日本の公的年金制度について、将来受け取れる金額を具体的にイメージできている方は、案外少ないかもしれません。
公的年金の受給額は、現役時代の働き方や年金への加入期間によって一人ひとり異なり、その差は決して小さくありません。
この記事では、2026年度における年金の支給額をはじめ、厚生年金と国民年金の平均的な受給額、そして65歳以上の方々の家計の現状について、データを基にわかりやすく解説していきます。
1. 公的年金の基本!日本の「2階建て」年金制度の仕組みとは
はじめに、公的年金制度の基本的な仕組みから見ていきましょう。
日本の年金制度は、基礎となる「国民年金」と、その上に乗る「厚生年金」の2つの部分から成り立っており、しばしば「2階建て」構造に例えられます。
1階部分にあたる国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入を義務付けられています。
国民年金保険料(※1)は、収入にかかわらず一律の金額です。
一方、2階部分の厚生年金は、主に会社員や公務員が加入する制度です。
保険料(※2)は毎月の給与や賞与の額に応じて決まるため、納める金額は人それぞれ異なります。
将来受け取る年金額は、国民年金の場合、保険料を480カ月(40年間)すべて納付すると、65歳から満額(※3)の老齢基礎年金が支給されます。
保険料の未納期間があれば、その分だけ支給額は少なくなります。
厚生年金の支給額は、加入していた期間と納付した保険料の総額によって決まります。
そのため、一般的に長く働き、収入が高かった人ほど、将来受け取る年金額も多くなる傾向にあります。
※1 国民年金保険料:2026年度は月額1万7920円
※2 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
※3 国民年金の満額:2026年度は月額7万608円
2. 2026年度の年金支給額はいくら?改定後のモデルケース
公的年金の支給額は、物価や賃金の変動を反映して毎年改定されます。
2026年度については、前年度と比較して国民年金(老齢基礎年金)は1.9%、厚生年金(報酬比例部分)は2.0%の引き上げとなりました。
2.1 国民年金・厚生年金の支給モデル【2026年度版】
- 国民年金(老齢基礎年金・満額・1人分):月額7万608円(前年度比+1300円)
- 厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額):月額23万7279円(前年度比+4495円)
※昭和31年4月1日以前に生まれた方の老齢基礎年金(満額)は、月額7万408円(前年度比+1300円)です。
※厚生年金の金額は、平均的な収入(賞与込みの月額換算で45万5000円)を得た夫が40年間厚生年金に加入し、その配偶者が40年間国民年金に加入した場合の、夫婦2人分の老齢基礎年金(満額)と老齢厚生年金を合わせた給付水準です。
3. 厚生年金と国民年金、平均受給額の差はどのくらい?
老後の生活を支える大切な収入源である公的年金ですが、実際に支給される金額は人によって大きく異なります。
これは、年金の加入状況や保険料の納付実績に応じて受給額が計算されるためです。
ここでは、厚生年金と国民年金の平均受給額に関するデータを確認してみましょう。
3.1 厚生年金の平均受給額と受給者の分布
- 全体平均:月額15万289円
- 男性平均:月額16万9967円
- 女性平均:月額11万1413円
※国民年金の金額を含む
3.2 【金額別】厚生年金受給者の分布状況
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
男女別の平均額を見ると、男性が16万9967円、女性が11万1413円と、約6万円の開きがあることがわかります。
受給額の分布も1万円未満から30万円を超える層まで幅広いため、個々の状況を把握することが大切です。
3.3 国民年金の平均受給額と受給者の分布
- 全体平均:月額5万9310円
- 男性平均:月額6万1595円
- 女性平均:月額5万7582円
3.4 【金額別】国民年金受給者の分布状況
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金の平均受給月額は、全体および男女別で見ても5万円台後半となっています。
受給額は1万円未満から7万円を超える層まで分布していますが、支給額の上限があるため、厚生年金ほど個人差は大きくならないのが特徴です。
最も受給者が多いのは「6万円以上~7万円未満」の層で、多くの人が満額に近い金額を受け取っていることがうかがえます。
4. 【モデルケース1】65歳以上の無職夫婦世帯、その家計収支は?
