5月も下旬に入り、日中は汗ばむ陽気の日も増えてきました。

新年度が始まってから約2カ月が経ち、生活のリズムが整ってきた方も多いのではないでしょうか。

このような時期に、ご自身の年金受給額や家計の状況を改めて確認してみるのもよいかもしれません。

公的年金の金額は一人ひとり異なり、同じ年代であっても受給額には差があります。

そうした中で、所得が一定基準を下回る方を対象とした「年金生活者支援給付金」という上乗せ制度があります。

この制度は、対象者であっても申請をしなければ給付金を受け取ることができないため、注意が必要です。

この記事では、年金生活者支援給付金の支給額の目安や対象となる条件、申請の流れについて詳しく解説します。

あわせて、働きながら年金を受け取る方に関わる在職老齢年金制度の見直しについてもご紹介します。

1. 年金の受給額は人それぞれ?まずは基本の平均額を確認

厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、公的年金の平均的な月額は、国民年金(老齢基礎年金)が約5万円、厚生年金(国民年金部分を含む)が約15万円となっています。

厚生年金の平均月額(男女全体・男女計)2/5

厚生年金の平均月額(男女全体・男女計)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

しかし、グラフが示すように、厚生年金を月に30万円以上受給している方がいる一方で、国民年金と厚生年金を合わせても月額3万円に満たない方もおり、受給額は非常に幅広いです。

年金収入とそれ以外の所得を合計しても、所得が一定の基準を下回る場合には、「年金生活者支援給付金」の支給対象になる可能性があります。

2. 年金生活者支援給付金、2025年から2026年の支給額はいくら?

年金生活者支援給付金は、年金やその他の所得が一定基準に満たない年金受給者を支援する目的で、2019年から始まった制度です。

この給付金は、2カ月に1回、公的年金に上乗せされる形で支給されます。

受け取っている年金の種類に応じて、以下の3つの年金生活者支援給付金があり、それぞれに支給の要件や金額(基準額)が定められています。

  • 老齢年金生活者支援給付金
  • 障害年金生活者支援給付金
  • 遺族年金生活者支援給付金

2.1 【2026年度】年金生活者支援給付金の具体的な金額

2026年度における年金生活者支援給付金の額は、前の年度から3.2%引き上げられることになりました。

来月6月15日に支給される「4月分と5月分」より、2026年度の基準額が適用される仕組みです。

【2026年度】

  • 老齢年金生活者支援給付基準額(月額):5620円
  • 障害年金生活者支援給付金(月額):1級7025円・2級5620円
  • 遺族年金生活者支援給付金(月額):5620円

老齢年金生活者支援給付金の場合、この基準額をもとに、保険料を納めた期間などに応じて実際の支給額が計算される仕組みです。

これらはすべて月額の金額であり、支給日には2カ月分がまとめて年金に上乗せされます。

もし上記の金額を満額受給できる場合、1回の支給で約1万1000円、年間では約6万7000円を受け取れる計算になります。

ちなみに、厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2025年3月時点での平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金が4146円、障害年金生活者支援給付金が5727円、遺族年金生活者支援給付金が5228円でした。

※2025年3月において認定されている平均給付金額です。

3. 年金生活者支援給付金の対象者は?支給要件を詳しく解説

年金生活者支援給付金が支給されるための要件について見ていきましょう。

「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」の対象となるのは、それぞれ障害基礎年金または遺族基礎年金を受け取っており、前年の所得が479万4000円以下の方です。

この所得の判定には、障害年金や遺族年金といった非課税の収入は含まれません。

また、扶養している親族の人数などに応じて、所得基準額は引き上げられます。

「老齢年金生活者支援給付金」に関しては、ご本人の所得以外にもいくつかの要件が加わります。

3.1 「老齢年金生活者支援給付金」の支給対象となる条件

「老齢年金生活者支援給付金」の支給対象となる条件4/5

年金生活者支援給付金制度について

出所:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

老齢年金生活者支援給付金を受け取るためには、以下の支給要件をすべて満たす必要があります。

  • 65歳以上で老齢基礎年金を受給していること
  • 同じ世帯の全員が市町村民税非課税であること
  • 前年の公的年金などの収入金額と、給与所得や利子所得といったその他の所得の合計額が、昭和31年4月2日以降に生まれた方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下であること

老齢年金生活者支援給付金の所得判定においても、障害年金や遺族年金などの非課税収入は計算に含まれません。

さらに、所得が基準額をわずかに超えることで給付の対象外となる方との公平性を保つため、「補足的老齢年金生活者支援給付金」という制度も設けられています。

補足的老齢年金生活者支援給付金について

昭和31年4月2日以降に生まれた方で所得が80万9000円を超え90万9000円以下の場合、また昭和31年4月1日以前に生まれた方で所得が80万6700円を超え90万6700円以下の場合には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されることになります。

