一段と暖かさが増し、春の訪れを感じる季節となりました。4月は新年度のスタートであり、年金額や収入状況を見直す方も多い時期です。年金支給のタイミングにあわせて、自分の受給額や制度の内容を確認することが重要になります。

年金は個人差が大きく、同じ年代でも受給額には大きな違いがあります。その中で見落とされやすいのが、「年金生活者支援給付金」のような上乗せ制度です。条件を満たしていても申請をしなければ受け取れないため、注意が必要です。

本記事では、給付額の目安や対象条件、申請方法に加え、在職老齢年金制度の見直しについてもわかりやすく解説します。

1. 年金額には個人差がある|まず押さえたい基本

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、公的年金の平均月額は国民年金(老齢基礎年金)で5万円台、厚生年金(国民年金部分も含む)で15万円台です。

国民年金の平均月額(男女全体・男女計)1/6

国民年金の平均月額(男女全体・男女計)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

厚生年金の平均月額(男女全体・男女計)2/6

厚生年金の平均月額(男女全体・男女計)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

ただしグラフのように、厚生年金を月額30万円以上受け取っている人もいれば、国民年金・厚生年金ともに月額3万円未満となる人まで、幅広い受給額ゾーンにちらばっています。

年金とその他の所得を含めても一定基準以下の所得となる場合、「年金生活者支援給付金」の支給対象となる可能性があります。

2. 支援給付金はいくらもらえる?2025年から2026年の水準

年金生活者支援給付金は、年金収入やその他の所得額が一定基準以下の年金生活者を支援するために、2019年にスタートした制度です。給付金は2カ月に一度、公的年金に上乗せして支給されます。

受給中の年金によって、以下3種類の年金生活者支援給付金があり、それぞれに、支給要件と支給額(基準額)が設定されています。

  • 老齢年金生活者支援給付金
  • 障害年金生活者支援給付金
  • 遺族年金生活者支援給付金

2.1 【2025年→2026年】年金生活者支援給付金の支給金額

2026年度の年金生活者支援給付金の給付金額は、前年度から3.2%引き上げとなりました。

【2026年度】

  • 老齢年金生活者支援給付基準額(月額):5620円
  • 障害年金生活者支援給付金(月額):1級7025円・2級5620円
  • 遺族年金生活者支援給付金(月額):5620円

老齢年金生活者支援給付金については、この基準額に基づき保険料納付済期間等に応じて実際の給付額が計算されます。

上記はいずれも「月額」の金額です。支給日には2カ月分まとめて、年金に上乗せされます。上記の金額通り受給できる場合、1回の支給で約1万1000円、年額にすると約6万7000円受け取れます。

なお、「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2025年3月における平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金4146円、障害年金生活者支援給付金5727円、遺族年金生活者支援給付金5228円です。

※2025年3月において認定されている平均給付金額です。

3. 支給対象の条件を確認|誰が受け取れるのか

年金生活者支援給付金の支給要件について見ていきましょう。

「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」は、それぞれの年金(障害基礎年金もしくは遺族基礎年金)を受給中で、前年の所得が479万4000円以下の人です。

給付金の判定に用いる所得は、障害年金や遺族年金などの非課税収入は含まれません。また、扶養親族などの数に応じて、所得の基準額は上がります。

「老齢年金生活者支援給付金」については、本人の所得以外の要件がいくつか加わります。

3.1 「老齢年金生活者支援給付金」支給対象

老齢年金生活者支援給付金の支給対象となるのは、下記の支給要件をすべて満たす人です。

  • 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税
  • 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得(給与所得や利子所得など)との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は80万6700円以下

老齢年金生活者支援給付金の判定にも、障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。

また「基準額ギリギリで給付対象となる人」との間に不公平感が生じないように、「基準額をわずかに超えて給付対象外となる人」には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

補足的老齢年金生活者支援給付金

昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

所得が増えるにつれて、補足的老齢年金生活者支援給付金の給付額は減ります。

4. 申請しないと受給できない|緑の封筒と手続きの流れ

年金生活者支援給付金を受け取るためには、請求手続きが必要となります。支給対象になったら自然に年金に上乗せされるわけではありません。

すでに年金を受給中の人で、所得が下がり年金生活者支援給付金の対象となった場合は、毎年9月1日以降、順次「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が送付されます)。

4.1 【毎年9月に順次送付】すでに年金受給中の人に「緑の封筒が届いたら」

※すでに年金を受け取っている方の中でも、繰上げ受給をしている場合は書類の様式が異なります。

なお、これから65歳を迎える人には、誕生日の3カ月前に、老齢基礎年金の請求書に同封されて給付金請求書が届きます。同封された給付金請求書に必要事項を記入し、老齢基礎年金の請求書とともに提出しましょう。

4.2 手続きは毎年必要?