ここからは、総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」を基に、65歳以上の無職世帯の家計収支の実態を見ていきましょう。
4.1 65歳以上・無職夫婦世帯の収入の内訳
- 実収入:25万4395円
- うち社会保障給付:22万8614円 ※主に年金
4.2 65歳以上・無職夫婦世帯の支出の内訳
- 実支出:29万6829円
- うち消費支出:26万3979円
- 食料:7万8964円
- 住居:1万7739円
- 光熱・水道:2万3540円
- 家具・家事用品:1万1237円
- 被服及び履物:5354円
- 保健医療:1万7941円
- 交通・通信:3万1325円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万6538円
- その他の消費支出:5万1341円
- うち諸雑費:2万2047円
- うち交際費:2万3257円
- うち仕送り金:1135円
非消費支出は3万2850円となっており、内訳は以下のとおりです。
- 直接税:1万2547円
- 社会保険料:2万296円
このモデルケースでは、月々の実収入25万4395円に対して支出の合計が29万6829円となり、結果として毎月4万2434円の赤字が生じている計算になります。
5. 【モデルケース2】65歳以上の無職単身世帯、その家計収支は?
次に、65歳以上の単身世帯(おひとりさま世帯)の家計収支について確認します。
5.1 65歳以上・無職単身世帯の収入の内訳
- 実収入:13万1456円
- うち社会保障給付:12万212円 ※主に年金
5.2 65歳以上・無職単身世帯の支出の内訳
- 支出:16万1435円
- うち消費支出:14万8445円
- 食料:4万2545円
- 住居:1万1416円
- 光熱・水道:1万5565円
- 家具・家事用品:6069円
- 被服及び履物:3049円
- 保健医療:8388円
- 交通・通信:1万3601円
- 教育:0円
- 教養娯楽:1万6132円
- その他の消費支出:3万1681円
- うち諸雑費:1万4052円
- うち交際費:1万6956円
- うち仕送り金:591円
非消費支出の平均は1万2990円で、内訳は以下のとおりです。
- 直接税:7072円
- 社会保険料:5912円
単身世帯の場合、実収入13万1456円に対して支出合計が16万1435円となり、毎月の家計は2万9980円の赤字という状況です。
6. 老後資金はいくら準備すべき?平均的な生活費から考える
これまでのデータで見たように、65歳以上の無職世帯では、夫婦・単身を問わず家計が毎月赤字になる傾向が見られます。
では、この不足分をカバーするためには、どの程度の老後資金を準備しておく必要があるのでしょうか。
結論からいうと、必要な老後資金の額は人それぞれです。
持ち家か賃貸かといった住居費、健康状態、趣味や旅行にかける費用、そして何歳まで働くかなど、個々のライフプランによって家計は大きく変動するため、「誰にでも当てはまる一定の金額」というものはありません。
しかし、老後資金の計画を立てる上で、平均的な家計データを参考に不足額の目安を把握しておくことは非常に重要です。
例えば、単身世帯で毎月約3万円、夫婦世帯で約4万円の赤字が続くと仮定すると、年間の不足額はそれぞれ約36万円、約48万円にのぼります。
もし65歳から20年間この生活が続くとすれば、単純計算で数百万円単位の資金が必要になる可能性が考えられます。
もちろん、退職金の有無やそれまでの貯蓄額、あるいは働き続けるかどうかによっても状況は変わります。
だからこそ、平均的なデータを参考にしつつも、ご自身の年金見込額や想定される生活費を基に、「自分にとって必要な老後資金額」を早めに試算しておくことが大切です。
7. まとめ:年金制度と老後の家計を理解し、早めの準備を
この記事では、2026年度の年金支給額、厚生年金と国民年金の平均受給額、そして65歳以上世帯の家計収支について詳しく見てきました。
2026年度は年金額が引き上げられましたが、実際の平均受給額は厚生年金で約15万円、国民年金で約6万円となっており、個人差が大きいことがわかります。
また、総務省統計局「家計調査報告」によれば、65歳以上の無職世帯は、夫婦・単身ともに支出が収入を上回り、家計が赤字傾向にあることも明らかになりました。
年金収入だけでは生活費をすべて賄うのが難しく、貯蓄を取り崩したり、他の収入源を確保したりして生活している世帯が少なくないのが実情です。
安心して老後を迎えるためには、「年金があるから安泰」と考えるのではなく、ご自身の年金受給見込額や将来の生活費をできるだけ早く把握し、必要に応じて資産形成や家計の見直しに取り組むことが重要といえるでしょう。
※当記事は再編集記事です。





