保険者の収入などが以下に該当する場合、申請により3割負担の対象外となります。

  • 被保険者が1人:収入が383万円未満
  • 被保険者が2人以上:被保険者の収入合計が520万円未満
  • 被保険者が1人・同一世帯に70~74歳の人がいる:該当者の収入合計が520万円未満

市区町村の後期高齢者医療制度の担当窓口に「基準収入額適用申請書」を提出することによって、自己負担割合が1割または2割になります。市区町村で収入金額の確認ができた場合、申請することなく前年年収に基づき1割または2割負担となります。

5. 年金収入の「現役並み所得者」3割自己負担になる人→約130万人(被保険者の約7%)

厚生労働省の資料によると、後期高齢者医療制度の所得者区分別の人数・割合は次の通りです。3割負担の現役並み所得者は約130万人で、被保険者の約7%を占めています。

所得者区分別の人数・割合4/4

所得者区分別の人数・割合

筆者作成

年金収入のみで現役並み所得者(3割)に該当する人の人数については資料はないため、年金受給額の分布から3割負担になる人がどのくらいいるか推定します。

現役並み所得者(3割)に該当する年収は、単身世帯で約383万円以上(月額で約32万円)が目安です。厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、月額30万円以上の年金を受け取っている人は2万人以下です。

このことから、年金収入のみで生活している場合、医療費の自己負担は1割または2割に収まるケースが大半であると言えます。

6. おわりに

後期高齢者医療制度の窓口負担割合は、住民税課税所得や世帯の収入をもとに毎年8月に更新されます。年金収入のみで3割負担(現役並み所得者)に該当するケースは少なく、多くの方は1割または2割の負担に収まります。

一方で、高齢者の医療制度をめぐる状況は変化しつつあります。2026年8月から高額療養費の自己負担上限の引き上げも予定されており、財政制度等審議会が原則3割への移行に向けた工程表の作成を提言するなど、今後の制度改正に注意しましょう。

参考資料

西岡 秀泰