年金生活者支援給付金は、一度請求書を提出すれば、支給要件を満たす限り2年目以降の手続き不要で継続受給が可能です。

継続支給の判定結果は前年の所得に基づき、毎年10月分(12月支給分)から1年間反映されます。支給対象外となった場合は「年金生活者支援給付金不該当通知書」が郵送されます。

なお、毎年度(4月分から)の支給金額は、毎年6月上旬に送付される「年金生活者支援給付金 支給金額(改定)通知書」および「年金生活者支援給付金 振込通知書」で確認できます。

5. 制度改正の影響|在職老齢年金の見直しとは

2025年6月13日、国会で年金制度改革関連法が成立しました。多様化する働き方やライフスタイルにフィットする年金制度を目指すものです。

この改正にはパートなどで働く人の社会保険加入対象の拡大(いわゆる「106万円の壁」の撤廃が関連)、遺族年金の見直し(遺族厚生年金の男女差解消、子どもの遺族基礎年金受給の要件緩和)など、注目すべきポイントがいくつかあります。

今回は、その中でも働くシニアへの影響が大きい「在職老齢年金制度の見直し」について見ていきましょう。

5.1 「在職老齢年金制度」の見直し

在職老齢年金とは、60歳以降で老齢厚生年金を受給しながら働いている場合、年金額(※)と報酬(給与・賞与)の合計が基準額を超えると、年金の一部または全額が支給停止となる制度のことです。
(※)老齢基礎年金は対象外となり、全額支給されます。

支給停止調整額(年金が全額支給される基準額)

支給停止調整額は年度ごとに少しずつ見直しがおこなわれてきました。

  • 2022年度:47万円
  • 2023年度:48万円
  • 2024年度:50万円
  • 2025年度:51万円
  • 2026年度:65万円

今回の改正(2026年4月から適用)では、51万円(2025年度金額)から65万円へと大幅に引き上げられることが決まりました。

厚生労働省の試算では、新たに約20万人が年金を全額受給できるようになるとされています。

この引き上げにより、年金の減額を気にして「働き控え」をするシニア世代が、より自由に働き方を選べるようになると考えられるでしょう。

6. 上乗せ給付の確認と制度理解で老後収入の取りこぼしを防ぐ

今回は、年金生活者支援給付金について解説しました。

給付金の支給対象者には案内が届くので、案内に沿って請求手続きをおこないましょう。

請求手続きをおこなわないかぎり、給付金を受け取ることはできないため、案内が届いたら速やかに請求手続きをおこなうことが大事です。

また、請求者本人が請求手続きをおこなうのが厳しいという場合は、代理請求も可能です。

その場合は、日本年金機構の窓口に電話等して代理請求の手続き方法について確認しましょう。

また、在職老齢年金制度の見直しにより、働きながら年金を受け取る際の条件や受給額にも影響が出る可能性があります。制度の変更点を理解しておくことが、将来の収入設計において重要になります。

昨今は物価高の影響等で年金生活が厳しいと訴える高齢者の方は少なくありません。

本記事でとり上げた年金生活者支援給付金以外にも高齢者や生活が厳しい方を支援する公的な支援制度はあります。

もし生活が厳しい場合等は住んでいる自治体の福祉課などに相談すると、自身が受けられる公的な支援について教えてもらえたりするかもしれません。

また、それ以外にも今はお金の不安や悩みについてFPやIFAが無料相談をしてくれるサービスもたくさんあります。

4月の新年度は、年金制度を見直す絶好のタイミングです。必要な手続きを早めに進めておきましょう。確実に受け取るための行動が、老後の安心につながります。

参考資料

鶴田 綾