物価の上昇が止まらないなか、私たちの生活の生命線である「公的年金」の受給額は、物価や賃金の動きに合わせて毎年見直されています。

厚生労働省の発表によれば、2026年度(令和8年度)の年金額は、前年度と比較して国民年金が1.9%、厚生年金が2.0%引き上げられる「増額改定」となりました。

この改定は6月15日支給分からすでに適用されており、次回は来週8月14日(金)に「6月・7月分の年金」が振り込まれます。

実際に引き上げ後の金額を手にし、「この金額でインフレ時代の老後生活は本当に大丈夫だろうか」と、改めて将来への不安を感じた方も少なくないはずです。

この記事では、2026年度の最新の年金改定額や、働き方によるモデルケース、そして額面通りには受け取れない「手取り」のリアルな実態について詳しく解説します。

1. この記事の3つのポイント

  •  2026年度の年金額は増額改定され、6月支給分から国民年金は1.9%増、厚生年金は2.0%増が反映されています。
  •  現役時代の働き方によって将来の年金額は大きく変動します。男女・年金加入期間別の5つのモデルケースを紹介します。
  •  年金からも税金や社会保険料が天引きされるため、額面だけでなく手取り額を把握することが重要です。

 

2. 2026年度の年金額は増額改定!モデル世帯の受給額は?

公的年金の受給額は、物価や賃金の動向を踏まえて年度ごとに見直しがおこなわれます。

2026年6月支給分(4月・5月分)からの年金額の改定について確認してみましょう。

2026年度の年金額は、前年度から国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%引き上げられました。

2.1 2026年度の国民年金と厚生年金の年金額例

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分):7万608円(+1300円)
  • 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分)(+4495円)

※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額7万408円(対前年度比+1300円)
※厚生年金は「男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

2.2 年金支給日と改定額の反映タイミング

公的年金は、「偶数月の15日(土日祝の場合はその直前の金融機関営業日)」に、前の2カ月分がまとめて支給される仕組みです。そのため、今回の改定率は6月に支給された「2026年4月分・5月分」の年金から適用されています。

なお、今回の改定内容公表時には、「多様なライフコースに応じた年金額」として、現役時代の働き方や収入別の年金額の例も提示されています。

3. 【65歳~】厚生年金・国民年金「働き方別年金めやす5パターン」

働き方や生き方が多様化する現代、「将来、自分はどのくらいの年金を受け取れるのだろう?」と気になる方も多いでしょう。

年金加入経歴を5つのパターン(男性2パターン、女性3パターン)に分け、「2026年度に65歳になる人」を想定した年金額の概算が示されています。

多様なライフコースに応じた年金額

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」(色枠は筆者加筆)

3.1 ケース①:男性・厚生年金期間中心

《年金月額》17万6793円

  • 平均厚生年金期間:39.8年
  • 平均収入:50万9000円※賞与含む月額換算。以下同じ。
  • 基礎年金:6万9951円
  • 厚生年金:10万6842円

3.2 ケース②:男性・国民年金(第1号被保険者)期間中心

《年金月額》6万3513円

  • 平均厚生年金期間:7.6年
  • 平均収入:36万4000円
  • 基礎年金:4万8896円
  • 厚生年金:1万4617円

3.3 ケース③:女性・厚生年金期間中心

《年金月額》13万4640円

  • 平均厚生年金期間:33.4年
  • 平均収入:35万6000円
  • 基礎年金:7万1881円
  • 厚生年金:6万2759円

3.4 ケース④:女性・国民年金(第1号被保険者)期間中心

《年金月額》6万1771円

  • 平均厚生年金期間:6.5年
  • 平均収入:25万1000円
  • 基礎年金:5万3119円
  • 厚生年金:8652円

3.5 ケース⑤:女性・国民年金(第3号被保険者)期間中心

《年金月額》7万8249円

  • 平均厚生年金期間:6.7年
  • 平均収入:26万3000円
  • 基礎年金:6万9016円
  • 厚生年金:9234円

これらのモデルケースからもわかるように、厚生年金の加入期間や現役時代の平均収入によって、年金月額は大きく変わります。

特に、現役時代に国民年金と厚生年金のどちらをメインに加入していたかで、老後の受給額に大きな差が出ることが見て取れます。

4. おさらい:日本の公的年金「2階建て」の基本的な仕組み

日本の公的年金制度は、国民年金(基礎年金)と厚生年金の「2階建て構造」になっています。

  • 1階部分(国民年金):原則として日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人に加入義務があり、全員が一律の保険料を納めて将来定額の基礎年金を受け取ります。自営業者などの「第1号被保険者」がここに属します。
  • 2階部分(厚生年金):会社員や公務員などが国民年金に上乗せして加入し、現役時代の給与(報酬)に比例して保険料と将来の受給額が決まります(第2号被保険者)。また、その配偶者で扶養されている人は「第3号被保険者」に分類されます。

現役時代に「どちらの年金に・どのくらいの期間加入していたか」が、老後の受給額にそのまま直結する仕組みです。

5. 筆者からのコメント

熊谷 良子

将来の年金額を増やす現実的な手段として、国民年金の「任意加入制度」や「付加年金」といった選択肢が挙げられます。

転職や独立、就労調整などで厚生年金の加入期間が短く、将来の基礎年金が満額に達しない場合でも、60歳から65歳までの間に「任意加入」して保険料を納めることで、受給額を満額に近づけることが可能です。

また、国民年金(第1号被保険者)であれば、月額400円の付加保険料を上乗せして納める「付加年金」を活用すると、将来「200円×納付月数」の年額が一生涯上乗せされます。

こうした公的な上乗せ手段を早いうちに把握し、多様なキャリアプランに備えておくことが大切です。

公的年金の詳しい仕組みや、年収別の年金額、年金の「額面と手取り」などについては、「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」でも詳しく解説しています。