この給付金は、所得額が増加するにつれて支給額が減少する仕組みになっています。

4. 申請しないと受け取れない?手続きの流れと「緑の封筒」とは

年金生活者支援給付金は、受け取るために請求手続きが必要です。

支給対象になったとしても、自動的に年金へ上乗せされるわけではない点に注意しましょう。

すでに年金を受給している方で、所得の減少などにより新たに年金生活者支援給付金の対象となった場合、毎年9月1日以降に「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次送付されます。

4.1 毎年9月以降に届く「緑の封筒」が届いた場合の対応

毎年9月以降に届く「緑の封筒」が届いた場合の対応5/5

年金生活者支援給付金の手続き

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」

※すでに年金を受給中の方でも、繰上げ受給を選択している場合は、送付される書類の様式が異なります。

これから65歳になる方には、誕生日の3カ月前に老齢基礎年金の請求書が送られますが、その中に給付金の請求書も同封されています。

同封の請求書に必要事項を記入し、老齢基礎年金の請求書と一緒に提出してください。

4.2 申請手続きは毎年必要なのか

年金生活者支援給付金は、一度請求手続きを行えば、支給要件を満たし続ける限り、2年目以降は手続きなしで継続して受け取ることができます。

継続して支給されるかどうかの判定は前年の所得に基づいて行われ、その結果は毎年10月分(12月支給)から1年間にわたって反映されます。

もし対象外となった場合には、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が送付されます。

また、各年度(4月分から)の支給金額については、毎年6月上旬頃に届く「年金生活者支援給付金 支給金額(改定)通知書」および「年金生活者支援給付金 振込通知書」で確認が可能です。

5. 在職老齢年金制度の見直しによる影響は?制度改正のポイント

2025年6月13日に、年金制度改革関連法が国会で成立しました。

これは、多様化する働き方や生活様式に対応した年金制度を構築することを目的としています。

この法改正には、パートタイム労働者などの社会保険加入対象の拡大(いわゆる「106万円の壁」の撤廃に関連)や、遺族年金の見直し(遺族厚生年金の男女差の解消、子どもの遺族基礎年金受給要件の緩和)など、いくつかの重要な変更点が含まれています。

今回はその中でも、特に働くシニア世代に影響が大きい「在職老齢年金制度の見直し」について見ていきましょう。

5.1 「在職老齢年金制度」の改正内容

在職老齢年金制度とは、60歳以降に老齢厚生年金を受け取りながら就労している場合に、年金額(※)と給与・賞与などの報酬の合計が基準額を上回ると、年金の一部または全額が支給停止になる仕組みのことです。

(※)老齢基礎年金は対象外となり、全額支給されます。

年金が全額支給される基準額「支給停止調整額」の変更点

年金が支給停止となる基準額である「支給停止調整額」は、年度ごとに段階的に見直されてきました。

  • 2022年度:47万円
  • 2023年度:48万円
  • 2024年度:50万円
  • 2025年度:51万円
  • 2026年度:65万円

今回の改正により、2026年4月からはこの基準額が51万円(2025年度)から65万円へと大幅に引き上げられることが決定しました。

厚生労働省の試算によると、この変更によって、新たに約20万人が年金を減額されることなく全額受け取れるようになると見込まれています。

この基準額の引き上げは、年金の減額を懸念して就労を調整していたシニア世代が、より柔軟に働き方を選択できるようになることにつながると期待されます。

6. 上乗せ給付の確認と制度理解で、老後の収入を確保するために

今回は、年金生活者支援給付金について詳しく解説しました。

給付金の支給対象となる方には日本年金機構から案内が送付されますので、その内容に従って請求手続きを進めることが大切です。

請求手続きをしない限り給付金は支給されないため、案内が届いた際には速やかに手続きを行うようにしましょう。

もしご本人が手続きをすることが難しい場合には、代理人が請求することも可能です。

その際は、日本年金機構の窓口へ電話などで問い合わせ、代理請求の手続き方法を確認することをおすすめします。

加えて、在職老齢年金制度の見直しは、働きながら年金を受給する際の条件や金額に影響をおよぼす可能性があります。

制度の変更点を正しく理解しておくことが、将来の生活設計において重要です。

近年、物価の上昇などの影響で、年金だけで生活するのは厳しいと感じる高齢者の方も少なくないようです。

今回取り上げた年金生活者支援給付金のほかにも、高齢者や生活に困窮する方を支える公的な支援制度は存在します。

もし生活に困難を感じる場合は、お住まいの自治体の福祉担当課などに相談してみると、利用できる公的支援について情報を得られるかもしれません。

また、お金に関する不安や悩みについては、FP(ファイナンシャル・プランナー)やIFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)が無料で相談に応じてくれるサービスも多くあります。

新年度が始まったこの時期は、ご自身の年金について見直す良い機会です。

必要な手続きは早めに進めておくとよいでしょう。

確実に給付を受けるための行動が、将来の安心につながります。

※当記事は再編集記事です。

参考資料