4. 銅価格に依存する収益構造からの脱却

株価の動きや資本政策の裏で、JX金属の事業そのものはどのような状況にあるのでしょうか。

実は、来期の営業利益予想1,900億円のうち、過半数を占める1,240億円は「基礎材料」、つまり「銅」を販売する事業から生み出されています。

半導体や情報通信の先端素材メーカーというイメージが強い同社ですが、利益の構成から見ると、依然として「銅の価格」に業績が大きく左右される構造を持っています。

経営陣もこの構造を課題と認識しており、事業ポートフォリオの変革を急いでいます。その象徴的な動きが、海外の「カセロネス銅鉱山」の権益売却です。これまで100%保有していた権益を30%に減らし、今期はさらに25%へと段階的に引き下げています。

この権益譲渡で得られる約340億円の資金は、次なる成長事業へと振り向けられます。具体的には、約230億円を投じて「ひたちなか新工場」での半導体用ターゲット材の増産設備に投資する計画です。

ポートフォリオ変革の推進4/4

ポートフォリオ変革の推進

出所:JX金属株式会社「2026年3月期 決算説明会資料」(2026年5月11日)

半導体用ターゲット材とは、半導体の製造工程(電子回路の形成)に欠かせない高純度の金属材料であり、JX金属はここで世界シェア約65%(世界No.1)を握っています。

また、スマートフォンなどに使われる曲がる基板向けの「圧延銅箔」でも世界シェア約78%を誇るなど、圧倒的な技術力を持っています。

泉田氏は、この事業構造の転換を高く評価しています。

「単に銅の権益持って銅売りますよっていうビジネスから、付加価値をつけてそれをユーザーに提供しますよっていうビジネスに変えてるっていう、今そういう最中だね」

銅の価格という外部要因に振り回されるビジネスから、自社の技術力で価格決定権を持てる「付加価値の高いビジネス」へのシフト。

これが成功すれば、将来の収益が読みやすくなり、株式市場からもより高い評価(バリュエーション)を得られるようになると泉田氏は指摘します。

5. まとめ:成長株投資は「金利」から目を離さない

JX金属の株価急落は、決して企業の競争力が失われたからではありません。圧倒的な世界シェアを持つ製品群を有し、銅価格依存からの脱却という正しい戦略を描いています。

しかし、株式市場は「企業の業績」だけでなく「金利の動向」というマクロ環境に強く影響を受けます。特に将来の成長が期待される銘柄ほど、その波をまともに受けることになります。泉田氏は最後に、投資家に向けて重要なメッセージを送りました。

「半導体だから下がってるとかAIだから下がってるっていう風にがっかりしないで、しっかり金利の推移を見ていく方が投資家としては大事かなと思う」

個別企業の決算やニュースだけでなく、10年国債金利などのマクロ指標にも目を配ることが、株式投資においていかに重要か。JX金属の事例は、その教訓を私たちに教えてくれています。

参考資料